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CIMの構成要素、その現状と課題(後編)

CIMに関連する要素としてどのようなものがあるか、それぞれの要素の現状と今後の注目点を整理する(後編)。

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悩ましいMISのJDF対応

MISのJDF対応に関しては、MISを自社開発にするのか、パッケージ利用にするのかの選択が悩ましいところである。
従来、自社開発をしてきたがパッケージ利用に切り替えたある企業は、パッケージ利用への転換理由として以下の2点を挙げた。

もちろんパッケージを使うと言っても共通的なインターフェイスではきつい場合があるので、カスタマイズする部分も当然ある。一方、今後とも自社開発で続けるという企業でも、JDFの細かいところまで知り尽くして開発することは難しいと認識している。従って、モジュール単位でアプリケーションを販売しているMISベンダーから適宜買って入れ、これを有効に活用することが現実的な手段になるのではないかと考えている。MISベンダー側のそれなりの対応が求められるということである。

体質で異なるフィードバック情報の精度と価値

生産設備とMISの連携によって、生産設備から自動的に稼働状況に関するデータを採取、分析できることは費用対効果の点でかなりメリットがある。現在はバーコードなど、いろいろな形で吸い上げているが、オペレーターの手間が掛かることと、どこまで本来の状況を反映したデータになっているのかが問題である。
JDFの規約では、報告すべき機械の状態を決めている。例えばGoodは正紙印刷中、Wasteはヤレ、あるいは版替え中、洗浄中などのステイタスが定義されている。
しかし、ここでの課題は、準備作業の中のどの状態を報告するかがメーカー依存になっていることである。メーカーごと、機械ごと、顧客の機械運用方法ごとに決め方が違っているはずである。「版待ち」など非稼動の理由のように機械が自動的に把握できない状態の「内容」はオペレーターが入力しなければならない。機械が止まっているという状況は自動的に分かるが、なぜ止まっているかはオペレーターの入力頼みになる。正紙と損紙の区切りもオペレーター依存になっている。
現時点では、顧客の運用条件に合わせて機械メーカーとMISメーカーとの間で、ある程度の調整、カスタマイズが必要になりそうである。最終的にはオペレーターのモラル的な要素が強くならざるを得ないが、それが障害になるか否かは各企業の体質次第である。また、どのようなデータを取るにしても、採ったデータをきちんと分析して対応策を考え実行できるか否かが成果を左右するが、これも企業体質次第である。

CIMを構成するMISの課題

CIMにおいては、生産設備とMISの連携が重要な役割を果たすが、そのようなMISには従来のMISでは求められなかった機能が必要になる。
CIMの実現を全体最適化の一貫と考えるのならば、業務上のコミュニケーションの改革は最重要課題である。現在の印刷物生産においては、コミュニケーションの部分に最も大きなボトルネックが存在するからである。一品受注生産的性格が強い印刷物生産においては、クライアント、営業、工務、製造現場、外注先の間で、煩雑な照会、依頼・指示、変更のやり取りがなされている。
コミュニケーション手段は、仕様書や指示書などの紙を使ったり、電話やファックス、電子メールを使ったりとさまざまであるが、情報が行き交う中で誤解や思い込みによるミスやロスが多々発生している。
この問題の解決には、情報共有のインフラ整備が必須と言える。外部組織との情報共有を考えるならば、Webの利用が必要になる。情報を共有する内容としては、工務がもつ情報が有効で、特に進捗状況については必要な人のだれでもがWebで確認できることが望ましい。ある中堅企業では、Webを使って作業予定、進捗情報を工務、協力会社間で共有することによって、8人の工務の月平均残業時間が70時間/人であったものが、月平均10時間/人に減少し、さらに指示ミスがほぼゼロになったという。投資対効果は十分に見合うと思うが、これからMISを再構築しようという印刷会社で、上記のような情報共有に関する認識をもち、システムの機能として組み込もうとする企業の少なさに驚かずにはいられない。

非生産業務の合理化を図るチャンス

現在、多くの印刷会社において、短納期だから予定は組めない、変更があるから入力が間に合わないなどMISの運用に問題を抱えている。まさに現実であろうが、それは、コンピュータを使っているとはいえ、かなりの人的労力も必要とすることに限界が来ていることを示しているのではないだろうか。また、従来のやり方で必ずしも精度の高い計画ができていたわけではなかった。印刷の工程管理における日程計画は、各工程の工程日程としてかなりの余裕を見込んでいるので工数の精度うんぬんは問題にされることがなかったし、仕事が詰まれば外注に出すことについてだれも文句は言わなかった。外注によって差益がマイナスになったとしても、ほかの黒字でその穴は十分に埋めることができたからである。
しかし、あらゆる部分で利幅が減少した現在、設備の不稼働を少しでも減らして、外注せずに済むものは極力内部で処理することは利益確保にとって重要な課題になってきた。そのためには工程管理の精度を上げていくことが不可欠である。そもそもCIMと言いながら、ベテランの工務担当者が鉛筆をなめつつ1時間も2時間も掛けて予定表を作ることが許されるはずはない。この部分が情報流通の最大のボトルネックになりかねないからである。今後、JDFによって生産設備から細かな実績データが採れるようになれば、より精度の高い工数を標準として設定することができる。また、リアルタイムで進捗状況を把握できるようになる。一方、パソコンの画面上に機械ごとの予定を表示しておいて、負荷調整や作業日程の入れ換えのために、特定の仕事を「クリック&ドラッグ」で移動、その結果を即座に表示させる(当然元データもそれに伴って変更される)仕組みもできている。従って、これらの機能を組み合わせたシミュレーション機能を使えば工務業務の時間を軽減しながらより精度の高い日程計画を立てたり、変更が必要な場合にも迅速な判断を下すことができるようになる。営業面では、見積もりに対して標準以外の手順計画で仕事を行った場合に粗利益がどの程度になるかをリアルタイムで出すことができるだろうし、そのようなシミュレーション機能を使えば外注によるメリット、デメリットを迅速に判断することも可能になる。
JAGATが提唱している「標準手順を軸とした営業、工務業務の合理化」は、その一つの例である。この提案は、見積もり作業の合理化と金額の妥当性も確保するものである。

これからのMISで重要になる「標準」

ただし、このような機能をMISに盛り込むためには、「標準」あるいは「基準」を設定して使うことが必要になる。しかし、印刷業界では、「標準」というものがほとんど無視されてきた。技術面から見ると、まさに技能依存の技術体系では、標準工数と言っても人によるばらつきが大きく標準としての有効性に問題があった。また、利益にしても作業日程にしても、相当大きなバッファがあったから、基準の精度の高さやその運用のラフさが問題として表面化することはなかった。
しかし、少しの水漏れがすぐに赤字につながるという経営環境とさまざまなIT技術が容易に使えるようになった現在、上記のシミュレーションのような従来にないコンピュータの働かせ方によって、よりシビアな管理を可能にして利益を確保しようと考えることは当然である。

プリプレス工程での情報の流れの問題

印刷物生産における自動化の大きな問題は、プリプレスの作業が始まった時点でも、すべての仕様が決まっているわけではないということである。CIP4では、プリプレス作業のための細かな指示情報や受注時点では決まっていない仕様を「グレーボックス」という考え方で処理するように考えている。実際問題として、MISで細かなパラメータを含むすべての情報を入力できるわけではない。従って、従来のように「製版は任せたから完成して持って来てくれ」という流れとよく似た形でグレーボックスとして渡して、後は製版工程内で管理し、でき上がったデータをフィードバックすることを想定している。

重要なコンテンツ情報と管理情報のリンク

今までは、工程管理システムをもっていてもプリプレス工程に対して使っていない企業が多い。それは、文字・画像などのデータを扱うシステムが工程管理システムとリンクできていないからだった。しかし、この部分については、コンテンツ管理とワークフローをつなげた仕組みも出てきている。
プリプレス作業の場合、ある人に仕事を投げたが、別の仕事が入ってくると、A氏にやってもらう予定が実際はBC氏にやってもらわなければならないという状況も出てくる。そのような現状に対して、作業割り当ての変更をどのようにするのか、また、実際にはだれがいつ何をやったのかという実績を明確にして取ることができる仕組みは既にできている。今後は、上記のような機能を各社のMISに組み込むことが課題の一つであろう。

自動化推進に重要な顧客・営業へのメリット提供

自動化を進めるにあたって重要なことの一つが、営業にとってもメリットがある情報流通の自動化である。先に紹介した情報共有の仕組みは、現場作業の混み具合を営業の見積もり段階で見ることを可能にするし、顧客からの進捗状況の問い合わせへの対応を非常にスムーズにする。自動化と言っても現場だけでなく、顧客や営業サイドへの利便性が提供できれば、それがきっかけでJDFワークフローも進めやすくなるだろう。

着実に進化するJDF規格

一般の製造業に比べて一品受注生産的要素が強く、人間の介在が多かった印刷産業のCIMの実現において、JDFの規格内容の柔軟性がどこまで確保されるかはCIM実現にとって非常に重要である。
生産管理情報の流れに関するJDF規格では、従来、人間の介在によって臨機応変に対処していたことを、自動化の中でどのように処理するかが課題となる。受注時点で未確定な情報があること、下版間際まで変更がある、飛び込みの仕事があって最初の情報がMIS側ではなく現場サイドから発生するといった場合の処理への対応が、JDFの規格としてどのように組み込まれるかという問題になる。この2年間の変化を見ると、上記のような印刷物作りの実態に見合った規格が作られてきていることが分かる。日本から提言した内容についても検討、規格として加えられたものもある。
例えば、JDF Ver1.3では、仕事の内容に変更があった時の処理として、変わった部分だけをお互いにJMFでやり取りし、JDFコントロールサーバの中のJDFを常に最新にすることができるようになった。Ver1.2では、枝番を付けて違うものとして処理するといったことが必要だった。
現在、次期のJDF Ver1.4が検討されている。主な検討内容は、大貼り運用をどのように記述するか、付け合わせにおいて、一つのJobに複数の発注者(顧客)をどのように書くのか、印刷後にどのように再分割(個々のJobに戻す)するのかなどである。正式発行は2007年秋でDRUPA2008までにはVer1.4の実装が可能になるという。

IT化におけるCIM以外の課題

上記のように非常に幅広い範囲が対象になるCIMだが、それは、印刷業界が目指すIT化(デジタルネットワーク化)の一つの要素である。本稿では紙面の関係で省いたが、IT化ではEC/EDIの実現も含まれるし、MISの機能として経営高度化のための情報の有効利用(どんぶり勘定からの脱却、非定型判断業務におけるより客観的、的確な判断への対応など)も重要な要素となることを付け加えておきたい。
(山内亮一)

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2007/04/25 00:00:00


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