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古くて新しい課題:自動組版の今後

ページネーションのバッチ処理はCTSの歴史の最初から考えられていたことであるが、なかなか商業印刷分野には入りにくく、写植時代は情報誌を中心に発展した。DTPの時代になってカラーで多ページのカタログなどが自動組版されるようになり、今日ではカタログのほか、カラー化した情報誌が多く作られるようになった。印刷の分野では出版物と商業印刷は伝統的に制作方法が異なると考える場合が多いが、R25のように情報誌的な作りの出版物もあり、境界は曖昧になりつつある。

写植やCEPSの時代では、その前のアナログの時代と同様に、まず原稿を集めて、編集しながらレイアウト指定をして、版下→製版と順次作業で組上げていくワークフローしか方法がなかったが、DTPでも同様のワークフローが引き継がれている場合が多い。DTPになって新しく可能になったワークフローとしては、原稿がそろっていなくてもダミーの画像やテキストを使って先にカンプを作り、原稿が入稿されるに従って本物と差し替えていくことがある。

この方法を一般化するとどうなるだろうか? マスターページや小組みレイアウトのテンプレート化が行われているように、「原稿」を抜き去ったレイアウトや組指定自体もDTP時代になってデータとして割と自由に扱えるようになり、プラグインなどでレイアウトの半自動化に挑戦するところが増えてきた。完全自動レイアウトにはならないのは、カタログなどはオブジェクト配置の見た目のバランスが重要で、最終的に手作業で修正できる余地が必要だからである。CTSのバッチ処理と比較してDTPでは自動組版後にもwysiwygで修正できる点が評価された。

自動組版の段取りについては、CTS時代は十分分析して構造化する考えであったのが、DTPでは仕事の対象が細かくなり範囲が広くなったので、段取りに時間を掛けないものに比重が移っている。例えば表組を自動生成しようとする場合では、CTSでは各セルに入る内容に応じてセルの大きさを決めていく「積上げ方式」のようなものに挑戦していたが、DTPでは表全体の大きさが先に決まっていて、そこに収まるように各セルの大きさと中の文字の属性を自動調整する「案分方式」とでもいうような傾向がある。

「積上げ方式」は高度で歴史もあり、SGMLやXMLの自動組版で文書構造とレイアウト構造(及び組指定)を分離しつつ関連付けていく方法として使われているが、使う側にかなりの専門度を要求するものなので普及は遅い。「案分方式」はレイアウトを自動的に操作しにくくテキストや画像オブジェクトにしわ寄せが行くが、レイアウトの先割り方式(コンテンツを後から調整しながら入れる)であると考えると使いやすい。

今日ではワークフロー上の前後関係がレイアウトと編集で逆転し、あるいは同時平行にすることが可能になったので、CTS時代にはバランスのとり難かった簡易な自動レイアウト・自動組版のやり方も再考されるようになりつつある。

テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 2007年3月号より

2007/05/17 00:00:00


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