収益性の回復傾向とトレンド転換
JAGAT会員企業の売上高は2年連続のプラス成長、売上経常利益率は4.0%と前期より改善して、21世紀初の増収増益を果たした。縮小均衡からの脱却傾向がより鮮明になった。
最大構成を占める商業印刷は堅調に推移した。従業員規模別では、全規模が売り上げ伸び率をプラスにしている。東京の収益性が改善し、3年ぶりにその他地域の経常利益率を上回った。
一方で製造原価が5年ぶりに上昇、労働分配率が5年ぶりの改善に転じるなど、近年続いてきた傾向に変化の兆しが見える。
印刷会社経営の現在は、縮小均衡から成長への転換点という名の調整局面にある。原油価格の高止まりやデフレ経済の終えんといったマクロ経済の影響を織り込みながら、新しい経営の方向を模索する段階を迎えている。
縮小均衡からの脱却傾向が鮮明に
有効回答企業186社の売上伸び率は加重平均で101.0%と2005年度に続いて2年連続のプラス成長を果たし、売上経常利益率は4.0%で前期(3.5%)より改善、数年続いた縮小均衡からの脱却傾向がより鮮明になった。
対前年売上伸び率の分布では売上高前年比100%以上の会社が50.5%と2年連続で過半数を占めた。従業員1人当たり経常利益は821千円と4年連続の改善で、21世紀の最高水準になった。景気回復が近年続けられてきた財務構造改革を後押しする形での増収増益になっている。
もっとも、拡大再生産というまでの力強さが感じられる内容には欠けて、現時点では成長へ向けた調整局面を迎えている感が強い。また、2006年度の調査結果は好調だった2005年実績を多分に含むため、その点を割り引いて考える必要もあろう。例えば2006年の春ごろから本格化した原材料値上げの影響は、今回調査結果には通期で反映された気配が見られない。
製造原価が5年ぶりに上昇
全体の損益構造を見ていくと、外注費比率は6年連続で減少して昨年より2.2ポイント低下の23.8%となり、依然として各社は外注損益をシビアに見た内製取り込みを進めている。
材料費は昨年より1.4ポイント上昇の21.0%になった。原油価格高騰に伴う用紙と版材の値上げがあったにも関わらず、経年で見た材料費に大きな変化がない。2006年度決算への資材料値上げの影響は限定的だった。2007年度決算分へは通期で反映され始め、既に材料費が印刷会社の収益構造を圧迫し始めているとの印刷会社経営者の声は多い。
製造原価は71.7%と5年ぶりの上昇に転じた。内訳を見ると昨年より低下したのは外注費だけで、材料費・労務費・設備費などが軒並み増加している。
大きく増加したその他製造経費には動力費・光熱費が含まれる。外注費の削減で増加経費を吸収しながら製造原価を改善するモデルは難しくなる局面を迎えている。
外注費と材料費の差は2000年度に18.3ポイントあったが、2006年度には2.8ポイントまで縮まった。あと数年で材料費と外注費が逆転し、材料費が製造原価における最大コストになる可能性は高い。
上昇し続ける販管費
販売費及び一般管理費が増加し続けている。要因には小ロット化による営業効率の低下、短納期化による物流費の増加、内製化進展による工務コストの増加などがあろう。また、あくまでも100分比で見ているので、実額では低下している可能性もあろう。
要因は多いとしても、年々複雑さを増していく受注に人的対応を試みる限り、コスト増は止まらない。印刷製品の供給力過剰状態は続くし、各業界でのサプライチェーンマネジメントによる小ロット短納期化要請も厳しさを増す。原材料費の増加も見込まれ、製造原価の低減傾向も底打ちの気配がある。
過当競争市場で受注コストが高まる現在、これをシステム的に抑制しつつ受注をこなすシステムを構築できる印刷会社は、他社とのコスト競争力を行使する立場に立つと思われる。
経常利益率が4%台を回復
製造原価の上昇など、トレンド転換の兆しは見られるが増益基調に変わりはなく、2006年度の調査結果は21世紀で最高水準の経常利益であり、初の増収増益であった。
しかし、前述のように原油価格高騰の影響は充分に織り込まれておらず、外注費の削減によって増加経費を吸収していく従来のモデルでは損益構造を改善できなくなる公算が高い。
原材料価格の顧客転嫁は容易でなく、各社が苦戦を強いられていると聞く。「値上げ要請で顧客を訪問したら、逆に値下げを要請されてやぶ蛇になった」という話も少なくない。
従って従来の縮小均衡策からの脱却は不可欠になり、コストに見合う付加価値を得るモデルへの移行を重視すべき局面を迎えている。受注コストの相対的引き下げには受注価格を高めることも有効だから、例えばワンストップサービスの拡充は有用であろう。
少子化で縮小する市場では客数の減少が避けられない。客単価(または1件当り受注単価、1件当り受注部品数など)をどのように上げていくかは今後の大きなテーマの一つになる。
社団法人日本印刷技術協会発行「JAGAT 印刷産業経営動向調査 2007」の記事より抜粋
(本書は2007年6月下旬発売予定。定価10,000円,JAGAT会員特別価格5,000円,ともに税込価格)
(2007年6月)
2007/06/20 00:00:00