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メディア制作の人材シフトを考える(後編)

日本国内の需要が縮小することと少子化で人材の余裕がなくなるにつれて、コストカットの視点で業務委託や派遣社員など非正規雇用が増えて問題視されている。昔からデザインの世界は2つに分かれていた。企業のコアコンピタンスにデザインがある会社は社内にデザイナを抱えているが、そうでもない会社にとって自社にデザイナを抱えるのはリスクが多いために、個人事業者としてのデザイン事務所も多数存在している。この場合デザインは非正規雇用である必要はなく、専門領域である。

今日、Webなどデジタルメディアの制作はデザイン事務所でも行われているものの、次第に企業の業務システムと密接なものとなり、デザインとは一線を画する方向にある。しかしまだ専門領域は形成していないので非正規雇用視される場合もある。これではこの分野で専門性を高めて仕事をしていきたい人の意欲をそぐばかりではなく、仕事の品質の管理も行い難いことになる。

Webが情報伝達手段として重要であるなら、それに相応しい専門教育や資格や職業の社会的認知、処遇があるべきで、こういった環境が見えてこないと若い人のスキルアップは難しい。幸い資格についてはいろいろ揃いつつあるので、それらとうまく関連して教育や企業の採用が整って新しい枠組みが生まれ、人の努力が報われて専門領域が形成されていくことが望まれる。

今やビジネスとWeb活用は切り離せないものになっている。印刷会社でもWeb制作やデジタルコンテンツ、メディア制作部門を有するところが増えているようだ。ただこうした分野は、技術や流行の移り変わりが早く、そうした動きに対応するには関連部門の人材採用・育成は大変重要である。
こうしたことを踏まえ、JAGATではデジタル制作分野での活躍を志す「学生・社会人」を育成する学校に対してアンケート調査を行った。調査対象は、「情報・デザイン」関係学科を有する「専門学校、短大、4年制大学」の先生・職員の方々で、その回答集計結果に対してコメントを付した。

<情報・メディア関連人材に関するアンケート調査報告(後編)>

設問5 貴校の情報デザイン関係学科(専攻)を履修された方の進路などについて下記に○を付しご回答願います。

【設問の意図】
情報・メディア・デザイン関係分野を卒業あるいは履修した後、学生あるいは社会人にとって、どのような道が開かれるのか知るため。

【回答集計結果】
▼図3:卒業後の主な就職先(業種)について

図3:卒業後の主な就職先(業種)について

■卒業後の主な就職先(業種)
業種としては、「印刷」24%と「広告」(制作会社と代理店の区別はなし)19%が上位を占めており、ついで、「情報ITサービス」16%、「出版」12%となっている(図3)。 ここでは、「印刷」(24%)が1位であった。印刷会社のDTP化によって、対象となる職種がマッチしたことや、印刷会社がWeb制作などを業態を広げつつあることなどが理由と考えられる。
卒業・履修後の職種については、「グラフィックデザイナー」が1位となった。これについては、コンテンツを作ることができる人材を求める傾向が高いためとの意見もあった。

■職種について
1位 15% 「グラフィックデザイナー」
2位 12% 「Web」「DTP」(オペレーター、デザイナー)
3位 8% 「CG」「システムエンジニア」「プログラマ」「ゲーム」
4位 6% 「営業」「ネットワークエンジニア」
5位 5% 「イラストレーター」「システムアドミニストレータ」「編集者」

■卒業後の企業への就職以外の進路
企業への就職以外の進路については、1位「大学院」31%、2位「フリーランス」22%となった。3位「研究職」「契約社員」9% 4位「派遣」4%と続く。そのほかの回答としては、専門学校、大学、大学院への編入学、公務員、教員などがある。1位が「大学院進学」となったが、ここ数年大学院への進学率も上がってきているとの調査結果もあり、これを裏付けているようだ。意外にも「フリーランス」の選択が上位にあるのは、ネット環境の影響もあり個人で仕事をしやすくなってきたためと推測できる。また、上記の職種との関連で言えば、個人で仕事をしやすい職種であるためと考えられる。

設問6 貴校の情報デザイン関係学科(専攻)における今後の課題について、重要度の高い順に( )内に番号をご記入願います。

【設問の意図】
現在、学校が抱えている課題を捉え、今後の教育、ビジネスにどのように取り組んでいるのかを明らかにする。

【回答集計結果】
1位 39.1% 「学生の募集に関すること」
2位 23.9% 「カリキュラムに関すること」「卒業生の就職に関すること」
3位 6.5% 「先生の確保に関すること」「教材に関すること」

結果は「学生の募集に関すること」が1位で、「カリキュラムに関すること」と「卒業生の就職に関すること」が同列2位、「先生の確保に関すること」と「教材に関すること」が同列3位となった。

1位は「学生の募集に関すること」(39.1%)であり、少子化が進む中で、いかにして学生を確保していくかということは学校経営に直接影響を与えるだけに最も重要度の高い課題ということができる。 2位の「カリキュラムに関すること」(23.9%)については、魅力あるカリキュラム作りの重要性は学生募集にも大きなウエイトを占める。 同じく2位の「卒業生の就職に関すること」(23.9%)についても、就職内定企業や内定率は入学動機に大きく影響する。これは本人だけでなく、親にとっても学校選びの一つの目安として重要であるとの意見もあった。


設問5で見たように、専門知識やスキルを身に着けた後の就業先として、印刷業界が選択肢に入っていることは、印刷会社の多くで業態が変わり、情報・デザインに関係部門を有する会社が増えてきたことの現れとも言える。

またかつては、学生時代にビジネスを手掛けることは、あまり良くないとされる風潮があったが、今では在学中に、企業の提供するプロジェクトを学生に手掛けさせ、ビジネスに結び付く実務知識を在学中に修得できるように、学校と産業界が密接に連携するようになってきた。このため企業は、即戦力としても有望な学生を確保しやすくなってきたが、こうした分野の学生がベンチャーを立ち上げるのは少数派だろう。

デジタルメディアでビジネスをするのであれば、次世代育成のためにも人材の流入や育成する環境作りも必要である。その際には、こうした知識領域との結びつきを持つことがひとつの方法だろう。

2007/07/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会