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POP(生産時点情報管理)とは?

印刷業に通じるPOPの意義

一般製造業向けの生産管理の考え方に「POP(生産時点情報管理)」というものがある。印刷業に通じるところも多いと思われるので、戦略情報センターPOP研究所所長山口俊之氏のご講演からその一端を紹介する。

POPとはPoint of Productionの略で生産時点情報管理と訳される。工場現場の時々刻々に発生する生産情報を、その情報発生源である機械・設備・作業者・ワーク(加工対象物)の4つのところから直接(ペーパーレス)に採取し、リアルタイムに情報処理をして、現場管理者に提供すること。また、現場管理者の判断の結果を現場に指示することとなる。小売業で幅広く普及しているPOSシステム(Point of Sale)の工場版と言える。
ワークとは耳慣れない言葉であるが、機械や作業者が加工する対象から、印刷で言うところの色数やサイズ、折り仕様などの情報を取ることを意味する。
POPは1980年代中頃に登場した言葉であるが、工場の「見える化」というキーワードとともに改めてその意義が評価されている。

変わる工場経営戦略

その背景として、工場経営戦略の変更がある。かつては、自動化・省力化の追求が主たる戦略であったが、NC(コンピュータ制御加工機械)などの自動化技術の成熟化、多品種・小ロット・短期間生産(商品ライフサイクルの短縮化)といった環境の変化、ニーズの高度化、差別化に役立たない(必ずしも利益に結び付かない)といった理由から、運用・管理高度化戦略へと転換しつつある。この戦略変更を可能にしたのが、IT技術の急速な発展であり、安価で高機能なITツールを駆使して、現場から吸い上げた正確なデータによる運用管理が新たな競争力を生み出すことになる。

現場が「見えない」わけ

「見える化」が盛んに言われるのは、その裏返しとして、現場が見えなくなっているからである。
その理由には、前述の環境変化がある。多品種・小ロット・短期間生産とは言い換えると仕事の種類が複雑化し、段取り換えはよりダイナミックに、そして玉石混合の仕事が同時に現場を流れることになる。このため目視での管理はもはや限界に達している。また、生産性分析にデータ・サンプリング法が使えなくなっている。なぜならジョブごとのデータのばらつきが大き過ぎるからである。その結果起こっているのが、標準工数(Standard Time)と実際工数(Actual Time)の乖離(かいり)、見積もり用標準原価や設備の基本生産能力データの陳腐化である。このような事態に対応するには、工場現場で発生するさまざまな情報を正確、かつすべて把握するしかない。また、ITを活用してリアルタイムで自動的に採取することが重要である。こうして収集した個別実績原価を分析してみると、大抵プラスマイナス20%くらい標準に対してぶれがあることが分かる。この時、プラスのぶれを抑えることができればコストダウンが実現できる。
売り値はコントロールできず、しかも下がるばかりという昨今、製造業の利益は現場にしかない。そして、利益の源泉は仕事ごとのばらつきであり、それを把握するにはすべてのデータを取るしかなく、その手法としてPOPが有効である。また、ポイントとなるのは得られた情報の生かし方であり、目標値を提示した上で実績データと比較し、改善にあたっては、データのオープン化、共有化、ゲーム化が有効である。

2007/09/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会