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AdobeRGB対応液晶モニタの特徴

液晶モニタの色再現技術の向上により、プリプレスの現場では、モニタ上の色修正の精度が上がり、色の伝達がより効率的になり、品質向上に寄与してきた。印刷業界に新たな表示装置として提案する、サムスンAdobeRGB対応LEDバックライト液晶採用カラーマネジメントモニタ「XL20」について、日本サムスンの宮田隆氏にお話を伺った。

AdobeRGB対応液晶モニタ開発の背景

サムスン電子は、2006年の売上が日本円で約7兆円規模の会社であり、世界57ヵ国で事業展開している。パソコン用モニタの事業もかなり以前から手がけており24年になる。2005年にはPC用モニタ、ブラウン管を含め累計2億台のモニタを出荷した。2007年は、液晶モニタで2,000万台程度の販売目標を持っている。
サムスン・ブランドは、日本では諸々の事情があって若干おとなしい感じであるが、アメリカのBusiness Weekが毎年夏に行っている世界ブランド価値の調査によれば、毎年少しずつ伸びており、2006年で20位というランキングになっている。日本サムスンは、従業員550名、売上は1兆円を超える規模になっている。そのうち3分の1程度は液晶関連のビジネスである。

2005年春に、韓国本社でLEDのバックライトを用いたモニタの試作機を作り、日本国内のいろいろな業界の声を聞いたが、やはりAdobeRGBの色域に対するニーズは非常に高いと痛感した。
また、サムスンはもともとプロフェッショナルのモニタの世界で事業展開していなかったので、すんなり入っていけるか不安もあったが、いろいろと教えてもらい今日に至っている。
もともとはLEDバックライトというシーズの技術があり、そこで広色域にどう対応するかというところが始まりであった。カラーマネジメントモニタ「XL20」にAdobeRGBのモニタを持ち込んだ背景は、プロの業界の中でsRGBを超える色域が標準として普及し、RGBワークフローも始まっているということがある。

もう1つは、一般コンシューマの中でもデジタル一眼レフカメラやプリンタの性能が向上している。そこでAdobeRGBの色域を活用したいというニーズも広がっているとことも明らかになった。
しかし、モニタの表示がsRGBにとどまってしまっており、モニタの色へのニーズが広がっていく中で、完全にボトルネックになっていた。そのボトルネックを何とかしたいということで、サムスン電子はAdobeRGBの色再現領域を持ったモニタの開発に着手した。

ALL-IN-ONEコンセプト

XL20の製品コンセプトは、まず「カラーマネジメントをより簡単に」というのが狙いである。先行する日本のメーカーと同じやり方で競争しても、なかなか勝ち目はない。やはり、サムスンらしいアプローチの仕方で製品を届けたいと考え、ALL-IN-ONEというコンセプトを立てた。
これは、ハードウェア・キャリブレーションの機能を内蔵して、サムスン独自のキャリブレーション・ソフトウェアも標準で添付し、測色器、キャリブレーションのツール、さらに遮光フードまで標準で添付している。このALL-IN-ONEパッケージが、1つの訴求ポイントである。

2つ目は、LEDバックライトという新しい技術を採用して製品化していくという新しい技術へのチャレンジである。 そして、LEDバックライトを採用することによってAdobeRGBの色域に対応し、高性能化するデジタルカメラとプリンタ技術への対応、とくにプロのRGBワークフローの業務効率化、環境整備推進の一役を担おうと考えた。
LEDバックライトのメリットは、色域が広くなることはもちろん、バックライトの寿命が10万時間以上と非常に長いことである。また、水銀・ハロゲンといった有害物質を使わないエコ・フレンドリーな製品という長所も副産物的に持っている。

印刷の世界では、NTSCという数字では表現しないようであるが、一般のsRGBのモニタがNTSC比82%なのに対し、LEDバックライトを採用したモニタ「XL20」では、NTSC比114%という広色域をカバーしている。とくにエメラルドグリーンと深い真紅は、今まで見えていなかった色が再現できるようになっている。


(続きはJagat Info 2007年8月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報 Text & Graphics No.260に掲載しています)

(テキスト&グラフィックス研究会)

2007/08/23 00:00:00


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