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IGAS2007注目製品(プレス・ポストプレス、その他)

2007年9月21日から27日までIGAS2007が東京ビックサイトで開催された。プリプレスにおけるデジタル化はほぼ普及したことから、最近の注目はプレス以降の製品が目立つ。特に印刷機は両面機や4色以上の多色機。またインラインでの表面加工ユニット搭載の印刷機ではデザインを絡めた加工が可能になった。

ポストプレスと材料分野での関心事は環境問題だ。世の中は環境にやさしい材料ならびに方法で製造された印刷物を購入するという方向に動いている。このことを考えても環境問題は業界にとって取り組んでいかなければならない大きな課題だ。


■デジタル印刷機
商業印刷分野に小ロット向けの印刷機として注目されているのがCANONの「imagePRESS C7000VP」だ。広い面積で用紙を加熱、加圧する新定着方式によりトナーの飛散による微小な色のズレを抑制しながら高速でトナーを定着する。富士ゼロックス(株)のトナー方式による「DocuColor8000AP」は参考出展ではあったが、60〜300g/uの厚さの紙をすべて80枚/分で出力可能となり、以前から課題であった紙厚によりスピード格差を解消したものだ。これも商業印刷分野向けのデジタル印刷機である。

富士フイルムグラフィックシステムズ(株)からUVインクジェットプレス「LuxelJet UV250GT」が出されていた。室内装飾や壁面ポスター、屋外ドアや厚みのある硬質メディア向けの出力機だ。これは従来のものに比べ軽量で低価格である。

グラビア業界でもプリンタ出力による校正が注目されている。オフセットでは紙でいいが、グラビア印刷ではクライアントにとってもフィルム出力したもので校正できれば都合がいいはずである。(株)ミマキエンジニアリングからはUVインクジェットプリンタ「UJF-605RU」が発表されていた。ここ数年でグラビア印刷でも使えるUVプリンタが業界の中で認知されてきている。オフセット印刷ではJapan Colorという基準がありCMS(Color Management System)が確立されているが、グラビア印刷では被印刷体も紙以外にも多様で基準を付けづらいこともありCMSは進んでいなかった。これからグラビア業界も精度の高い色校の提供とそれをもとに印刷の立ち会いをなるべく少なくして工場内の作業効率をアップできることに期待したい。

■印刷機
生産性アップ、コスト削減を図るための手段として各社、いろいろな装置を発表した。
ハイデルベルグ・ジャパン(株)のAnicolorを搭載した「SpeedmasterSM52-4+ Anicolor」が注目を集めていた。通常、インキ元ローラの下に15〜16本の練りローラと着けローラがある。Anicolorは練りローラが1本だ。また、今まではツボを使って色の制御をかけていたが、ツボキーがないキーレスインキング機構になっている。ここでは、ローラの中に水を通すことにより、元ローと、着けローラの温度を上下させてインキの粘度、流動性を変えて濃度変換をかけていく。

ディック・マンローランド(株)では枚葉機では初の単独駆動ユニットを搭載した「ROLANDO700DirectDrive」を発表した。印刷機のデモンストレーションは50席の完全予約制の席が用意された特設会場で行なわれた。ダイレクトドライブは、ひとつのユニットを単独駆動させ、インキローラ・版胴を機械本体と異なるスピードで回転させることが可能で2つのギアクラッチを用いている。このことによりインキ呼び出しと版交換、インキローラの洗浄とブランの空き胴の洗浄作業を同時に行うことができ、版は各ユニット一斉に交換できるため6色機でも8色機でも約50数秒でできる。また、ブランケット、圧胴を洗浄し、洗浄中に刷版交換が可能である。他のユニットも同じ作業ができる。

三菱重工業(株)が発表した「DAIYAMONDO300」シリーズはメンテナンス・印刷準備・印刷障害という3つの視点からタイムロスを徹底排除したものだ。従来は1ユニットずつ行なっていた版交換作業を全色を同時に75秒で可能にした全色同時全自動版交換装置を導入した。また、色調整作業はモニタに表示された絵柄情報をみながら調整したいインキゾーンを指でなぞり、下部モニタからタッチ操作でインキ濃度の増減やカラーバランスを指示するだけで複数ユニットのインキキー開度を同時に自動調節できるという2つの大きな特長がある。

昨年は、インラインでの箔押し装置が発表されたが、今回のIGASも数社から発表されていた。
ハイデルベルグ・ジャパン(株)の「SpeedmasterCD74+6+LX・UV+FoilStar」、(株)小森コーポレーションの「LITHRONE SX29(菊半才寸延コールドフォイルシステム)」は、一胴目で専用の糊を被印刷体に印刷する。この糊はインキと同じように通常のPS版でオフセット印刷される。次に2胴目の上にフォイルの巻きだしローラーが取り付けられている。そこから巻き出されたフォイルが印刷ユニットの中に送り込まれブランケットと圧胴の間を通過して加圧により糊がついた部分のみに箔が転写され、残ったフォイルは上にある巻取りローラに巻き取られる。このインライン箔押し装置ではシルバーの箔の上に多色印刷でき細かい網点での箔表現が可能である。

リョウビイマジクス(株)の「RYOBI755(インラインUVキャスティング装置付)」はカラー印刷された後、UVニスでコーティングする。その後、微細なモザイクや万線等の凹凸模様の型のついたキャスティングフィルムを密着させてUV光を照射する。その結果、フィルムの微細な凹凸模様がそのままニスコーティングの表面に転写される仕組みだ。この場合は全面に箔押しすることになる。
最近では枚葉機でも油性インキとUVインキ兼用の機械が多く発表されている。特にUVインキを使用すると乾燥が早いため特殊原反への対応が可能になり、印刷会社としてはデザインを絡めて営業の幅を広げられる。(株)小森コーポレーションの「LITHRONE S44」は渡胴スケルトンやデリバリ水冷式エアーガイドなどを採用して非接触搬送に工夫がなされていた。

インラインでの加工装置は時間短縮とコストダウンに繋がり印刷会社としては都合がいいかもしれない。しかし、このような機械を導入しても以前と同じような営業を展開していたのでは機械の能力を十分に発揮できない。機械をうまく稼動させるには、印刷物をどのように印刷・加工して製品化するかというアイディアがなければならない。4色以上の印刷機では特殊ニスを刷り合わせて独自の絵柄を表現したり箔の上に印刷して効果的にメタリック調を表現すること等が可能となりそこからさまざまなアイディアが生まれる。これらは刷り方・加工そのものが会社のノウハウとなる。UV・両面印刷技術や後加工技術をノウハウとして定着できればそれは印刷会社にとって大きなメリットになるはずだ。こういうことを十分考慮して導入を考えなければならないだろう。

■製本機
製本業界でも無線綴じにPUR(Poly Uretane Reactive)を使用する動きが出てきた。通常のホットメルトは熱で溶ける接着剤のため本ごと溶解窯に入れると熱でホットメルトが溶けて不純物の1つになる。そのため通常のEVA系のホットメルトはリサイクル対応にならない。その点、PURは化学変化で強固な皮膜を形成し熱でも溶解せずかつ用紙からも分離しやすいことからリサイクルに適している。

今回のIGASではミューラー・マルティニジャパン(株)がEVA・PUR系接着剤の兼用機であるボレロ無線綴じ機を発表した。市場のニーズは本の強度と環境対応の両方を求めていることから、今後の動向にも注目したい。

■その他
コンピュータ制御の下で生産された印刷物は必ずしも完璧ではない。中には不良品が混じっていることもある。そこでいろいろな検査装置も注目されている。

(株)コスモグラフは次世代型インサーター検査装置 「F-23」を発表していた。これはハガキ・定形郵便物・窓材・ラベルに印字された文字を1カメラ2箇所読みで3,000件/時のスピードでOCR処理する。(株)ジーティービーからは各検査工程で使用される様々な媒体の組合せを選ばずに高速に比較検査する「Hallmarker」、1bitTiffCTPワークフロー「BIT-THROUGH」、デジタル比較検査ツール「ken2Pa」を出していた。ダックエンジニアリング(株)からはオンライン専用オフセット枚葉印刷検査装置「SymphonyTrinity」が発表されていた。芳野マシナリー(株)からは乱丁画像検査装置(CMOSカメラ)「トライデント」が出展されていた。この特徴はこれまでのカメラが濃淡情報をベースにして検知しているのに対し、画像の輪郭情報を基にしており、カメラによる誤作動が飛躍的に減少して「機械を止めない」という考え方に繋がった。

材料については環境対策がなされた製品が発表されていた。大日本インキ化学工業(株)からは水洗浄性100%植物油型枚葉インキVOC成分ゼロ「Naturalith100W2」が発表されていた。これは、洗浄工程において溶剤系洗浄剤のかわりに、東レ(株)と共同開発した専用の水系洗浄剤を使用することにより洗浄工程おけるVOCを低減できる。

日本アグフアゲバルト(株)からは環境にやさしいサーマルCTPプレート「:Azura」を発表した。これは現像液を使わないことで環境負荷を低減し、E3PAが推奨する環境保護印刷のGOLDステータスに適合する。露光後のプレート処理はC95/C125クリーニングユニットで「ガム洗浄」するだけだ。また画像コントラスト持つため印刷前検版が可能だ。

環境に配慮した材料や薬品関係は各メーカーから多く紹介されている。しかし、従来のものとは使い勝手が違うため簡単に切替えられるものでもない。例えば洗浄剤でも環境対応の薬品は洗浄しても乾かないため拭きとるという手間もかかる。このような事情を十分に理解して環境対策に取り組んでいかなければならない。

(2007年10月)

2007/10/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会