本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

設備をサービスの視点で考える

時とともに変化するものは何でも成長曲線を辿るが、これをグラフィックアーツの業界にあてはめて説明したものに、PAGE97の基調講演(下図参照)がある。図ではカラー製版をたとえにした解説を入れているが、どのようなものも普及するということは、<専用システム>→<製品化・サービス化>→<特別な道具化>→<一般化した道具化>→<おまけ>という段階を経ていく。高度なことが安く簡便にできるようになるには技術の進歩が必要だが、技術の進歩がもたらす新たな段階は、それ以前の段階のビジネスの構造をブチ壊していくのである。言い換えると技術の進歩は利幅の低下をもたらすので旧来ビジネスを衰退させてしまう。その歴史をカラー製版で振り返ってもらいたい。

図

1960〜70年代にカラースキャナが商品化されたことで、製版は設備投資をすれば仕事がついてくるような時代を迎えた。印刷の市場が急速に膨らんだ時代はそのことが永遠の真実のように思えたかもしれないが、印刷の市場が狭まりだした今日では、生産性の高い設備への投資は生産の集中化・仕事の寡占化・業界のリストラといった連鎖をもたらすものとなった。これはオンリーワン企業になる道筋であり、図でいくと、次のフェーズの左下<専用システム>を作ろうという個別の動きなので、「業界」の動向とは別に考えるべきである。

印刷業界の問題として考えるとオンリーワンの設備投資ではないなら、矛先を物量的な拡大ではなくサービスや顧客満足の拡大に向けるのがビジネスの方向であるし、事実業者のビジョンも設備開発の動向もそちらを向いている。「設備の能力からビジネスを考える」から「ビジネスの視点で設備を考える」ようにしないと割り切れないからである。

印刷の機材展の際にデジタル印刷が大規模に展示を行うようになって10年以上が経った。その間にオフセットなどのコンベンショナルな印刷とデジタル印刷の優劣や特徴についていろいろな議論が未だにあるが、答えはない。オフセット印刷機が非常に小ロットでも刷り出しが迅速に安定してできるように進化してきたし、デジタル印刷も品質・速度・用紙対応の面で大きく進化するなど、10年前よりもさらに両者の境界線は不明確になってきた。

ラベルやマーキングなどの小さめの印刷世界では従来印刷とデジタル印刷の境界はもっと不鮮明である。それは印刷方式よりも用途が優先するからである。用途が先にありという考え方は商業印刷的なところでもみられ、印刷機や後加工機へのインクジェットヘッドの搭載や、後加工に適した連続伝票型のデジタル印刷など、それぞれの特徴を組み合わせたような装置も登場し、従来のような印刷とデジタル印刷の差異の議論は意味がなくなりつつある。

むしろ両者とも顧客視点でサービスレベルの向上のために全品検査を自動化したり、環境対応を追求するなど、品質やトレーサビリティを現場の作業に負わせるのではなく、生産システムとして取り組み、サービス向上から設備投資を考える時代になってきた。 。

JAGATトピック技術セミナー2007(2007年12月13日開催)

(2007年11月)

2007/11/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会