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オンデマンド印刷考[その3] プリントショップとオンデマンド印刷

デジタル印刷機が登場した1994年はプリントショップへの関心が高まっていた。そして、プリントショップにデジタル印刷機を設置して、ジャスト・イン・タイムで印刷物を提供するというビジネスモデルが注目された。その主な理由は以下のようなものであった。
(1)デジタル印刷機が活きるひとつの市場が小ロット印刷物分野である。
(2)小ロット印刷物の主要ユーザーは、そのころ話題になっていたSOHO(Small Office Home Office)を含めた小規模事業所であろうと想定された。
(3)小ロットの仕事を中心に考えるならば、営業マンが関わらず、しかも細かな仕事を数多く集める必要がある(「オンデマンド印刷考2参照」)
プリントショップ展開での最低限の条件は、技術面ではデジタルデータを扱う技術に優れていること、営業面ではより多くの顧客の来店を即すための仕掛けを作ることであった。後者のために、各ショップはさまざまに工夫した。

東京所在のチェーン・ショップのひとつが1996年当時提供していた製品・サービスは、「大判から普通サイズのモノクロ、カラーコピー」、「パターン化した会社案内、年賀状、暑中見舞いなどの印刷」以外に、顧客来店促進のために、「写真のDPE」、「証明写真撮影」、「印鑑の受注」さらに「チケット販売」、「宅急便受付」など多彩なサービスを用意した。
当時の同社の顧客は約6000社で、そのうち8割は、デザイナ、編集プロダクション、企業の宣伝部であった。設備としては同一のデジタル印刷機2台を設置、さらに前工程では全ての書体を扱えるようにし、後加工も、中綴じ、無線綴じ、折、断裁、PP貼り、帳合いと充実した機能を持った。そして、デジタル印刷機は24時間稼動した。
その結果、各種サービスを含むショップ全体の売上高は月2100万円〜2200万円を上げた。しかし、収支はトントンであった。問題はデジタル印刷のコスト高であった。

フランチャイズ展開のプリントショップは、デジタルデータの処理能力を大きな売り物にしつつ、印刷を主要な機能として展開した。マーケットニーズにより適切に対応できるように数種類のデジタル印刷機を設備した。かなり厳密なコスト計算も行なった上で価格を設定、価格と納期を保証する売り方もした。
しかしながら、同社が最終的に出した結論は、プリントショップという形で、数種類のデジタル印刷機を持って商売することはコスト的に合わない。ショップは「窓口」機能を基本として、高い設備を使う「生産」は窓口とは分離して集中することが不可欠であるというものであった。数種類の設備を持つことによって顧客の多様な要望に応えることはできても、それぞれの設備で利益を出すために十分な仕事量をひとつのショップの中で得ることはできなかった、ということである。同社は、バリアブルデータ印刷も狙ったが、そのようなデータを持っている企業は稀で、少なくとも1998年時点では商売として成り立たっていなかった。

「ビジネスコンビニ」を掲げたフランチャイズの基本コンセプトは、コピーショップ、印刷ショップではなく、自社の機能を顧客の「オフィス代わりにお使い下さい」であり、そのためには「常に売れ筋をつかんでいくのがコンビニの成功の秘訣」であると考えている。事業展開後、普通の平版印刷が適する仕事のニーズも増えたが、それらについては協力印刷会社との連携を求めた。重い設備は保有しないということである。コストだけでなく、顧客ニーズ変化への対応を考慮しての選択である。

上記以外にもさまざまな取り組みがあったが、少なくとも「デジタル印刷機を設備して小ロット印刷物をジャスト・イン・タイムで提供するショップ」というビジネスモデルが、フランチャイズでの展開も含めて大きく発展することはなかった(「拡大するアメリカのフランチャイズ」参照)。多様なサービス機能を持つことで、それなりの仕事量を確保することはできても、それぞれの市場密度が薄く1点当たりの売上が小さいことが、結局、それらのためのコスト全体をカバーすることを難しくしている。このことは、上記の例の成功、失敗両面から言えることである。

結局、デジタル印刷機を使ったビジネスの中で、小ロット印刷の仕事を効率よく集めて、1点当たりの売上は少なくても大きな利益を出すことに成功したのは、通信販売業と組んでの名刺の受注、生産が最初ではなかったか?密度は薄くても、膨大な母数がビジネスを成立させた。いまは、同様の手法としてインターネットを考えることができるのではないか?

(2008年1月)

2008/01/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会