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印刷会社のサービス価値の向上

どんな分野のビジネスでも、仮説に基づいて自分たちの製品やサービスをアピールし、ビジネスを行っている。
家電製品であれば、メーカーはターゲットとなるユーザを想定して製品の企画開発をおこなっているし、販売店は多くのメーカーの中で商品力の高い売れ筋製品を予測し、数多く仕入れることで売り上げを増やそうとしている。さらに、それらを実現するためにさまざまな手段で製品についての情報を発信する。
そして、一連のビジネスの結果を検証し、新たな仮説に基づいた新製品・サービスやアピール手法を計画する。このサイクルは、延々と繰り返されることとなる。

近年、IT(情報技術)やWeb・ネットワークの急速な発展により、その繰り返しのサイクルが早くなっており、また具体的な事実に基づくように変化しつつある。あらゆる分野で、大規模な顧客データベース化やデータマイニングによる分析が進展し、さまざまな仮説の検証がおこなわれるようになった。

印刷会社の顧客である製造業や小売・流通、出版社、その他の一般企業でも、製品・サービスの情報を伝える印刷物の効果や製作方法についての考え方を変えつつある。これらの顧客企業は、印刷物を製作することで何らかの情報を発信し、自分たちの製品やサービスをアピールしている。そして、ビジネスの結果を検証する際には、印刷物が期待された役割を果たすことが出来たどうか検証していることだろう。

顧客企業が印刷会社に求めているのは、優れた品質の印刷物の提供だけではなく、適切、かつ最小コストで製品・サービスの情報を伝えることができているかどうかへと変わりつつある。時には、印刷物の発行部数や在庫を最小にするためのソリューションや、印刷物の発行頻度を減らしてコストを下げ、Webやメールで最新情報を発信するといったソリューションが求められることもある。印刷会社に求められる役割を、顧客の視点で考えることが重要である。

たとえば、同じ印刷物を作るのでも、顧客自身でWebブラウザを操作してレイアウト・発注をおこなうWeb to プリントやデータベース組版であれば、従来のような煩雑な校正作業や事務処理を減らすことができ、顧客サイドにとって魅力的な方式となる。

また、印刷物だけでなくWebなどデジタルメディアを製作し、将来的にコンテンツの利用価値を高めるのであれば、XMLによるデータベース化が必要なる。特に辞書や法令分野では、XML利用が進んでいる。このような出版社のXML利用を支えているのは、印刷会社である。

デジタル印刷は、オフセット印刷がカバーすることのできないさまざまな分野のサービスに利用されるようになってきた。たとえば、「顧客の顧客」に対して、適切な情報を適切なタイミングで提供することができるかどうかが問われている。

PAGE2008コンファレンスのグラフィックストラックでは、グラフィックスに関連した顧客へのビジネス・サポートとソリューション提供をテーマにセッションをおこなう。


【RAWデータと印刷入稿】
印刷入稿としてのRAWデータの適性・問題点・可能性を、技術的な見地、ワークフロー的な見地から検証する。「何が優れていて」「何が良くて」「何が悪いか」を科学的に実証する。

【DTPに求められる機能と効果的な利用 <DTPとスクリプト活用>】
DTP制作現場の実態として、利用者の能力によって作業性や生産性に大きな違いがある。たとえば、InDesignのスクリプティングは、導入するためのハードルも高いが、導入した際の効果はたいへん大きい。
InDesignスクリプティングを導入した事例を紹介し、今後の展開や課題について議論をおこなう。

【Web toプリントとサーバ自動組版】
DTP編集のソフトウエアの信頼性やパフォーマンスは向上したが、それだけで顧客の満足を得られてはいない。大量データを扱う情報誌やカタログなどの分野では、Web toプリントとサーバ自動組版によって、顧客から見たワークフロー改善を実現することができる。

【広色域印刷の品質を追求する -分光画像原稿で比較する-】
広色域印刷の可能性を検証するが、今までのようにAdobeRGBを画像データとして使っていたのでは、再現領域の大きくなった広色域印刷の能力を発揮しきれなかった。今回は分光画像を利用して理想的なデータを作成し、そこから限界に挑戦し「真の広色域印刷品質」を探る。

【出版分野のXML活用】
印刷物製作と同時にWeb・携帯サイト配信や電子書籍製作を行うには、XML形式でのコンテンツ保管とパブリッシングが最も有効である。コンテンツのXML化に取り組む出版社の立場、およびそれをサポートする印刷会社の立場から、今後の動向と課題について議論をおこなう。

【バリアブル印刷の動向 】
国内外のデジタル印刷市場の成長とともに、バリアブル印刷の用途開発・利用も増えてきた。マス広告からパーソナルへの対応として海外のバリアブル印刷の事例を含め、国内の現状や今後のビジネスに活かすためのヒントを探っていく。

(2008年1月)

2008/01/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会