●鉄は熱いうちに打て
今年も新入社員研修の季節を迎えた。総務・人事にとっては1年の成果が評価される時期でもある。新入社員の確保は事業継続・発展、あるいはこれからの業態変革を支えていく世代だけに優秀な人材をより多く確保したいところである。しかし、全般的には景気の回復と18、22歳という新卒人口の減少から採用は売り手市場が続いており、中小企業にとってはより厳しい採用環境を覚悟しなければならない。
2007年5月にJAGATが実施した「新卒の新入社員の採用と教育に関するアンケート」では、100人以上規模の会社の6割では「組織の活性化」「人材の高齢化を避ける」「将来の幹部を育てる」「自社に合った人材を」いった理由から毎年新卒を採用している。新卒と中途採用が混在しているのが現状だが、100人以上規模では「新卒採用が基本」という傾向が強い。100人未満では採りたくても採れない状況なのかもしれない。どちらにしても早期退職3割といった風潮に中で、どこの企業も若手社員の早期戦力化を目指している。業態変革をしようとするならば若手を早く成長させる必要がある。関西経営者協会の川村由美氏は、新入社員育成プログラムは重要で、この期間の鍛え方が重要であるという。入社1〜2年は基本的能力の形成期で、OJTとoff-JTを効果的に連動し、社会人としての基本的な態度と仕事に関する基礎知識、能力を徹底して鍛える時期としている。
●先輩・上司の指導・育成のバラツキに注意
ただOJTの問題点がいくつかある。まず、配属先の先輩・上司によって指導・育成にバラツキがでやすいことである。昨今は、ISOなどのマネジメントシステムの導入が進んでいるので、作業・知識についてはそういった標準マニュアルをうまく活用するのも手である。しかし、新入社員にとっては大切なことは、自分自身の目標(キャリアアップ)を自覚させ、会社の目標を重ね合わせて「夢」を持たせることである。先輩・上司からすれば「夢」を語ることである。先輩・上司にこの力量があるかどうかである。
モチベーションアップにつながる自分の目標を持たせるために、先輩・上司の目標、企業の目標、理念を話せることが重要でここに大きなバラツキがあると、その後の伸張に大きな影響が出る。このようなバラツキを防ぐために、経営者と新入社員との接点は重要である。忙しい中でもかなりの時間を割く必要があろう。また、ある時期までは、社内で任命した「よき先輩」を「ブラザー・シスター制度」のような形で機能させ、育成に当たるといったことも一つの方法である。
●視野を広く持てる環境・刺激を!
もう一つは、時代が大きく変化し、業態変革を迫られている時期は、モデルや良き先輩がなかなか社内では見つからない。モノの考え方・作業知識、手法など見習うべきものが違ってきている。先輩・上司にから見れば変化に当たることを体感させることである。新人にとってはイメージのギャップである。新人が抱いた印刷へのイメージ(先入観)を壊すショック療法である。社内では業態変革の方向や実情を経営者が熱く語ると同時に、展示会、講演会、人材交流の場に先輩・上司と一緒に参加し、視野を広く大きく持たせることがいい刺激になると思われる。
新入社員(1〜2年)のモチベーションは一般的に高いと言われる。その時期を有効に活用しない手はないだろう。新しいことにチャレンジさせ発想を大きく豊かに持てる環境を与えなければならない。従来の流れにどっぷり浸かってモチベーションが下がり気味になった時点では遅い。しかし、だれでもいいのかといえばそうではない。基礎能力が開花できるような資格の取得やだれも経験のない分野の開発・開拓を経験させて、どのような発想や手法で障害を超えて遂行するか見る。ある意味、失敗を大いに奨励することである。
新人にとって失敗はノウハウであり、新分野は失敗しても影響が少ない(10年選手がコア事業で失敗するのとは訳が違う)。そのプロセスからリーダーシップ、交渉力、企画力、意欲、人間性などを見極め、選択と集中による教育投資を行う。経験の浅い若手社員が新事業、新分野にチャレンジし嬉々として活躍をしている姿をDTPエキスパートやクロスメディアエキスパートの有資格者の中に多く見掛ける。もともと少数精鋭で採用した新入社員には上記のようなことは経営者が中心になって推進することは可能であるし、そういった企業も散見する。
●時代の変化や経営者の思いが反映しているか
一方、ある程度の規模の新入社員を採用している企業では、人事部、総務部などが新人教育プログラムを準備をして、現場との調整をしながら各部署をローテーションするケースが多いのではないだろうか。このこと自体は問題ではないが、人事主導で研修プログラムをこなすことに力点が置かれてしまうと、研修の中味が時代や経営者の思いと外れたまま新人研修が繰り返されてしまう恐れがある。新人研修の方法は個々の企業の歴史・風土・理念に基づいて形作られているため、変えるべきものと変えてはいけないものがあり、そこはハッキリ区別する必要がある。
変えるべきものとして、ある営業コンサルタント氏いわく「営業配属の人は新人の時に徹底したサービスの考え方や営業の本質をたたき込むことが必要だ」技術や作業工程も重要だが、それを後にしても「印刷物が何のために作られ、どんな方法で利用され、効果があるのか」「お客さんは喜んでいるのか」といった顧客視点に立つモノの考え方を訓練することが必要だという。営業の立場、役割をしっかり身に着けておけば、実践現場に配属されても視点がぶれない営業活動ができると力説する。その期間が入社3〜6カ月以内である(トータルには3年までの教育)。つまり営業の立場、役割をあいまいなままにして業務に慣れてしまうことを懸念している。
業態変革を目指す企業にとっては「印刷営業」ではなく「営業」でなければならない。どこの業界であっても業界固有の知識や慣習はあるもので、それを吸収しながら一人前になることなど当たり前である。大切なことは「顧客」がいて営業活動が成り立っていることである。顧客のいない営業などいない。顧客の思いを実現するための支援活動が営業の役割とすれば、そのような振る舞いをし、互いに満足を享受できるのが「営業」である。
新入社員は企業としてはできるだけ早く戦力化をしたいし、するべきである。しかしそれは早く実務作業を覚え、仕事を回していくという意味ではない。自分たち(新人)の本当の仕事の意味、役割を理解し、何をすることが顧客の満足と会社の発展になるかを「考える」期間が新入社員教育の時である。
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2008/02/19 00:00:00