本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

経営の最優先課題である人材戦略

2000 年から8 年を過ぎ、いよいよ21 世紀の本課題である人口減少問題が押し寄せてきた。この避けられない新たな社会環境の下で順応しながら印刷ビジネスを発展させるには現状を見直し、さまざまな転換が必要になる。人口減少、新卒採用、労働力から資源へ、評価制度、印刷の役割と教育、サービス発想というキーワードで考える。

人口減少時代ではマーケットも減少

2006 年にフィリピンとのEPA*(経済連携協定)の基本合意に伴い、フィリピン人看護師、介護士の受け入れが決定されたことは記憶に新しい。いよいよ医療分野でも外国人労働者を受け入れる時代になった。これと相前後して人材派遣業界、日本語教育業界により起案され、NPO 特定非営利法人「グローバル人材育成協会」が設立されている。発起人はテンプスタッフ、スタッフサービス・ホールディングス、マンパワー・ジャパンなど大 手人材派遣会社である。その趣意書には「国際化と人口年齢構成の大きな変化の波により、我が国は、産業構造変革の新たなる転機を迎えています。その中にあって、我々は、人材派遣業界、日本語教育業界を中心に、日本の社会に根ざした外国人労働環境の整備に向けて動き出そうと考える人々が集まり、発足致しました。(中略)外国人を受け入れたいと考える企業へのご指導や、企業からのご相談を通じて、外国人労働環境の基盤作りにご協力することであります。(後略)」と書かれている。

この趣意書からも分かるようにコストダウン=外国人労働者=安い労働力=劣悪環境という従来図式から180度転換を図ろうとしている。

5 年ほど前に民主党若手議員らの「1000 万人移民受け入れ構想」が物議を醸したことがあった。今日では自民党の中川秀直元幹事長の「外国人育成・定住促進基本法」 制定の発言があり、秋の臨時国会への提出を目指すという。一見滑稽とも思える発言だが現実みを帯びてくるのもそう遠い将来ではないかもしれない。「もはや外国人の力なしにこれからの日本は成り立たない。日本に住みたい人はどんどん受け入れ、育成型の移民国家を目指すべきだ」と主張している。一方、現実の足元を見ても在日外国人のための「エスニック・メディア*」が年々増え、現在印刷媒体だけでも15 言語以上、160 タイトル以上発行されている。

いずれにしても外国人労働者を従来の「安い労働者確保」という考えから、日本語教育や職業訓練に多くの時間とコストを掛け、就労資格や永住権の取得が一体となった人材育成型に変えようという動きがあることに時代の大きな変化を感じざるを得ない。これが決して絵空事ではないことを裏付けているのが日本の人口動態の推移である。

企業にとって人口とは「マーケット」(消費人口)であり「人材」(生産年齢人口)である。社会活力の源泉である生産年齢人口(15 〜 64 歳)が急速に減少し始めている。生産年齢人口は1995 年の国勢調査をピーク(8717 万人)に、その後減少局面に入り、2005 年に8442 万人となった。国立社会保障・人口問題研究所の2006 年12 月推計によると、2005 年をスタート時点とした中位推計で、2012 年に8000 万人を割り、2055 年には4595 万人と推計されている。総人口に対する割合は、2005 年の66.1%から2020 年には60.0%、2055 年には51.1%となると予測されている。2055 年をターゲットにした予測で語られているので「少し先のこと」と勘違いされがちだが、マーケットの縮小と労働力の確保問題は既に始まっている。

つまり人口減少は人材やビジネスに大きな転換を迫っている。このような長期的な流れを基本認識として人材やビジネスを考える必要がある。

(印刷白書2008 「第2 部 ビジネスビジョン ブック人材ビジョン」より・2008年7月)
*本編続きは「印刷白書2008」をお読み下さい。

●内容

*EPA
Economic Partnership Agreement:経済連携協定。外務省によると「2 以上の国(又は地域)の間で、自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野、例えば人の移動や投資、政府調達、二国間協力等を含めて締結される包括的な協定」のこと。
*エスニック・メディア
ある国や地域の少数民族集団を対象とした新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどのメディアを指す。日本に住む外国人(定住者も含む)向けには、さまざまな種類・形態があり、最近はインターネットを利用したメールマガジンやWeb サイトが増加している。使用言語も、英語、日本語を始め、中国語、韓国・朝鮮語、ポルトガル語、タガログ語、スペイン語、タイ語、ビルマ(ミャンマー)語、インドネシア語など、多岐にわたる。

「印刷白書2008」は、2008年6月24日発売(一般販売価格30,000円、JAGAT会員企業には1冊を無料配布しました)。

 

2008/07/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会