最近の世の中を見渡すと健康ブームでわいています。CMなどでは低カロリーや糖分ゼロなどのうたい文句や、スーパーやコンビニを見ても健康をキーワードにした商品があふれ返っているのが分かります。またウォーキングやランニングがはやっているようで、皆さん自分の健康には気を使っていらっしゃいます。4月からはメタボリック検診も始まりますので、ますます意識せざるを得ない状況です。
印刷物を制作・製造する皆さんの職場環境はいかがでしょうか? 適切(健康)な状態でしょうか? 私のところの専門スタッフが数多くの企業に訪問して、環境調査を行った結果、多くのお客様の色を見る環境自体が不健康な状態にあることが本当によく分かりました。
「うちは、CMS環境は大丈夫、きっちりやっているから!」
「(関西弁)あの〜こんなん出ましたけど……」
「えっ! 何これ、そんなはずは……」
「オカシイですねえ(ココロの中で「キターーーーー」と叫ぶ!)」
多くのお客様の現実です。
筆者の会社では、これまで述べてきた、「DP2.0 企業のマーケティングを支えるデジタルプリンティング」実現のためのプラットフォームとして統合CMS環境構築を重視しています。前回のテーマ「Web to プリント」や、クロスメディア制作が拡大する中、モニタプルーフからプリント・印刷に至るまでの統合CMS環境整備はますます重要になりつつあります。
お客様が訴えるCMS課題(生の声)について俯瞰(ふかん)します。皆さんの会社はいくつ当てはまるでしょう?
□ モニタで見た色どおりにプリント/印刷できない
□ 色校正が何回も必要
□ カンプとオフセット印刷の色の印象が違う
□ 隣の席の人とモニタの発色が違う
□ 出力するプリンタによって色が違う
□ 人(PC)によって出力される色が違う
□ 印刷物は見る場所(社内)で印象が異なる
□ 社内で色の管理者がいない
□ そもそもカラーマネジメントって何?
アナログ時代は印刷物を制作していく上で、例えば、写真原稿ならポジフィルムやカラープリントから作り込むので、目標とする色があったわけです。紙面デザインも紙版下にCMYKの網%を指示したり、カラーチップを添付して色指定しました。これが最近ではすべてモニタ上での作業に変わっていますし、写真原稿の多くがデジタルカメラデータです。
そのような環境で、モニタの発色が正しくなかったり、プリンタの発色がオフセット印刷の特性と大きくずれていたら、何が正しい色なのか、何が目標とする色なのか全く分からなくなります。その中で印刷物のデータを作り上げ、「色校正するとイメージが全然違う!」という現実を突き付けられても、よりどころがないわけですから、「手の着けようがない」わけです。そうなると、「デザイン部門が悪い」「印刷会社が悪い」「機械が悪い」など、根拠のない相互他責の嵐、しかも下流になるほど「とにかく色が合えばいい」と責任を押し付けられる悲しい構図。
CMS教育を受講できる機関もまだまだ少ないでしょうし、機材やアプリケーションが短期間のうちにバージョンアップされ、その都度ブラッシュアップ受講もまた大変です。しかし、デジタル時代は、絶えず最新の内容を理解しておかないと、間違った作業環境から間違ったデータ作成、間違った確認(モニタ、プリンタ)を行い、そのデータを印刷会社(印刷部門)に渡し、上流から下流までムダな作業がいたずらに増え、疲弊し、利益も出ない構図から脱却できません。
フルデジタル時代のCMS欠乏症は多様な原因から発生しますが、多くの企業が共通して抱える課題は、案外基本的なマネジメントで解決できます。以下の5項目について「Yes/No」チェックをしてみてください。
□ MacやPCのモニタは、定期的に状態を把握し、調整している
□ 作業場所の蛍光灯はどんなスペックの蛍光灯が付いているか把握している
□ 使用するアプリケーションのカラー設定や、印刷出力する際のカラー設定を正しく設定している(理解して設定している)
□ プリンタの特性がどのようになっているか把握している
□ 目標とする色が存在している(ターゲットカラーが明確である)
上記は、皆、カラーマネジメントの土台となるべき管理項目ですが、日常の業務に追われる中、手着かずで放置され、まるで生活習慣病のように多くのトラブルを発生させるに至ります。当然「No」が多いほど、生活習慣病予備軍です。
先ほど、CMSの問題は下流に責任が押し付けられがちと書きましたが、最近そのクライアント企業サイドに意識変化が見られます。 メーカーなどが、新製品の販促マニュアルを営業マンや販売代理店の説明会に配布する場合、そのコンテンツ作成は各人のPCを使ってOffice系アプリケーションで作るケースが多いと思います。担当者はそのデータを印刷会社に印刷発注しますが、納品された印刷物の色は「イメージと全然違う!」といった現象が発生します。自分のモニタ環境が印刷物を見る環境と全く合っていないのですから当然の帰結です。
従来、「何とかしろ」とメーカーが高圧的になるか、「クライアントは分かっていない」とプロ側が居直るか(失礼)して、建設的なコミュニケーションがなかなか成り立ちにくかったのですが、企業側もいろいろ原因究明に取り組み、協力したいという意見が多く聞かれるようになりました。これは単なる印刷発注の効率化だけの話ではなく企業のCI/ブランドマネジメントとしてのCMSの重要性が脚光を浴びつつあることも関係しています。 しかし、企業側は要因を分析し、課題を把握し、対策を立てる方法が分かりません。逆の言い方をすれば課題解決を手伝ってくれる企業を探していると考えることができます。印刷企業が、印刷受注者から上流にシフトし、その役目を担ってはいかがでしょうか。
クライアント企業が印刷物の色管理について意識を持ち始め、しかもその課題を解決する知識・ノウハウはない。一方、制作・印刷会社は、DTP知識から印刷ノウハウを豊富に持っている。普通に考えれば、「未知」「既知」の関係で、コンサルティングサービスが成り立つ状況です。今こそクライアント企業に対するプリンティングをディレクションできる「プリンティングディレクター(PD)」のポジション確立を目指しませんか? PDには印刷物制作に関するさまざまな知識が要求されます。その中でも重要な要素としてCMSとWeb to プリントのノウハウは中核になります。
「言っていることは分かったが、自社の環境がどうなっているか、何から手を着けていいか全然分からない! それを調べる道具も知識もない」。要は、「Quality Control:品質管理」の考え方そのもので、測れないのは改善できないということをクライアント企業は言っています。 実際、現状分析のデータなどの証拠がなければ、改善に向けた稟議(りんぎ)も起案できませんし、改善効果も測定できず、投資価値も報告できないといった悪循環は目に見えています。
そこで当社で立ち上げたメニューが、お客様の印刷物制作の作業環境を調査・分析して(見える化)、より良い環境作りのためにアドバイスをする「C-Program」です。 「C-Program」はお客様の作業現場で「作業環境診断」と「デバイス診断」を行い、課題を明確化してその課題解決の対応方法をレポート報告させていただくものです。 ひと言で言うとお客様のCMS環境の健康診断を行うわけで、病巣が発見され、そのレベルが可視化されば、後は基準色を設定し、カラープロファイル作成サービスを行い、運用基準を決め、最新設備に変えたり……と打つ手は何も目新しいことでなく、シンプルに決まってきます。
「うちは、CMS環境は大丈夫、きっちりやっているから!」
「(関西弁)あの〜こんなん出ましたけど……」
「えっ! 何これ、そんなはずは……」
「オカシイですねえ(ココロの中で「キターーーーー」と叫ぶ!)」
「次は何をすればいいの?」
「そうですね……(わざと思案にふける)」
それは、C-Program推進者のひそかな「禁断の喜び」の会話だったのです。
さて、今回でDP2.0論は終了です。走りながら考え、考えながらプレゼンを繰り返す日々の中、まだまだ煮え切らないところも多いのですが、「企業のマーケティング活動をワンストップで支援するデジタルプリンティング」というスタンスはご理解いただければ幸いです。次回は、「DP3.0 成長しつつあるコミュニティ市場と連携したデジタルプリンティング市場の可能性」について、少し先を見たいと思います。では!
(「プリンターズサークル」2008年6月号より抜粋)
◇Print-Betterでは、デジタルプリント関連情報をまとめて紹介しています。
ALPS協議会・デジタルプリント情報ポータルサイト
2008/08/10 00:00:00