今から2年半前の2006年3月に第一期のクロスメディアエキスパート認証試験が行われた。その頃はまだマスコミではクロスメディアという言葉は出てこなかったが、この2年で電通をはじめ多くのメディア関連業種でクロスメディアという名の部署ができた。また市場の試算(?)というのも見たことがある。クロスメディアをどう定義するかというのは立場によって若干の違いはあるが、どこからどう進むのであれ、メディアは融合的に利用されるようになることは間違いない。
別の言い方では、孤立してやっていけるメディアはとてもニッチな特殊市場の小さなものしかない。多くの場合はメディアの使い方を再整理して組み替えたほうが効果的になる。規模の大きいところではTVでショッピングの案内をして、注文はコールセンターで電話で受けるよりも、受注をケータイやWebにしていく流れがあり。また購入後の問合せやアフターのために再度店頭を訪れなくても、Web・mail・宅配などの組み合わせでできるものが増えた。
個々にはいろんな工夫があるが、全体の動向を考えると、生活者・消費者にとってモノやサービスの入手のために辿るAIDMAなりAISASなりの全工程がストレスなくできるようにモノゴトは進化していく。クロスメディアの部分だけが肥大化することは考えられず、ゴールはモノやサービスの入手であり、その間にあるいろいろなメディアによるコミュニケーションが再編されようとしているのだ。だからクロスメディア市場がどれだけある、ということに関心を持つよりは、いま使われている既存のメディアがどのように再編されようとしているかを考えなければならない。
つまりメディアを使うサービスに携わる人は、メディアが生活者・消費者のエージェントに向かうような指向で、メディアの組み換えをし続けるのがクロスメディア時代であるといえる。この絶えずチャレンジし続けるという自転車操業のようなビジネスを担うための能力は、一定の知識を得ればオワリというものではなく、必要な知識の変化に対応するとともに、考える手法を身につけなければならない。クロスメディアエキスパート認証試験が2年ごとに更新試験を行うのは、このような指向をもった方が求められているからである。
2年前にクロスメディアエキスパートの資格を取得されたかたは、業務においても新たな分野のリーダーとしていろんな試行錯誤をしたり新しい出会いで刺激を受けることが多かったはずである。そこで更新試験は最初の受験時のような学科問題を繰り返すのではなく、この間に触発されたフレッシュな感覚・感性を反映させて、自らの体験や思考をレポートにして提出していただく形式になった。この2年間にあったことを振り返っていただき、クロスメディアエキスパートとしての自分の現在を総括していただきたい。きっと大きな成長があったことと思う。
初回の更新レポートの課題は3つあり、そのうちいずれかを選択してレポート(または仮想提案書)を作成していただいた。
レポート(1) 「自らの業務におけるクロスメディア的な取り組みについて」
レポート(2) 「クロスメディアについて私が考えたこと」
レポート(3) 提案書の作成「仮想企業・さぬきうどんチェーン」
実際に提出されたのは以下のとおりで、審査の結果は提出者は全員更新に合格した。
・レポート(1) 11名(34.4%)
・レポート(2) 7名(22.6%)
・レポート(3) 13名(41.9%)
・未提出 1名
合格者:31名(32名中)
提出いただいた中で、特にレポート(1)および(2)においては、日々の知識の充足や経験によって、ビジネスでの活躍やクロスメディアに対する考察が、多分に伝わってくるレポートとなっており、まさにクロスメディアエキスパートとして相応しい内容のものも多く見られた。
■採点基準
レポートの審査は、(1)(2)(3)と異なるテーマでも同じ<独創性><有効性><発展性>の3項目を基準にそれぞれABCDで評価して採点された。
A:めったにない秀逸な提案である
B:よい提案である
C:月並みな提案であっても自分で組み立ててある
D:前進はみられない。(不合格)
この3項目は前述のクロスメディアエキスパートの指向することから設定したものである。
<独創性>
本人が考えたオリジナリティが認められる内容であること、また自らの考察であることがわかるもので、テーマそのものはたとえありふれたものであってもかまわない。ビジネス面での前進であるとか、インターネットを巡る状況に対して自分なりに考察しているステップが見られるもの。
<有効性>
内容の斬新さとか独創性とは別に、提案の効果が発揮されることが想定できる内容であるとか、即効性という点でその考えを他の人にも広めビジネスのヒントになる価値があるもの。
<発展性>
現在ではまだ効果が発揮できないとしても、その考えなり提案は他の方面に水平展開できる可能性があるとか、今後に技術・能力が変化するにつれてビジネスの拡大が期待できるような将来性があるもの。
まだまだデジタルコミュニケーションの新しい技術やネットを使った新しいビジネスモデルには多くの工夫の余地があるが、それは技術やモデルに秘訣があるのではなく、今のビジネスの文脈にフィットして一歩前進につながるようなコーディネーションこそが求められていることである。この秋からクロスメディアエキスパート資格取得者の交流も盛んになる予定で、取得者同士の協力関係ができればさらに相互の能力向上に結びつくとともに、ビジネスにおける競争力にもなるだろう。
2008.8 クロスメディアエキスパート認証事務局
2008/08/18 00:00:00