あまり知られてはいないがJDFの仕様には、Capabilitiesというものがある。これは、JDF1.2から仕様に加わったもので、JDFに対応したデバイスの機能や性能を記述する方法を定めている。究極的にはプラグアンドプレイによるJDFワークフローの構築を目指すものである。
Capabilitiesの範囲は幅広いが、基本概念はPostScriptプリンタの機能を記述するPPD(PostScript Printer Description)に近い。というよりアドビシステムズはCIP4の主要メンバーであるので、PPDをベースに拡張したと考えるほうが自然であろう。
PPDはプリンタメーカーより提供されるテキストファイルであり、プリンタが対応している用紙サイズ、実装されているフォントの種類、解像度、カラーマネジメントに関する情報などが記述されている。
プリンタドライバはPPDの情報を読み込んで、そのプリンタに適したユーザインタフェースを構成する。例えばユーザが選択可能な用紙サイズのリストを作ったりメニューのデフォルト(初期)値を設定したり、両面印刷に対応していないプリンタであれば、ユーザが選択できないようにするなどである。
JDFのCapabilitiesも同様にコントローラがデバイスの性能情報に基づき適切な作業指示を行えるようにするものである。大きな違いはPPDはテキストファイルで提供されて、事前にPCにインストールしておく必要があるのに対し、JDFでは動的に照会/応答を行う点と交換データがXMLベースである点である。なお、照会と応答にはJMFのメッセージを利用する。
また、Capabilitiesの利用者はデバイスのオペレータ以外にも、MISシステム、DTPアプリケーション、(プリプレス)ワークフロー管理システムなどさまざまなものが想定できる。
Capabilitiesを利用すれば、作業指示書ありきのJDFワークフローではなく、事前にどんな印刷・加工ができるかを確認したうえで、適切な(=実行可能な)作業指示書(JDF)を発行することができる。また、動的に機能や性能を問い合わせることができるということはプラグアンドプレイが可能ということでもある。例えばプリプレスのワークフローの管理システムがあって、複数台つながっているRIPの一つを交換したとすると、管理システムは即座にそのRIPが対応している線数/解像度などを把握することができる。
さらに、Capabilitiesではローカライズ(多言語対応)や長さや重さなどの単位設定といったユーザインタフェースの情報を定義できたり、最高処理速度、平均処理速度あるいは平均セットアップ時間といった機械性能を記述することができる。
あくまで理論上の話ではあるが、JDF対応の生産管理システムは、ネットワークにつながった生産設備について、
・どのような仕事ができるか?
・その処理にはどの程度の時間がかかるか?
・いまどのような状況か?(稼動/非稼動/故障)
といった情報を動的に集めることができる(最初の二つについては、今は膨大な手間をかけて人がマスタ登録している)。
工程設計や生産計画(スケジューリング)において圧倒的な効率化を図れる可能性を秘めているが、残念なことに表立ってはCapabilitiesを利用した管理システムの話は聞こえてこない。
参考ドキュメント
JMFによるメッセージ交換
JDF/JMFで規定されている設備のステータスリスト
JDFで定義されているプロセス(工程)リスト
(2008年8月)
2008/08/28 00:00:00