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複眼的メディア活用

販売促進でも教育でも娯楽でも住民サービスであってもメディアを組み合わせて使うことは今までも行われていたし、今日ではデジタルメディアも使うことは当然のこととなっている。問題はどのように組み合わせれば今まで伝達できなかったところに情報を知らせることができるかとか、費用対効果が高いかなど、組み合わせのマネジメント能力である。組み合わせられるべき個々のメディアは、印刷であれ動画であれ従来からの制作の世界があるが、組み合わせのマネジメントは個々のメディアに携わる人々にとっては弱いところである。

例えば街角でフリーペーパーの置いてあるのをよく見かけるようになったが、必ずしも人々の関心を惹いてはおらず、そのままゴミになるだろうなと思われるものもある。こういうことが起こるのは、各メディアが自分中心で考えるからで、フリーペーパーなら「タダだからもっていってください」というだけでは不十分になった。駅の電飾看板のところをフリーペーパーのラックに作り変えたのが多いが、そこが立ち寄るに値する魅力ある場所であるという演出は、フリーペーパーの編集をしている人にはないかもしれない。

昔はメディアの役割に関しては、よくAIDMAの法則が使われた。Attentionは短時間の接触でもインパクトの強いメディアの役割で、Interest以下順次買う気を起こさせて、Action(購買)に結びつけるシナリオであるが、かつてのプロモーションの流れである放送・新聞→雑誌→営業ツール→店舗POPという順序は今日では崩れてしまって、WebやケータイがAIDMAの随所に絡むようになった。つまりAやIが必ずしもマスメディアではない状態である。

AIDMAのプロモーションの流れが固定的であった時代には、各メディアの立ち位置は決まっていて、フリーペーパーなら新聞に折り込むとかPR誌は顧客に配るという配布ルートが出来上がっており、媒体と人々との接点を考慮しないで済んだ。しかし今は「ユビキタス」な方向に進んでいるので、装置としては店の陳列にもレジにも、電車の中でもタクシーの中にもデジタルメディアがあるように、人はいつでもどこでも情報に接することができるようになる。だからメディアの側からどのように人々との接点にアプローチするかを考えなければならない。

デジタルメディアはそれ自身の特性として、お互いにリンクを貼ったり飛んだりできて、自分の特質を活かすように前後いろいろな情報源と適切なネットワークを築ける。印刷物のようなオフラインのメディアは、最近では覚えやすいキーワード+「検索」ボタンを表示することでWebにつなげようというものが多いが、見た人の記憶とかQRコードのみが頼りということになりがちである。

しかし昔から、カタログ・パンフから小は「本の栞」に至るまで人が手に取ろうとする習慣のある印刷物はいろいろあるので、ポスターなり今後広まるデジタルサイネージと紙媒体がうまく組み合わされる工夫がされている。デジタルサイネージのようなOutOfHomeメディアもまだ端緒なのでいろいろなメディアからラブコールがかかっているが、印刷媒体もなるべく早く配布モデルの研究に入るべきだ。

いくらデジタルサイネージの着目率が高くても、設置して意味がある場所はおのずと絞られてくるであろうから、ひとつの場所で日時曜日によってコンテンツを変えながら情報を流すようになるかもしれない。その場合はPODを使って毎日なり時間帯で必要部数を提供するものでないと管理が大変になるし、デジタルサイネージのフレキシビリティが活かせない。ポスターもパンフも栞も印刷物の作り方に関しては印刷業は慣れているが、それを見つけたり手に取る人の身になって設計することがQRコードやWebとの連携では必要で、自分の扱うメディアの知識だけでは良い結果はでない。そういった他メディアと自メディアを同時並行的に考える複眼的な思考がクロスメディアでは大事である。

2008.9 ALPS協議会

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2008/09/12 00:00:00


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