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フリーペーパーの市場と事業


2008年10月5日


フリーペーパーの市場動向

 フリーペーパーの広告市場規模が初めて示された。「日本の広告費2007(電通)」が3,684億円、「情報メディア白書2008(電通総研)」が4,320億円と推計している。おおよそ4,000億円規模と見ることができそうだ。
 「日本の広告費2007」に基づいてマス4媒体と較べると、ラジオ(1,671億円)を大きく上回り、雑誌(4,585億円)に迫る位置にある。テレビ(約2兆円)、新聞(9,462億円)は別格としても、広告主が有力な広告媒体として重視していることがわかる。
 フリーペーパーの年間総発行部数は約100億部と見られるので、部数から見た位置付けは新聞(約180億部)と雑誌(約40億部)の中間程度になる。発行部数の増加はフリーマガジンの隆盛による貢献が大きく、総発行部数の40%近くを占めてなお、増え続けているという。
 この1年ほど、自治体によるフリーペーパー発行の事例が増えた。苦しい財政状態を背景に、「民活」をキーワードにフリーペーパー発行社の力を借りる。広告収入で発行費を賄い、より読まれる媒体を目指して広報紙をフリーペーパーに作り変える。横浜市がリビング社と協働して創刊した「ハマジン」はその代表格だ。


フリーペーパーの不利

 2000年以降は様々な分野で構造改革に伴う法改正や規制緩和が進んだ。例えば地下鉄駅構内にフリーマガジンのラックを設置可能にしたのは規制緩和の賜物である。
 しかし、課題はまだ残っている。現段階でフリーペーパーには第三種郵便の資格がないので、送料は有料紙誌なら第三種郵便を利用して40円で送れるところを100円程度かかってしまう。また、選挙期間中の選挙記事は第三種郵便の資格がある有料紙誌だけが記事にできると公職選挙法が定めていて、フリーペーパーは門戸を閉ざされている。
 今後は有料紙誌と無料紙誌の違いがさらに減ると予想されるので、このような課題への今後の行政の対応にも注目が集まる。
 

フリーペーパー専業というビジネス

 千葉県と埼玉県でフリーペーパー165万部を発行する(株)地域新聞社は、2007年10月に大証ヘラクレスに株式上場を果たした。主力事業はフリーペーパー「地域新聞」の発行とチラシ折り込みである。
 2008年8月期の業績は原油高の影響を受けてやや厳しい予想ながら、2007年8月期まで4期連続の増収増益と急成長で前期は売上高26億円、経常利益1.8億円であった。
 経営理念を「人の役に立つ」と定め、組織設計では営業体制を最重視、営業ではデータ主義に立つ。新卒採用では10数回に及ぶ会社説明会で集めた1000人以上から数次に渡る試験を経て人材を選考する。2007年の新入社員はなんと25名で、しかも1人の脱落者も出ずに2年目に突入できたと社長の近間氏は喜ぶ。
 165万部は細かく約3万部を1版とした49版から構成し、49版は各地に配された6支社から週刊で発行してポスティングする。
 同社は、近間氏が経験とデータに基づいて作り上げたフリーペーパー専業の経営モデルのひとつと見てよいのではないか。

プリンティング・マーケティング研究会
2008年7月30日セミナー「フリーペーパーの市場と事業」より

2008/10/05 00:00:00