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プリプレス開発の牽引力はIT業者にシフトするか?

パソコンのCPUが1GHzになるとか、2万円で20GBのハードディスクが買えるようになっても、スキャンすると何十MBになるカラー画像と言うものは扱い難いものである。だからとりあえず適当にスキャンしておいて、それを制作ワークフローの中であちらこちらに移して作業するのは大変効率が悪くなる。MOを持ち運んでもスニーカーネットワークというのは、画像数の多い仕事場では大きな問題で、そのためにプリプレスではファイルサーバや100BaseTが他の分野よりも発達したのかもしれない。

かつてはDTPでは版下までの作業をして、画像は後工程の製版分野に任せる考えであったので、Aldusが提案したTIFFとかOPIのように、画像そのものの処理は他人事とする規格でもよかった。OPIでは出力と関係ないはずのプリビュー画像を変更してしまったためのトラブルなどが起こり、それを避けるための約束事を利用者環境において追加していかなければならなかった。

近年のDTPシステムは冒頭のようなLANの強化をして、特にレイアウト段階での画像レタッチができないOPIの制約から自由になれるものとして、高解像度データを直接ハンドリングするワークフローが作られるようになった。しかし、画像を扱うワークフロー全体の効率と、各作業局面での効率を上手に考え合わせたソリューションには多くの課題がある。

CEPSの時代のワークフローは固定的であるが、作業用プリビューと出力の関係などはブラックボックスになっていて、利用者は仕組みを意識しないでも間違いなく使えた。利用者が手順を間違えて画像品質を落とすようなことは防げたのだが、CEPSのようなトータルなターンキーシステムは高価につくので次第になくなり、スキャナと出力機まわり中心のシステムに限定されていった。そのためにCEPSのワークフローの裏方の仕組みは、あまりカラーDTPのノウハウとして引き継がれていないように思える。

画像はスキャン時からレタッチ、レイアウト、校正、出力の各段階でさまざまな中間画像フォーマットが使われるように複雑化の様相を呈している。DTPがハードウェアでCEPSを凌駕するようになったものの、作業者が適切なフォーマットを選択して、画像のワークフローをきっちり決めないと、トータルとしてCEPSを凌駕することはできない。これでは今のカラーDTPはCEPSに比べて進歩とは言い難い。

つまりCEPSの縮小によりDTPの進歩の力も無くなってきた。従来プリプレスの進歩はほとんどベンダー任せであり、現場側からワークフローの自動化を考えて、それに適した画像フォーマットを提案することはなかった。今後とも利用者側から自発的に業界標準を作る動きが出るとは考え難いが、これからはEC化の中でワークフローの一部を代行しようとするASP業者が新たな牽引役になって、現場よりの業界標準作りが進むのかもしれない。

(テキスト&グラフィックス研究会会報 通巻137号より)

2000/07/21 00:00:00


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