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Adobe InDesignはQuarkを破るか?

InDesignのメリットは明白であり,あらゆる点でQuarkよりも優れているように見えるが,実際にQuarkから切り替えるメリットはあるのだろうか。Quarkは非常に浸透しており,特にバージョン3.3から4になるのに時間がかかったので,Quarkのトレーニングはみっちりできたという効果もあった。それだけQuarkになじんで使っている人は,よほどの理由がないと別のシステムにシフトしたくない心理的要因があるだろう。このことがInDesignの最大のハンディである。

しかし,単にレイアウトをするのではなく,LastMinutesChangeといわれる最後の段階での変更への対応もレイアウトソフトのホットな競争の場である。まずQuark4.0はベジェツールを持ちこんでIllustratorに戻らなくてもベクタの修正ができるようにした。InDesignではベクタだけでなく何でもLastMinutesChangeがスムースにできるように考えた。Quarkのベジェツールがありがたいデザイン指向の人にとっては,InDesignの方がもっとありがたいかもしれない。

今日ではページネーションは他のシステムとの連携で仕事をするようになっており,ユーザは目的に応じてページネーションのソリューションを使い分ける混在時代になるとも考えられる。例えば新聞で組版にはこだわらない情報的紙面で,すでにXTentionに投資して自動生成をしていた場合,わざわざつくり変えないのではないか。しかし,トップページ,カラーページなど視覚的に強調するには,組版も優れたInDesignの方がむしろいいだろうともいわれている。

システムやワークフローの改善をシステムインテグレータに頼む場合は,InDesignは開発コストの面で有利になるかもしれない。Quarkで,あることを改善するのに半年かかるのが,InDesignなら1ヶ月でできる可能性もある。それを狙ってInDesignはプログラムのモジュール化をしているのだろう。

過去にAdobeはPageMakerのカスタマイズ機能をもってしてもQuarkを追いかけても追いつかないと判断して,Adobe自身,内部で組織を変えてまでモジュール化に進んだはずで,Quarkの開発スピードを上回る勝算がなければInDesignを世に出す意味はない。 InDesignはQuarkとレイアウト機能を天秤にかけて簡単に乗り移れるパッケージソフトではなく,レイアウト作業と他のシステムの結合度を高める過程で,InDesignの方が有利というかたちでだんだん忍び込んでくるような長期的戦略もあるように思える。

短期的にはInDesignの効果はQuarkユーザに現れ,Adobeとの対抗上Quarkが非常に柔軟な態度になり,ユーザの声に耳を傾けるとか,オープン化,ネットワーク化,ライセンス問題の軟化など,むしろQuarkを離せないものにするようになるのではないだろうか。(テキスト&グラフィックス研究会 会報通巻117号より)

1999/09/01 00:00:00


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