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リモートプルーフシステムの構築

日本印刷技術協会 研究調査部  花房 賢

 リモートプルーフについて述べる前に,印刷における校正(プルーフ)の要件について整理する。
 校正でチェックする項目には,文字・図形・画像といった部品データから,ページレイアウト,色調といった全体イメージに関するもの,そして面付け,台割,表裏見当といった仕上がり形状に関するものまで多岐にわたっている。
 現状の校正刷り(色校正)は,それ1枚でほとんどすべての確認作業が行えるため,非常に便利なものといえる。それをそのまま,ネットワークを利用したリモートプルーフに置き換えることを想定してみる。
 まず,送信するデータは,信頼性の高いRIP済みデータだとする。すると,データ圧縮を利用したとしてもかなりの大容量となる。次に,大容量データの送信に耐えうるネットワーク回線を準備しなければならない。回線の距離やサービスの種類にもよるが,月額数十万円程度の出費は覚悟しなければならない。そして,それぞれの顧客に網点出力が可能で相当高価な高精度DDCPを設置することになる。
 これ以外にもやるべきことは多々あるだろうが,これだけ並べただけでも,現状の校正刷りを単純にネットワークに置き換えることは現実性に乏しく,ナンセンスであることがわかるだろう。従って,何をチェックするのかを,突き詰めて考えておくことが必要だろう。

リモートプルーフの目的はワークフローの再構築と営業支援

 それではリモートプルーフの目的,メリットは何であろうか。本誌1999年10月号特別企画に掲載された,大日本印刷包装事業部におけるネットワーク校正システムの事例記事を紹介しよう。同社のネットワーク校正とは,単純に従来校正の部分をネットワークに置き換えることではなく,デザインから校了に至る工程を統合し,ひとつのプロセスとして再構築する考え方の一部分という位置づけである。つまり,校正だけを切り出して考えてはダメで,トータルなワークフローを最適化する視点が必要である。
 そして,システム構築のきっかけは,営業活動の課題をヒアリングした結果,校正のやり取りでの手間や時間に問題が多いことがわかったことだという。校正紙の準備,校正刷りの受け渡し,顧客からの指示を現場に伝達,またそのための資料作りなどは,印刷営業の本来業務ではない。そこで,これらの負担を減らし,本来の営業活動を行う時間を増やすことも大きな目的だった。
 DTPから始まったデジタル化の恩恵は,主に製造工程における納期短縮とコストダウンであった。営業とデジタル化との関係は,データ入稿への対応程度であったが,いよいよ営業の仕事もデジタルの流れのなかに組み込まれつつある。
 同社のネットワーク校正の仕組みでは,製造部門が作業の終わったDTPのファイルをサーバに登録すると,自動的にPDFが作成される。営業が内容を確認し,ネットワークで顧客にPDFを渡す。ここでの工夫として,「校正回覧」という管理システムを作成している。顧客の発注担当者は,回覧すべき部署はどこで,現在,校正がどこまで進んでいるかを管理画面で確認できる。また,赤字訂正については,Acrobatの注釈機能を利用しているが,顧客のオペレーションが複雑にならないよう,また修正結果が簡単に集約できるように,同社で機能を追加している。
 また,バックに履歴管理のシステムも動いており,初校,再校時にどのような直しを入れたかが,データベースに蓄積されるようになっている。
 同社は,この校正システムのメリットを次の3点であるとしている。

1. 同時校正でスピードアップ
2. 進行管理で回収・確認作業を快適に行う
3. 履歴管理の仕組みで信頼性を向上させる

 「同時校正」とは,従来は担当者が順番にチェックしていたのに対し,1つのPDFデータにアクセスして並行作業ができるようになったという意味である。
 このように顧客の業務(校正作業)にまで踏み込んでワークフローを改善することにより,複合的なメリットが得られる。

(プリンターズサークル10月号「特集 使える!リモートプルーフ運用のコツ」より抜粋。詳しい内容は記事をご覧ください)

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2000/09/24 00:00:00


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