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ヒューマンタッチなインターネットビジネス

インターネットの普及により,EC(電子商取引)市場は急速に拡大している。インターネットをビジネスチャンスとして捉えるには,それなりの知識,ノウハウが必要になってくる。自社とは関係がないと傍観するにしても,ビジネスの場で新たな概念や常識が生まれつつあることを無視してはならない。サービスに付加価値が加わり,新市場を拡大していくことになるのは間違いない。Webソリューションとセールスプロモーションをサポートしている(株)コスモス ネットワークの代表取締役社長増田美希夫氏に同社の姿勢を伺った。

販促部門のアウトソーシングとして展開

 コスモス ネットワーク(東京・港区)は,1992年に企業の宣伝販促部門にマーケティングプランや販促ツールの提供を行う会社として設立された。代表の増田氏が起業前にコンピュータ会社で営業をしていたこともあり,IT関連企業のカタログやパンフレット等の販促ツールを引き受け,DTP制作を中心に行っていた。コンピュータ用語ひとつとっても他の代理店より詳しいことも同社にとっては有利であった。
 設立当初からメーカーと直接取り引きを行い,制作会社というより販促部門のアウトソーシングのような形で事業展開していた。1995年ごろからDTPの広がりに伴い,デジタルデータ情報の二次活用を本格的に考え出した。ソフトウェアパッケージ販売,マニュアル制作から商品企画のサポートも手がけるようになる。1997年くらいまではDTP中心で推進してきたが,ここ数年Web関連とデジタルコンテンツ関連が増えてきている。

Webとデジタルコンテンツに注力

 現在同社の主な業務は,(1)Webソリューション,(2)セールスプロモーション,(3)ビジネスサポートに大別できる。

(1)Webソリューション
 e-Business,Web Design&Marketing,Digital Contentsの3つのソリューションがある。
 インターネットを利用したe-Business のシステム構築を展開している。B to B/B to C 向け「EC構築ソリューション」や従来は印刷物に頼っていた商品カタログをWeb上で公開する「電子カタログシステム」など,より実践的・効果的なWebソリューションをトータルにサポートする。
 Web Design&Marketingでは,目的に合ったホームページの企画・制作・デザインを行っている。またアンケートや資料請求などのユーザ情報を分析し,アプローチするところまでデータベースを使ってのマーケティングやインターネット広告などをサポートしている。
 Digital Contentsでは,大量紙媒体のOCRサービス,XML,SGML,HTML,PDF化サービス,光ファイルシステムのデータ変換サービスを行っている。またドキュメント管理ソリューションの提供もしている。

(2)セールスプロモーション
 販売促進用ツールのデザイン,制作から販促宣伝のプランニングとプロモーションを行っている。インターネットを切り離した部分でのマーケティングと考えてよいだろう。新聞,雑誌等の広告宣伝物を作るところまで行っている。

(3)ビジネスサポート
 パッケージソフトの製造からマーケティング支援,技術支援などを行う。教育セミナーの請け負いも業務のひとつである。その他各種キャンペーンの事務局代行をしたりと,ユーザサポートの代行業務として派生しているビジネスである。

「eカタログ」と「eショールーム」を展開

 今年7月にライブピクチャージャパン(株)と提携して,前述のWeb上で閲覧できる「電子カタログシステム」をリリースした。
 「電子カタログシステム」の概要は大きく2つに分かれる。それぞれ特徴によって「eカタログ」「eショールーム」と名付けている。
 「eカタログ」はデータベースに製品情報を登録しておくと,自動的にHTMLに書き出されてWeb上で見られるものである。「日本にはソリューションとしてはまだないでしょう」と増田氏は語る。普通の静止画だけでなく,動画や音声データも取り込み,Flashpixを使って商品を手に取るように質感を見せながら印刷物では伝えきれなかった商品の魅力を最大限に伝えるようにした。データベース化されているので,大量の製品情報を管理でき,かつカタログ形式でWebに載せたい場合には向いている。製品の追加,修正もデータベース内を変更するだけで反映される。また資料請求やキャンペーンによる見込み客情報が顧客データベースに蓄積され,有効なWebマーケティングを連動させることもできる。さらにECへの拡張によりB to Cが可能になる。
 「eショールーム」は従来のホームページの画像の部分だけを工夫し,仮想的にショールームのページを設置するものである。3Dで商品を回転させたり,展示された商品にズームを使って近づくこともできる。ショールームの中を見て歩くようなパノラマ空間が楽しめる。新製品や主力商品を特集し,より臨場感をもってアピールしたい場合に最適である。
 この2つのソリューションを用途に合わせて組み合わせて使っていけば効果的であろう。
 Webの良さは即時性があることだ。新製品情報が追いつかなくて機会損失になることが防げるし,修正や改定のたびに制作コストがかかるといった面が解消される。
 同社としてはこのシステムを印刷会社とパートナーシップを組んで事業展開したいと考えている。インターネットのスキルがない,Webビジネスに取り組みたくてもそのきっかけがつかめないといった印刷会社にも非常にわかりやすく,E-ビジネスを説明できるシステムだと思っている。
 「紙のカタログのデジタルデータがあればeカタログは容易に作れる。顧客にはパイプが途切れることなく,媒体が紙プラス電子という切り口でプレゼンができるようになる」という。
 Web上の電子カタログを製品カタログのマスターデータとすることを提案している。即時性,インタラクティブ性,またさまざまな表現力が可能なことを挙げている。もちろんマスターから紙媒体によるカタログやCD-ROMカタログを作成することはたやすくできる。

コンサルティングによる顧客満足の追求

 同社では,顧客がどんな形でeビジネスに取り組んでいきたいのか,何をしたいのか,ヒアリングから始める。声を聞くところからすべてが始まるという。顧客ごとのシステムに合わせて構築していくからだ。そのためには,杓子定規な営業ではなく,コンサルティングを含めて顧客満足を追求していきたい。「無機質になりがちなインターネットビジネスをいかにヒューマンタッチに結びつけるかが大切」と,デジタル環境の有効性を最大限に生かした実践的で効果的なソリューションを今後も提供し続けたいという(http://www.cosnet. co.jp)。  (上野 寿)

『JAGAT info』2000年9月号より

2000/09/22 00:00:00


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