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サービス化やIT化で苦戦する印刷業界

アメリカは好況なこともあって人手は足りず、企業は自分のコアビジネスに集中するために、周辺事務をアウトソーシングする流れにある。その中で自社の中にある設備を使って、外部の作業者にそれを運用してもらうという派遣にも似たファシリティマネジメント(FM)が定着した。外部業者へ持ち出す外注とは違い、社内の日常業務と期を一にしてサービスが行われる形態で、その最たるものがコピーや社内印刷である。

もともと企業が印刷会社に出していたドキュメントは、DocuTechの登場のころから、企業内にそれらを導入して内製化するようになったのだが、結局その企業の業務のピークに合わせて設備導入すると、日常の稼働率は低くなるし、コストはそれほど下がらない。そこでFM業者が過剰なDocuTechなどの設備を引き取って、業務がオーバーフローする分はFM業者が自社工場に回して処理する方が得ということになった。

その最大手はXerox自身が行うゼロックスビジネスサービス(XBS)で、従業員12,000人いて5000社の顧客を持ち、印刷会社をサポートしている例もあるようだ。最初はコピーサービスから始まったが、データセンター、社内印刷、文書管理、さらに社内郵便、庶務その他もろもろに及んでいる。

IKONという印刷関連の大手FM業者は法律関係の事務所に強く、またDanka、Lasonなど何千人規模の会社がいくつも興っている。かつての事務用印刷業者の代わりになっただけではなく、今日多様化した事務所内のサポート業務を、インターネット/ITでさらに機能向上させて、ビジネスの拡大をねらっている。

要するに従来の印刷業からみると次第に需要が無くなっていった企業印刷物であったのだが、そこは電子印刷機ベンダーにとっては伸びる分野であり、FM業者にとっても伸びる分野であり、またIT/ECの開発やサービス提供の業者にとっても伸びる分野となっている。 IKONは印刷工場をアメリカに34ヵ所もつといい、前述のFM業者は印刷会社としてみても規模の大きい部類に成長した。つまり以上のことはそれまで企業印刷物を行っていた業界が時代に適応できなかった見本である。その理由を考えて見ることは、これから印刷業界がなにをすべきかを考えるベースとして非常に重要である。

印刷会社が全く変身できなかったわけではない。同じようなことをして成長した印刷会社にXYANがある。商業印刷のBantaもこういうことを扱う部門を作って、ECと組み合わせて積極的に企業サポートをしている。しかしこのような業務は印刷業者がカバーするものよりも、その周辺で活躍する業者が多くカバーするようになった。

印刷会社でクライアントのビジネスプロセスをリエンジニアリングするところは少なかったが、他業者は印刷業務よりもリエンジニアリングに比重を置いたアプローチであったというのが運命の分かれ道であったように思える。

(テキスト&グラフィックス研究会会報 通巻140号より)

2000/10/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会