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印刷はまだまだ進化する現代のメディアである

■ITは変革のエネルギー
世の中、IT技術によってさまざまなコミュニケーション手段が生まれている一方、印刷メディアへの風当たりは年々に厳しくなっている。情報伝達のための最適な手段を考える結果、メディア間に競合が起こるのは仕方がないことである。しかし、ITといえども魔法の杖でもなければ、手品でもない。情報技術以外の何者でもない。コンピュータの飛躍的な発展が情報革新を生み、それが契機となって新しいビジネスの可能性が広がった、ということで、決してITを駆使すればビジネスが成功するというものでもなければ、ITだからユーザーの満足度が高くなるというものでもない。ある住宅建材メーカーの担当者は、「メディアとして表現性、検索性、携帯性、コスト、再加工性などの個々の機能比較で、電子メディアが圧倒的に優位であるのは再加工性ぐらいである。総体的にはまだまだ印刷の優位は揺るがないが、いまの情報流通を革新に変えるには新しいシステムとメディアが必要だ」という。つまり現在のような閉塞状況の中で、出口を探るとすれば従来とはまったく異なった手法を選択をすることで、情報と物流の再構築をする以外に方法はないと考えている。

■電子メディア対印刷メディアの時代ではない
つまり電子メディア対印刷メディアあるいはWeb対チラシといった対立図式ではないのである。Web対チラシという捉え方は実は意味がない。メディアの選択は手段であって目的ではないからだ。これは当たり前の理屈であるが、発注窓口担当者や印刷の受注担当者にとっては予算のパイが増えない中で、Web予算とチラシ予算が綱引きをしているのが現実である。当然食われたメディアはその分だけ発注量が減らされるという厳しい結果が待っている。しかしここで重要なことは、減った増えではなく、印刷会社が担ってきた印刷メディアの役割と位置付けである。いったい得意先は印刷物に何を期待し、実現しようとしたのであろうか。これを理解しているか否かが分かれ目である。印刷予算が削られ「Webは時代の流れ、印刷は勝てない」と自らをWeb対チラシの構図の中に限定し、逃げ道を作ると、すべてのビジネスチャンスを失ってしまう恐れがある。

■メディアへのこだわりでななく、目的へのこだわりが必要
発注担当者が単に新もの好きだったり、ITと名が付けば補助金の対象になる、といったお役所仕事でない限り、なんらかの変更の理由があるはずだ。その理由こそが印刷物が担っていた、あるいは担おうとしたができなかったポジションなのである。そのポジションをWebに譲らざるを得なくなったわけだが、なにがそうさせたのかを突き詰める必要がある。そこを理解しなければ、例えWeb提案であっても採用されない可能性が高い。IT技術の大きなうねりと経済の低迷で、安易にコスト面から脱印刷へという動きが加速されていることは否めないが、手段と目的を履き違えて判断すると大きな失敗につながる。複数のメディアを利用可能な時代だからこそ、目的をハッキリさせることが大変重要である。

 例えば顧客の新規開拓に印刷物を利用するものもあれば、Webを利用するものもある。ある自動車会社では、Webで会員をつのりコストをかけずE-mailを利用して、長いお付き合いをしていくという。もしこれを新車購入までの4-6年間をDMで繋ぐとすれば、とんでもないコストがかかり不可能となる。一方でWebにはいつでもカタログ請求ができるようにしている。当然だれが請求したかは分かる。そのデータはすいぐにディーラ営業に渡るのかといえば否である。前述の住宅建材メーカーでも同様であるが、利用者の選択情報を絞り込み、囲い込みながらも決定権を奪わない配慮がなされている。最終的にメーカー指名、商品指名にまで持って行くまでの情報提供を行なうのがメーカーのサポート支援と考えている。先ほどの自動車メーカーでは、Webと同時にカタログ、チラシは、今後も重要なツールであると位置付けている。だからといって安心はできない。Web、カタログ、チラシはともに重要メディアであるが、明かにポジションが変ったという。つまり情報発信のためのコアがカタログからWebに移ったということだ。カタログで対照的なのが住宅建材メーカーで、2-3年後には確実に総合カタログは2分の1、あるいは3分の1に激減するだろうという。半分になってもなんら支障のないカタログの使われ方に印刷人としては寂しさを覚えるが、カタログ本来の役割ではなく切り貼り用での利用が大半を占めていたという。エンドユーザーへの提案は単品提示では意味がなく、組合せや使用イメージを提案する時のコピー用であるらしい。つまり得意先の本来のニーズとは違ったものを一緒にして印刷カタログに担わせていたのである。同社がカタログ制作のデジタル化を経て、今度はメディア変更のステップに入ったのも当然といえば当然の流れである。

印刷が減るのは時代の流れではなく、個々の企業・業種・商品ごとに減る理由を突き詰めることが大切で、そこに的確なソリューションが生まれるはずだ。

■好調なチラシ・DM、印刷をとことん研究しよう
Webが注目される一方で、ここ数年折り込みチラシ、DMが好調である。ある大手流通小売業でも95-99年の変化で、テレビ、新聞、屋外などの広告のウエイトが半減する中で、チラシのウエイトが2.2ポイントもアップしている。小売業のように地域との結び付きが強い情報発信の場合は、店舗の密度や交通網などが細かく影響し、地域によって有効なメディアが違ってくる。例えば東北、関東、中部、中国・四国などでは、TVCMよりチラシの費用対効果が非常によいが、九州などではチラシの優位性は低いという。

また、小売宣伝担当の永遠のテーマは、『本当に「チラシ」の効果はあるのか』である。同社はこの実験を行なった。大都市のターミナル駅に隣接した店舗でチラシを中止した。「大きなターミナル駅に隣接しているのでチラシの影響はないであろう」という仮説をたてた。仮説は見事に崩れた。客数・売上げとも下がりはじめ、6日目で売上げ対前年比88%ぐらいまで落ち込み、実験を中止した。対前年では店舗自体の問題による減少もあろうが、同一エリア内の他の店舗(チラシ有り店舗)では減少傾向がないという結果から明かにチラシの影響であると宣伝部では分析している。ただ、宣伝担当者は、チラシの効果は実証されたが、どれだけのチラシを計画するかは、より厳しい費用対効果を算出し、効果のないチラシは作らないという。この小売業は「好感を得るチラシの基準」を作り、ソフトな物、ハードな物、フーズとに分け、それぞれのデザイン・レイアウト、写真撮影、色づかいはどうあるべきかを細かく決めている。この小売業者にとってチラシはオールドメディアなどではなく、まさに現代のメディアなのである。

 印刷をインターフェースメディアにして、印刷+Web+携帯電話を組合せたビジネス提案をしている印刷会社もある。このように印刷は技術面、加工面そしてメディアとしても進化し続けているのである。印刷の持つ有効な機能をとことん突き詰めることなく印刷メディアへの思考停止をすることだけは避けたいものである。(杉)

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2001/04/14 00:00:00


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