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ネットワークを介したモニタキャリブレーション

Prefer Vision
モニタの明るさや色,ガンマ特性の情報を記述したモニタのキャリブレーション用ファイルをネットワーク上で共有して,モニタのネットワークプロファイルによってキャリブレーションする Prefer Visionが中央無線から出ている。プロファイルは色差で表示され,その色差でネットワーク上のPrefer Visionがすべて管理できるというしくみである。
ネットワークプロファイルを利用したキャリブレーションのイメージは,選択ボタンでネットワークプロファイルを読み込み,それを目標値にして,自分のモニタの調整ボタンを押して調整を開始する。調整した結果は同じようにデータとして出てくる。また,調整がどういう精度で行われたかは,そのデータのΔEつまり色差で確認できる。

つまり,ネットワークプロファイルを自分のモニタで作り,そのデータをネットワーク上で遠隔地のモニタに送り,遠隔地でネットワークプロファイルを読み込んでキャリブレーションすれば,ネットワークの送り手と受け手の間でΔEがどれくらいの精度で調整できているかという確認ができるのである。こういう確認ができれば,データを確認する場合にもほぼ同じ色見を遠隔地でも見ているという保証ができる。ネットワークプロファイルを使って遠隔地でのモニタのキャリブレーション精度が保証できれば,色校正等がモニタで代用できるのではないか。

モニタによるプルーフ
ネットワーク上での色がモニタ同士で保証できれば,実際にそれをプルーフに使っていくことができる。
モニタをプルーフで使うには室内照明に気をつけることがポイントになる。一般のオフィスでの蛍光灯は4180Kという少し赤っぽいものが使用されていることが多い。また,モニタは9300Kを使用し,さらに印刷のほうでは色評価に5000Kのライトブースを使うというような環境では正確なイメージはプルーフできない。理想的な環境としては,モニタの色温度を5000Kに設定し,すべての照明も5000Kに統一することだが,それが難しい場合には遮光フードを使ってモニタに外光が映り込まないような環境の管理もしなければいけない。

中央無線ではモニタ上で出来るだけ正確なイメージを見てもらうためにもライトブースの開発とこれの使用を提案している。特徴は,配光の具合を調整して,上下の明るさを均一にしたり,光の方向性をある一定方向に整列させるて均一性を増している。
こういう環境が整っても,再現領域の違う印刷物のCMYKのイメージをどのようにしてRGBとしてモニタで見るのかという問題がある。そこで中央無線の提案は,ICCプロファイルを使ってのカラーマネジメントシステムを使うことである。具体的には,ターゲットになる印刷機のプロファイルを使用し,モニタのプロファイルとCMYK-RGBの変換をしてからモニタプルーフをする仕組みである。

プロファイルの編集
また,ICCのプロファイルを使ったのに全くモニタ上でのイメージが違うという話がよく出てくる。モニタがキャリブレーションできたら,その先は,プレシジョンイメージビューワというソフトを勧めている。特徴は,画像データをどういうプロファイルで見るとどうなるかという環境を保存できることである。
単純にプロファイル2つを使ってのファイル変換も可能である。モニタプルーフに使う表示だけにしたり,プロファイルの編集も可能である。例えば、最終印刷物のイメージをモニタプルーフするためには、入力特性に印刷機のプロファイルを、出力特性にはモニタのプロファイルを使用して、印刷物のCMYKイメージをモニタ表示用のRGBイメージに変換しモニタ上に表示する。これで満足できる表示が得られない場合には、入力側に設定した印刷機のプロファイルを編集し、より近いイメージを表示できるモニタプルーフ用のプロファイルとしてカスタマイズする。

プロファイルの編集機能には基本的にスタンダードとエキスパートのモードがある。 スタンダードモードは,実際のイメージを見て該当する絵を探していく方法をとる。CMYK各版のプロファイルをそれぞれ若干変更してイメージを見てもらい,一番近いイメージを探してプロファイルを作り直そうというものである。
エキスパートモードではPhotoshopのトーンカーブをいじるような感覚でCMYK,あるいはCMYそれぞれをいじる。プロファイルの実際のトーンカーブの部分が表示されるので,そのカーブをいじって編集する。カーブの変化と実際の絵変化がわかるので,カーブの一部分だけ少し寝かせるといった細かいプロファイルの編集・調整がモニタを確認しながら出来る。

環境設定
ビューワ用の環境設定ファイルの中には,確認する画像とその画像を見るための環境条件が記述してある。これは,サーバに画像データあるいはプロファイルを置いて一元管理する時などに使うためである。
さらにある画像を確認する場合,画像確認するときに使ったプロファイルを保存したビューワ環境設定ファイルをつけてもらえれば,それをもとにサーバから画像とプロファイルを拾ってきて表示できる仕組みもある。つまりある画像データをどのプロファイルでどういうふうにして見たという情報を,1つのファイルにして送ることができるソフトウエアである。

環境設定ファイルを作ってしまえば,ダブルクリックすることによってプロファイル設定の画面が呼び出され,CMYKの希求をモニタプロファイルはモニタで,ソースプロファイルは印刷機という形で見るという設定ができる。どのような条件で見たかを送ってもらい,遠隔地でファイルをダブルクリックすることによって,同じ状況がすぐに再現できる。また,表示ボタンを押せばプロファイルを適用して変換したイメージを見ることができる。
この条件下で,遠隔地同士でいろいろな話をすれば,モニタはネットワークプロファイルを使ってΔEが1でキャリブレーションできているというような確認が取れるし,プロファイルと画像は設定ファイルに入ったままなので,すべて同じ状況で色が見えているという確認のもとで議論をすることができる。

さらにソースのプロファイルを少し変えてモニタ上で印刷物のイメージをもっと正確に見たいという場合でも,ソースを選んで保存ボタンを押し,エディタを使ってプロファイルをカスタマイズするということが出来るのである。

キャリブレーションモニタを使って,遠隔地同士でも,同じキャリブレーションモニタで,色差は幾つで管理し,その中でカスタマイズしたモニタプルーフ用のプロファイルを作ってモニタプルーフをしてもらいたいという提案を行っている。
(2000年8月23日T&G研究会拡大ミーティング「モニタキャリブレーションとソフトプルーフ」 中央無線(株)上椙 伸哉氏の話より一部抜粋)

2000/11/17 00:00:00


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