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製本の知識が必要なDTP - 知って得する製本の知識(1)

最近DTPの普及とともに,組版レイアウトや画像処理を含めて,限りなく 質の低下を招いているという有識者の声がある。なかでも製本関係者から,DTP印刷物のトラブルが多いと 聞いているが,印刷を含めた成果物が不完全ではロスが多く,製本工程の生産性を低下さ せることになる。つまりDTPユーザーの知識不足から,製本工程は被害を蒙っていること になる。

コンピュータtoプレートによりプリプレス工程はフルデジタル化になるが,印刷とはオ フラインである。しかしコンピュータtoプレスは,デジタルデータを直接紙に印刷する方 式で,印刷工程までフルデジタル化される。

いずれの方式でも,印刷後は後加工が必要になる。これらの方式では中間工程で の手直しは不可能であるから,プリプレス工程から完全データで,しかも製本仕様を満た している必要がある。しかし現実には仕上げ断裁をしたら小口側に白が残ること,また綴 じ方が異なるにもかかわらず同じ版面レイアウトになっている,などの問題がある。

ところがアナログ時代には製本関係のトラブルは少なかった。つまり組版・製版・印刷 関係者が,製本知識を心得ていて,フィニッシュワークの版下作成段階で,製版・製本仕 様にもとづいて版下作成を行っていたからだ。これはDTPに相当する作業である。

印刷会社でも,クライアントからのデジタル入稿のトラブルが多く,完全原稿を要求し ているのが現実である。これと同じことが印刷と製本の間でもいえることである。したが ってDTPを使って印刷物作成を行っている印刷企業やデザイナーは,製本の知識は心得る べきものであるが,若いDTPオペレータにすべての知識を求めることは酷なことかもしれ ない。そこで組版・製版・製本などの知識をもつ,プリンティング・ディレクターの必要性 が強調されているわけである。

●製本工程の流れ

そこで製本工程の流れを簡単に述べる。製本工程はプリプレス工程に似て,いろいろな 作業が輻輳し複雑である。そしてそれぞれが独立した工程で,寸断されているのが特徴で ある。しかも工程間に運搬作業が伴っている。したがって現状の一般的な製本工程は,CTP システムのようなデジタルデータを一貫処理するシステムは実現していない。

枚葉(シート)印刷の製本工程は,刷本(すりほん)の折に不要な部分や折丁単位の断 裁作業から始まる。これを「断ち割り」という。次が「折加工」で,一折づつ折り機で刷 本が折られる(図参照)。これを「折丁」というが,1冊全部の折丁(おりちょう)が揃うと「丁合工程」に進む。輪転印刷(巻取印刷)の場合は,輪転機で折加工を行うので直接丁合工程 に入る。「丁合い」とは,1冊分の折丁をページ順に揃えることをいう(つづく)。


他連載記事参照

2000/11/18 00:00:00


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