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ネットワークによるRealTimeProof

プリプレスの効率は以前に比べて非常に高くなったが,校正のサイクルに関してはまだまだである。これらを解決するための提案として(株)ディアイティの藤野孝広氏の話より,オンライン・リモート校正システム「RealTimeProof」を紹介する。

生データでの校正の問題
従来の校正サイクルは,非常に非効率的な作業が行われていた。校正を行う人が複数いるケースが多く,このサイクルはさらに複雑になり,劣悪なワークフローになっている。
このようなアナログ的な校正を何とかデジタル化,いわゆるソフトプルーフにするために,PDFを使った校正ツールや,データそのものでチェックしてもらうという形が出てきている。しかしこの場合,輸送にかかるコストは削減できるが,PDFで行う場合はPDFにコンバートする必要があるし,生データを送るとなると,印刷に使うようなデータなので非常に大きな容量になる。しかし,日本は環境が貧困なので,生データを送るのは非常に時間がかかる。これを解決するものとしては,大容量のファイルを高速に送るためのインフラとサービスが一体となったデータデリバリサービスがあるが,それらのサービスは基本的にサービスに加入しているユーザ間でしか利用できない。

インターネットによる校正
RealTimeProofは基本的にインターネットに接続できる環境があれば,校正する側は何も必要ない。大容量のファイルを高速に表示するために,Pixels-on-Demandというコア技術を使用している。またRealTimeProofを使った校正の場合は,プリプレスでよく使うようなデータフォーマットにはあらかじめ対応しているので,データはコンバートせずにそのまま公開校正をかけることが可能である。
紙またはPDFを使った校正では,複数の人間が校正する場合には非常に手間がかかっていたが,RealTimeProofは1つのファイルに対して複数の人間が同時にアクセスして校正のコメントを書き入れることができるので,何人かが見る場合のマージする作業が不要になる。
画像を公開するためのサーバを中心として,校正を行う関係者がWebブラウザで校正画像を見るという形になる。インターネットに接続できる環境さえあれば,非常に高速に画像を見ることができる。ただし,画像を公開する側はWebサーバとして公開するので,専用線で接続されている必要がある。

必要な画像だけを送信・表示
RealTimeProofのコア技術のPixels-on-Demandは簡単にいうとストリーミングの技術である。ユーザが必要な情報だけをデータとして送るのである。例えば,100MBの画像をFTPで送る場合は,データを全部送らなければ相手は見ることができないが,Pixels-on-Demandの技術を使うと最初に開くときに全体の縮小されたプレビュー画像が開かれ,そのプレビューに必要な情報だけを送ってくるのである。拡大した場合でも,画面に表示されている部分のデータだけを送ってくるので,非常に速く表示できる。
また,情報を圧縮するのではなく必要な画像だけを送るので,正確なプレビューが可能になる。さらにWebブラウザを使っていながら,画像を自由自在に拡大することが可能である。通常,小さいプレビュー画像があり,それをクリックすると大きな画像が表示されるが,そういう方法ではなくオリジナル画像の最大2倍までの倍率で自由に拡大縮小が可能である。よく比較される技術として,LivePictureのFlashPixという技術があるが,これと違うのは,専用のフォーマットにデータをコンバートする必要がないので,データをコンバートする時間が必要なく,データの容量がオリジナルと変わらないことである。ズームについても,任意の倍率で自由自在に拡大縮小できる。

RealTimeProofのツール
● スポイトツール

スポイトツールとは,クリックしたポイントのCMYK,画像によってはRGBのオリジナルの画像の色情報を取得してくる仕組みである。スポットカラーにも対応しているが,現状のバージョンでは一部制限があり一部のRIPでしかスポットカラーに対応していないが,次期バージョンからはすべてのRIPでスポットカラーに対応する予定である。
モニタのキャリブレーションが取れていることが理想であるが,環境によってはそういう環境でないところもある。その場合にはカラーチャートを見ながら実際の画面を見ても,ある程度色の整合性は取れるのではないか。
● スティッキーノート
今までのスティッキーノート(付せん)は単純に見るだけの機能だったが,画像に対してコメントを付加できるようになっている。通常の校正紙に赤入れしているように,ここを直してほしいとか,色を変えてほしいといったコメントを入れていくことができる。ユーザごとにスティッキーノートの色が違うので,誰がコメントしたかが一目瞭然である。自分のコメントは変更したり削除できるが,人が書いたものに手を入れることはできないので,よくある責任問題もスティッキーノートを見れば,きちんと履歴が残っているので明確になるだろう。
● 電子メール通知
電子メールの通知機能は,誰かがコメントした際に講読の設定をすると,コメントを電子メールとして希望のアドレスに送信することができる機能である。フォルダ単位で管理できるので,例えば仕事ごとに自分が関係しているフォルダを登録しておけば,そのフォルダ以下の画像に何かコメントが追加された場合に自動で電子メールで知らせてくるという機能である。
● 印刷
校正出力の時にオリジナルの画像を72dpiに間引いて印刷する機能もある。また,スティッキーノートの内容を一覧画面として印刷することもできる。
また,PrintProofというオプションがあり,最高600dpiの解像度で画像を出力することも可能である。TIFFないしEPSのファイルとして校正用のデータをダウンロードして,ダウンロード終了次第すぐに手持ちのプリンタにプリントアウトが開始される。70MBくらいのデータをPrintProofの機能を使ってダウンロードすると,ダイヤルアップ56kbpsの回線で13分くらいという結果が出ている。

いつでもどこでも校正が可能
RealTimeProofを使った校正サイクルのメリットは,時間と経費の節約が可能なことである。従来のファイルデリバリサービスだと,当然ファイルを送るための時間というものがあるが,その点はRealTimeProofはサーバを自社内に置くので,そこに校正したい画像をコピーするだなので,非常に短時間で画像を公開することが可能である。バイク便や宅配便といった,従来データや打ち出したものを送っていた場合に比べても,それらの費用がかからないということもある。さらにインターネットにつながる環境さえあれば,どこでも校正画像を見ることができるので,校正の場所と時間を選ばない。出張先でもインターネットにさえ接続できれば校正を行うことができるし,インターネットなので24時間いつでも自分の都合のいい時間にアクセスして校正することができる。

2000年8月23日T&G研究会拡大ミーティング「モニタキャリブレーションとソフトプルーフ」より(文責編集)

2000/12/26 00:00:00


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