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曲がり角の出版流通

文化通信社 星野 渉


不況知らずといわれていた出版業界も,1997年に戦後初めての売上前年割れを経験して以来,4年続けてマイナス成長が続いている。かつて「三位一体」と表現された出版社,取次,書店の安定的な関係は過去のものとなった。さらに,不況に加えてこのパラダイム変化を促進しているのが,インターネットを始めとしたデジタル技術による変革である。出版業界の90年代は,従来の販売手法が通用しなくなった「敗北の時代」であったと同時に,デジタル技術の登場によって,市場への新たなチャレンジが始まった10年間であったといえる。

コミック,雑誌の低迷――従来型出版の終焉

書籍,雑誌の販売金額は,97年に前年を0.7%下回って以来,減少を続けている。2000年も11月までで2.9%減となり,3%前後のマイナス成長が予想される。また,返品率も高水準にある。出荷に対する書籍の返品率は,金額ベースで99年は39.9%と,4割近い。20%代半ばだった雑誌返品率も30%代である。

深刻なのは,出版業界の成長を支えてきた雑誌とコミックの低迷である。大手出版社の収益源は雑誌,コミックであり,この構造は取次会社,書店でも変わらない。コミック,雑誌が日本の出版産業を経済的に支えてきたといっても過言ではない。
若年用娯楽の主役の座にあったコミックは,95年に初めてマイナスを記録した。この年,650万部を誇った「週刊少年ジャンプ」(集英社)の発行部数が,人気漫画「ドラゴンボール」の終了とともに急落した。しかし,「ジャンプ」が失った300万部余りを他誌が吸収したわけではない。現在,発行部数No.1の「マガジン」にしても,部数はほぼ横這い。コミックメディアが,もはや急成長分野ではなくなったことは明らかである。

一方,雑誌は不況の影響を直接,受けている。好況時のような複数買いが減り,特集ごとの売れ行き差が大きくなっていて,明らかに消費者の買い控えが現れている。「雑誌大手の主婦の友社が角川書店グループに入り,婦人画報社がフランスの大手出版グループ・アシェットの傘下に入る」といったニュースが流れるほど,雑誌の販売環境は悪化した。

中古書店――大量出版の負の側面

コミック不振に象徴される出版不況は,70年代後半から,「マスプロ・マスセールス」で拡大し続けた出版市場が臨界点に達したことを表している。そして,肥大化した出版の「負の側面」を見事に表しているのが,中古書店という業態だろう。

代表格のブック・オフが1号店を出店したのは,91年。その後,拡大を続け,2000年5月には直営店・フランチャイズ店を合わせて,500店舗を突破した。これまでの古書店のように,内容や希少性に価値を求めるのではなく,「きれいで,新しい」といった基準で購入・販売するシステムは,出版物を「商品」として扱っていることを意味する。出版界は,出版物を大量生産・大量販売する「商品」にしてきた。その当然の帰結であったといえよう。

当然ながら,出版業界は中古市場の拡大に危機感を抱いた。中古市場で商品が回転しても,出版社や著者の再生産につながらないし,中古市場が拡大すれば,新刊書が売れなくなったり,消費者の値ごろ感が下がる恐れがある。コミック,文庫のシェアが高い中小書店にとっては,直接の競合になる。

 2000年春,さらにショッキングなニュースが入ってきた。九州最大手チェーンの明林堂書店が,中古チェーンのテイツーと業務提携し,新刊書店と中古書店を併設した出店をするというのである。その後,メディア複合店を展開するカルチュアコンビニエンスクラブはブック・オフとの提携を発表。広島の最大手フタバ図書は,自ら中古書,マンガ喫茶まで取り込んだ巨大複合店「GIGA」を広島駅前にオープンした。中古書販売の新刊書店への拡大は,出版社が最も恐れた事態だった。

コミック大手出版社は,中古書店の拡大を直接阻止することはできないため,コミック作家が著作権の侵害を訴える形をとって,キャンペーンを開始している。さらに,中古併売書店に対しては,配本ランクを下げるといった販売政策面での対応をするほか,中古書を新刊と一緒に返品する「不正返品」を取り上げ,取次各社に厳しい監視体制と厳正な対応を求めている。しかし,中古マーケットはインターネット販売やネットオークションにまで拡大しており,今のところ拡大を阻止する手立てはない。


月刊プリンターズサークル2001年3月号特集
「電子出版は新たな市場を生み出すか」より抜粋

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2001/02/23 00:00:00


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