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日本向け印刷ECの創設

印刷業界にとってのECとは何か。10年後には,印刷関連業務はすべてECに移行するともいわれている。今はまだ過渡期であるが,印刷業界にとって早急に取り組まなくてはいけない課題である。 今回は,Webを活用した印刷物受発注システムを提供する(株)イードックの代表取締役吉田充氏に同社の姿勢を伺った。

2つの使命で中小印刷会社をサポート

ネットベンチャーのイードック(東京・港区)は,コンサルティングからシステムの構築,運用,印刷の作成業務までをサポートする会社として,1999年4月に設立された。代表の吉田氏は印刷会社やシンクタンクに勤務していた経験がある。1993年に印刷関連業務の経営コンサルティング会社エイピーエムコンサルティングを設立し,2000年秋には両社を合併させ,イードックとして存続している。

中小の印刷会社では,自社内でシステムを抱え込むことは難しい。同社はASPの事業形態をとって,インフラの部分を印刷会社に提供している。同社の使命は2つある。ひとつは,印刷物をより早く,より安く作成するシステムを提供すること。もうひとつは,印刷物発注業務そのものを抜本的に効率化して日本の市場に浸透させていくことである。
現在同社は印刷会社,コンサルティング会社,ASP事業会社の3つの側面をもっている。具体的なサービス内容は以下のとおりである。

版下制作システムi-Pri.net

インターネットを使って印刷物の版下制作を行うシステムである。入稿から校正のやりとりをネット上ですべて完結させることができる。

i-Pri.netは自動レイアウトのプログラムとデータベースとWebサーバを組み合わせたシステムである。まず印刷物発注側と綿密な打ち合わせをして,企業ごとにカスタマイズされたレイアウトパターンを作成する。発注者がインターネット上で原稿を入力し送信するだけで,自動組版プログラムが作動し,印刷データが作成される。その時間わずか10分足らずである。オペレータも組版ソフトを必要もない。

版下データは,PDFファイルに変換出力され,発注者はインターネット経由で確認する。修正箇所がある場合,入力画面を開いて原稿データの変更を行い,再度送信する仕組みになっている。PDFは確認用で,自動レイアウトはサーバ側の作業になる。
即時性の高いものならば,ぎりぎりまでの修正も可能である。パソコン上の直しなので何度でも簡単に変更ができる。修正・出力の手間が省ける分,出力代もかからず,修正料金もシステム契約料金に含まれているので新たに発生することはない。

校了データが送信されるとイードックと提携している印刷会社へデータが送信され,印刷される。
営業マンの人的コストの削減だけでなく,人為的ミスも激減できる。煩雑なやりとりが解消されることも効率アップにつながる。納期が大幅に短縮され制作コストも半減する。
このシステムでは基本的に営業マンが顧客のもとに行かない。「校正の出戻しはルーチンであり,本来の営業とはいえない。新規開拓,企画提案こそが本来の営業だと思う」。営業マンが不足している企業やネットを使って顧客の囲い込みを図りたい企業にとっては,有効なシステムであろう。

また過去の原稿を一部修正して原稿を作成する場合,同社のコンテンツデータベースに過去のコンテンツが保管されているため,ホームページの自動更新や他の印刷物への再利用も容易にできる。データ入稿したものを自動組版するだけではなく,データベース経由なので,業務システムに近い形になっている。
大手の新聞社,銀行,生保に実績がある。また印刷会社が導入する際には,自社システムとして顧客に提案できる。イードックとの契約なので,顧客への料金負担を無料にすることも可能である。カスタマーサポートはイードックが行う。

eマーケットプレイスp-exchange

インターネットによる印刷物受発注市場である。各産業分野において商社を中心にネット上の受発注システムが創設されているが,欧米のシステムをそのままもってきても,必ずしもうまくいくとは限らない。同社では,日本の印刷業界の風土に合ったeマーケットプレイスを創設したいと考えている。単なる取り引きのインフラだけでなく,印刷物の効率的な発注と生産のコンサルティングとサポートの付加価値を加えた。

印刷会社は入札方式で価格提示するが,その際同社が独自に調査した標準的な相場を提示する点が,通常の受発注市場と異なるところである。同社が蓄積したコンサルティングノウハウを活用し,価格データの分析を行い,コスト・シミュレーションのプログラムを使い市場価格を算出,参考価格として提示している。印刷会社が提示した価格が,いずれも相場より高ければ再入札もある。「企業は必ずしも入札で一番安いところを選ぶわけではない,会社に対する信頼感などトータルバランスで判断する」。

入札は公開入札であり,指名もできるし,カテゴリー別指名もできる。会員制にしており,会社の製品品質・業績等の審査がある。今のところ,発注者側は金融機関などをメインに年間発注額が10億円以上の大手企業約30社,同数億円単位の中堅企業120社程度を想定しており,印刷会社は150社くらいの参加を見込んでいる。同社は成約額の2〜3%を手数料として受け取る。

見積もりの手間もすべてネット上で行える,ロットの大小に関わらず受発注が簡単に行える,など発注者支援型のサイトともいえる。印刷会社にとってのメリットは,大手クライアントとの取り引きが可能になることである。今まで紹介者がいなくては,受け付けてもらえなかった新規顧客に対してもWeb利用によりアプローチの可能性が広がる。また信販会社の決済機能が付いているので,代金回収の問題がない。

生産設備はあるが営業力の弱い下請け専業企業や,東京での新規開拓をねらっている地方の会社が意欲的であるという。

デジタルデータ一元管理システム

新たなサービスとしては,印刷物のデジタルデータを一元管理するシステムがある。印刷物のファイリングをPDFで登録し,Web上で確認できるようにする。必要に応じてデータを取り出すこともある。企業にとってはリスク管理にあたるだろう。
こちらも試験的に運用していく予定である。実例を挙げると,ある生保会社で,メインで仕事を発注していた印刷会社が倒産し,製版フィルムがすべて紛失してしまったことがある。会社案内等の重要なものも含まれており,多大なコストをかけて初めから作り直した。バックアップの必要性を感じたそうだが,社内で管理するのは無理だろう。それを同社でデジタルデータとして管理する。
また印刷物の物流倉庫の発想もある。印刷物の在庫管理から配送も含めて,ネット上でできる仕組みを考えていきたい,という。

これからはますますサービスの充実を図るとともに2つの方向に進んでいきたいという。印刷会社とパートナーシップを組んで,印刷会社の事業拡大のサポートをする方向と,金融関係の取り引きを利用して,今までできなかったバリアブル印刷やワンtoワンなどのマーケティングツールへの展開を提案していきたい,と抱負を語った。(上野寿)


JAGAT info』2001年2月号より

2001/02/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会