印刷用原稿のデータ入稿については、「データフォーマットは先回りして手を打て」でとりあげたが、今日のデータコンバートの問題はそれだけではかたずかない。つまり印刷用データと他のデータを組み合わせて、新たなコンテンツを作るという仕事が多くなるからである。それは、オフィスで使われるWindows環境や、動画、サウンドなどのマルチメディアデータのことで、すでに我々の身近にあり、その基本知識も知っておきたい。
また,この逆にWindows側でPowerPointなどで作成したスライド・グラフィックスを含むドキュメントをMacのIllustratorに持っていくような場合でも同様にJPEG形式などの画像フォーマットにして渡すことで利用できる。これらでは,ドキュメントファイルに使われているフォントや文字は修正ができないので,オリジナルから修正をおこなうこととなる。
Phtoshopで制作した画像については,Phtoshop形式ファイルになっていると独自フォーマットのため他のソフトで開くと正しく再現できないことが多い。この場合にはその他の画像フォーマット(これもできるだけ共通したフォーマットを選ぶ)で渡すようにする。ただし,レイヤーを使っている場合では,すべて統合されてしまうので修正などを後からおこなうのであれば,オリジナルデータはそのまま保存しておくように注意する。
(1)ムービーファイル
ムービーファイルについては,最も汎用的に使えるフォーマットではApple社が開発しているQuickTimeがある。このファイルフォーマットはWindows用にもQuickTime Movie Playerといった再生用アプリケーションも無償配付されたり,インターネットの動画フォーマットとしても広く使われるなど,異なるプラットフォームでも広く普及しているので安心である。
また,QuickTimeはソフトレベルで動画圧縮技術の標準規格である,MPEG1とMPEG2および,次世代技術であるMPEG4にも対応しているフォーマットである。オーサリング機能を持つQuickTime4以上でフルスペックバージョンであれば,こうしたクロスプラットフォームで再生可能なファイルの作成も可能であるが,Windows用には拡張子「.mov」をつける必要がある。QuickTime4.xのフルスペックバージョンでは,正規登録しているMac OSユーザーなら無償でオーサリング機能を追加できるキーコードを受けることができる。Mac OSユーザーでない場合には単体でも出荷されているので購入することも可能である。
(2)サウンドファイル
サウンドファイルでは,データ交換や配布を目的にしたOSやソフト環境などにあまり影響を受けない非依存型とOSで標準として扱われるフォーマットの2種類がある。
非依存型のフォーマットには,MP3(MPEG Audio layer-3:音声データのデジタル圧縮技術)形式やヤマハ(株)の開発するSound VQなどがある。こうしたデータではクロスプラットフォームで利用可能であるが,データ配信など配布目的も強いことから圧縮が施されているものが多い。当然であるがこうしたフォーマットでは,データのオーサリングには使用できない。
OSで標準として扱われるフォーマットでは,MacではAIFFといわれるフォーマットを,WindowsではWAVEといわれるフォーマットをそれぞれ採用しており,サウンドデータのオーサリングについてもこうした標準フォーマットが使われている。これらのフォーマットをコンバートするユーティリティを使えば,データ交換を簡単におこなうことができる。
多田耕司著「DTP/印刷データ管理のAtoZ」(JAGAT発行)より
2001/05/08 00:00:00