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新旧技術は正面衝突を避ける

2003という年号は,あたかも日本のブロードバンドのマジックナンバーのようで,あらゆるメディアが時代に遅れてはならず,とブロードバンドに押しかけようとしている。
しかし,あらゆる情報をインターネットに合流させようというだけでは,あまりにも能がない。既存のメディアにとっては,インターネットと自分を関連付けておきたいという気持ちが働くのだろうが,その程度のコンセプトでインターネットにコンテンツを流しても,はたして魅力のあるものになるだろうか。

確かに長期的にみると,メディアのコンバージェンス(融合)はなされ,その中心的なところにインターネットがくるであろう。携帯電話もデジタルになり,iモードで電話とmailやwebが合体して使われるようになった。TVと通信の間も長きにわたっていろんな融合が模索されてきた。TV画面でインターネットもみることができるWebTVというのもあった。さらに今後は放送のデジタル化により、TVとインターネットの垣根はうんと低くなる。

しかし,単純に今我々の目の前にある情報機器を足しで2で割る式のことをしてもうまくいかないことは明らかである。以前からTVでキャプテン端末になるとか,文字多重放送,パソコンとTVの一体型など,繰り返し異メディア合体情報機器が開発されたが成功したものはない。際立った新たなコンセプトもなくメディアのコンバージェンスをしても,わけのわからない化け物のようなメディアを生む可能性が高い。またマーケットも中途半端なものになってしまう。

これから10年くらいは,ブロードバンドによる新たなメディアビジネスの花が咲くのではなく,おびただしい失敗が始まるように思える。過去のメディアの変遷から考えて,ブロードバンドの企画をする時には旧来のメディアで行っていたことをそのままもっていくよりは,ブロードバンドの環境に合わせて最初から考え直したものの方が生き残る可能性は高い。

それは,コミック誌もゲーム機も携帯電話普及のワリをくったように,情報を受け取る側の環境や意識が変化してしまうからである。新技術は旧利用者に奉仕するのではなく,新技術にあった新たな利用者を登場させ,古い土俵とは違う方向に伸びていくもののようだ。

通信&メディア研究会 VEHCLE143号より

2001/06/14 00:00:00


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