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豊かなメッセージの描出−20世紀ポスターデザイン展

伊勢丹美術館(東京・新宿)で開催された「20世紀ポスターデザイン展」では,竹尾ポスターコレクション3200点のなかから,多摩美術大学の田保橋淳教授をはじめとする同大学の企画委員会メンバーが厳選した,119点の作品が展示された。展示ポスターは企画委員会によりアピール,コーポレイト・イメージ,ファッション,コマーシャル,トラベル,ビッグイベント,エンターテイメント,アート・デザインの8つのカテゴリーに分けられ,それぞれの作品の果たした役割,メッセージとともに,20世紀の歴史そのものに触れる内容となった。
アンディ・ウォーホール,キース・ヘリングなど海外の作家による作品に加え,戸田正寿,横尾忠則など国内作家の作品も数多く展示された。

このうち,コーポレイト・イメージのコーナーは,「わが社は何ゆえ存在するのか?」と題された。
IBM社のCIを表現した作品である,漆黒の背景に眼(アイ),蜂(ビー),M(エム)を配した絵解きポスター(ポール・ランド/1981制作)は,同社の重役を激怒させ,数年間お蔵入りしたというエピソードを持つ。この作品は「多くのコンサルタント,インハウスデザイナーに対しては,多様な個性を発露できるチャンスとしての『CI』を拓き,その勇気を与える金言となった。」という。
その他の作品には,オリベッティ(ジョバンニ・ピントーリ/1953制作),華:モリサワ(勝井三雄/1993制作)などがある。

コマーシャルのコーナーには,近代絵画の手法をポスターデザインに取り入れたA.M.カッサンドルのワイン「デュポネ」の広告ポスター(1932制作)や,ダンロップのタイヤ(レイモン・サヴィニャック/1953制作),資生堂キャンペーンポスター 人・人・人(松永真/1971制作),フランスのたばこ「ジタン」(早川良雄/1991制作)などがある。
「そもそも産業革命による社会構造の急激な変化,モダニズムに刺激されて台頭した新しい造形理念と相まって,良しにつけ悪しきにつけ,大衆の消費行動を根底から揺るがし,その生活革命を導いたポスター芸術は,資本主義経済のみならず,社会主義国家においても『不特定多数の人々の視線を,瞬時に釘づけにする』使命を担ってきた。」と評している。

「見ること,知ることの演出装置」と題されたエンターテイメントについては,「催事と娯楽をテーマとするポスターは,人間に潜む局部的な関心を引くように,情報の告知を『見る愉しみ』という視覚効果のオブラートで二重三重に包んでいる。」という。
オルロージュ劇場「ジラール座公演(ジュール・シェレ/1879制作),オペラ「ヴォツェック」公演(ヤン・レニッツァ,1964制作),第5回ニューヨーク映画祭(アンディ・ウォーホール/1967制作)などの秀作が展示された。

伊勢丹美術館
http://www.isetan.co.jp/icm2/jsp/service/art/index.jsp

2001/06/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会