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欧文活字組版の機械化−印刷100年の変革

欧文活字組版の歴史は長く、グーデンベルグ以来手作業の時代が続いた。和文組版は全 角(正方形)を基準として文字デザインも、組版ルールも作られているが、欧文文字は文 字ごとに異なる字幅をもっているため、その字幅ごとのプロポーショナルに組版されなけ ればならない。そのために1行の長さに対して端数が生じて行頭・行末が揃わないことに なる。

和文組版と大きく異なる組版ルールは、行中にスペースをとることである。つまり語間 スペース(分かち組み)、字間スペースなどである。行頭・行末を揃える組み方を「ジャスティフィケーション」というが、これに伴う処理として「ハイフネーション」処理がある。長い単語が行末に入りきらないときは、単語を適切な箇所で区切って次行に送り出すことである。

このような処理のために行中のスペーシング処理が必要になるが、これらの要因が欧文 活字組版の機械化や写真植字機の開発を困難にしていた。写真植字機の開発は1910年頃から考案されていたが、実用化は日本に遅れること20年の1950年以降である。

1900年頃アメリカのOttmar Mergenthaler(オットー・マーゲンターラー)により研究開発された、欧文ライノタイプ(スラッグ連続活字自動鋳植機)がある。当初1930年(明治36年)に内閣印刷局が輸入したが、民間の印刷企業が設備したのは1928年に三秀社が最初である。また同種の機械では、1913年にインターナショナル・タイプセッティングマシン社が開発した「インタータイプ」が有名である。

機構は、キーボードを押すと所定の母型がマガジン(母型収納庫)から落ちてきて、順 次アセンブラに並ぶ。このとき語間のスペースを調整するスペースバンドが母型の語間に 挿入され、所定の1行分の長さに調整される。そして活字合金が注入され1行分のスラッ グを鋳造する仕組みである。

鋳造が終了した母型とスペースバンドは分けられ、母型はエレベータでマガジンに運ば れ所定の位置に戻るという素晴らしいメカニズムの機械である。非常に組版効率が良いた め欧米では広く採用され、また日本でも新聞社や印刷企業の欧文組版に用いられた。

しかし難点もあった。加筆・訂正への対応である。スラッグ鋳造のため、直しの対応が 難しいことである。しかし日本の手書き原稿と違って、欧米ではタイプライタ原稿が常識 であるから、この機械組みの効果は大きかった。

一方1887年に、アメリカでTolbert・Lanston(トルバート・ランストン)が、「ランストン・モノタイプ(欧文単字自動鋳植機)」を発明し1892年に完成した。この方式は紙テープ式で、キーボードから入力すると文字コードが紙テープに鑽孔される。

この紙テープをテープ読取機にかけると母型を選別して、母型庫から取り出し鋳型にセ ットして鋳造する。前述の和文テープ式自動モノタイプは、この方式を模倣したものであ る。

欧文の文字数は、和文の文字数に比して少ないという有利さはあるが、書体数が多いた め多様な書体の母型庫が用意されていた。このモノタイプの利点は、スラッグ鋳造のライ ノタイプ方式に比して、1本1本(モノ)であるから直しに柔軟に対応できることである (つづく)。

他連載記事参照

2001/06/16 00:00:00


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