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印刷物受発注をトータルマネジメント

株式会社アイフィスジャパン

金融関連ドキュメントの印刷・配送

アイフィスジャパン(東京都千代田区・大沢和春社長)は,金融業界向けのドキュメント・マネジメントサービスを提供する企業として1995年に設立された。証券会社が発行する調査レポートや主要銀行の各種分析報告書などは,機関投資家へ日々発信される。そこで各証券会社が発行する膨大な量の調査レポートを同社で一括管理して,同社経由で各機関投資家に配信するサービスを始めた。

当初は,ファイナンシャル専用のデリバリシステムでいかにコストを下げるかに主眼がおかれていたそうだが,次第に配信業務だけでなく,レポートそのもののレイアウト編集・印刷・製本の作成業務から配信までをトータルにサポートするサービスに切り替えていった。 情報の性格からスピードが要求される。今日入稿したものは翌日には印刷し,配送しなければならない。通常の印刷では間に合わないため,オンデマンドのノウハウを蓄積していったという。 現在大手の証券会社や機関投資家と多数契約しており,同社の存在は,金融業界ではなくてはならないものとなっている。

金融関連ドキュメントの印刷・配送サービスに次いで同社が手がけたものは,Webによるサービスである。「Research Manager(リサーチマネージャー)」は,主要証券会社が発行する企業調査や経済レポートをインターネット上で検索・閲覧・一元管理できるサービスである。利用者は機関投資家に限られているビジネスモデルである。 毎日届くレポートのすべてに目を通すことは物理的に不可能に近い。その結果,紙の洪水に埋もれて大事な情報を見逃したり,保管に困る,検索ができない,欲しい情報が必要な時に手に入らない,などの不都合が生じる。そこで受け手側の立場に立ったオンタイムレポートのインターネット経由による電子配信サービスの提供を始めた。

ASPによる印刷受発注サービス「EPREX」

同社の新たなビジネスとして注目されているのが,ASPによる印刷受発注サービス「EPREX(イープレックス)」である(http://eprex.ifis.co.jp/)。 PAGE2000で披露し,昨年6月頃からテストを開始した。見積もり,発注,印刷,納品とすべてをWebで完結させる印刷サービスで,最初は同社の主要な得意先である証券会社に使ってもらった。そこで利用者から多くの意見を集約し,反映させ,新たなバージョンに改善した。 今回共同印刷(株)と提携して,従来の発注方法や管理機能をより一般的に使いやすく改良し,ASPサービスを開始することになった。提供先としては,一般企業と印刷会社の両者が考えられる。従来取引のある企業と印刷会社との間で,オーダー処理や進行管理などすべてに適用できる。

EPREXにはユーザ側画面,管理者側画面,印刷会社側画面の3つのWeb画面があって,管理者側画面はマネジメントをしている部署や委託先が把握する。3つを運用していくことでトータルドキュメント・マネジメントが構築される。一般企業が発注に使用するユーザ主導型,また印刷会社が顧客に対して提供するベンダ主導型の両方を想定している。 ユーザ側のメリットは,印刷発注にかかわる煩雑なやり取りや管理事務処理の省力化が図れることである。また,小ロットのオンデマンド印刷発注が可能となり,関連コストを削減できる。ASPのため,特別な設備を必要とせず,印刷にかかわる間接コストの大幅な削減が可能になる。ベンダ側のメリットは,自社業務範囲や設備情報を適宜提供することで営業人件費を削減して,効率的な仕事受注が可能になることである。

最適なコストで24時間印刷の受発注が可能

EPREXではWeb上での印刷見積もり,受発注,データ入稿のできるオーダー機能により,24時間印刷の受発注ができる。自動見積もりやあらかじめ業者を指名する見積もり,また入札方式もある。入札といっても設定仕様に対して,登録している複数の印刷会社からの適切な見積もりが得られるもので,相見積もりのようなイメージである。発注企業は納期や価格など自社にとって最適な印刷会社を選ぶことができる。

また専用ファイルサーバへの印刷データ保存が可能なので,増刷や再発行に対して履歴から再発注をかけることができる。企業ごとにメモリの中にスペックを入れたものを登録しておくと,一部訂正などの流用も容易で,必要部数や納期などを入力すればすぐに再発行ができる。 印刷用の原稿もすべてWeb上から入稿する。基本的に原稿は発注者側が完全データで作成することになっている。Windowsベースの社内ドキュメント文書が対象で,数MB単位のデータ容量なので可能になる。もちろんポスターなどの制作には向かない。校正はPDFでチェックするが,BBSと絡めて変更・確認することができる。

また,グラフィックカタログ機能では,名刺や封筒など定型の印刷物発注処理を自動的かつ容易に行えるテンプレートを用意し,顧客ごとにカスタマイズしている。印刷在庫のWeb受注が可能なサプライ機能もあって,支店や部門ごとで必要な部数をWeb経由で申し込めば,必要な部門に配送される。ユーザ企業内の発注・承認手続きがネット上で管理でき,印刷物の在庫管理や部門ごとの予算計上も可能になる。請求データと経理システムとの連結など,企業活動に必要な機能を統合したアプリケーションを充実させることで管理業務にも威力を発揮する。

印刷物受発注の流れそのものを整理する

同社では,企業内におけるドキュメントの問題点を整理する必要性があると考えている。セグメントされた情報提供に,バリアブルやワンtoワン,短納期小ロット,カラー化などの印刷ニーズの多様化にも対応していかなくてはならない。例えば,営業部門では少しでもきれいな物を早く欲しいし,管理部門ではコストを下げ,受発注業務の効率化,簡素化を図りたいと思っている。こういった企業内ニーズにもEPREXは有効だという。つまり企業の中で混乱している,印刷物受発注の流れそのものを整理することが開発の背景にある。

同社ではEPREXにはかなりの需要があるとみている。経験と顧客ニーズの反映があり,使い勝手の良さも自負している。共同印刷とタイアップして,大手企業を対象に初年度5億円の売り上げ見込みである。またOEM供給の話も持ち上がっており,今後のサービスにも注目したい。(上野寿)

JAGAT info 6月号より

2001/06/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会