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印刷物の3割はアマチュアが作る時代に

塚田益男 プロフィール

2001/7/25

Print Ecology(印刷業の生態学) 過去の掲載分のindex

3) アマチュア印刷との共存

アマチュアの印刷は今後どんどん増加する。米国のある統計では、2010年には全印刷量の30%、2020年には40%に達するだろうという。逆にすれば印刷会社のシェアは80%→70%→60%と小さくなることを意味しているし、とうとう電子印刷、トナープリンティングが無視できないことになってきたということだ。

勿論、印刷技術のすべてがアマチュアに開放されたわけではない。むしろ技術の一部しか移転していないというべきだろう。複雑データ処理を要するもの、印刷用データの作成、CTP刷版技術、ウエットインキ使用のプレス印刷技術、高級な製本および後加工技術、高級表面加工技術など、まだまだプロでなければできない技術は山ほどある。

しかし、アマチュアが印刷物制作にどんどん進出するということは、印刷物生産の社会的価値が一面では下がっていくことを意味する。それだからこそ私は逆に印刷界に次のような提案をしたいと思っている。

どこの家庭でも高価なシステムキッチンを買って、おいしい食事を我が家で作ろうと思っている。最近では男性まで台所に入って料理をするのをホビーにしている。それなのに街には昼時になれば弁当屋が溢れているし、マクドナルド、吉野屋のようなファーストフード店、ちょっと郊外に出ればファミリーレストラン、その上、手軽なレストラン、一杯飲み屋、コーヒー店、さらに高級レストランなど、街はレストランや食べ物屋で溢れている。一般人が食通になればなるほどプロのレストランが栄えるということになる。自分の家で食事を作るより外食の方が便利で、選択できるし、美味であるし、気分転換にもなる。みんなが家庭で料理を作りグルメになれば外食の便利さも分るというものだ。

印刷だって同じ事、アマチュアが印刷物を作っても、家庭で作るものならペラ物しか出来ないし、in-plantの社内印刷でも簡単な編集作業と製本で、100ページ前後のページ物しかできないだろう。自分で印刷物を作ってみると、はじめて印刷技術の難しさが分ってくる。

 私は印刷界も閉鎖的にならず印刷技術をどんどん公開したら良いと思っている。公開印刷スクールも開いたら良い。そういう中で逆にアマチュアはプロの印刷技術について理解を深めるし、価値が下がる印刷技術と価値が上がる印刷技術が区別されることになる。

プロの印刷経営ならアマチュアの印刷とは一線を画した経営モデルを作らなければならない。私は常にデータプロセシングのプロになること、これがプロとしてのテクニカルミニマムだと言い続けてきた。その上で、ワンストップ・サービスを可能とするような技術、ノウハウ、設備を持った経営モデルをニッチ品目別に作ること、それが一般社会人にも理解される本当の印刷産業だと思っている。

2001/07/25 00:00:00


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