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デジタルデータの戦略的利用法を提案

ビジネスパートナーに求められている資質とは,最適なサービス提供であるのは当然として,ともに発展していく姿勢にあるだろう。与えられた仕事をこなすだけでなく顧客の立場で推進していくことが必要である。つまり,コンサルティングや企業ごとにカスタマイズされたシステムの開発,運用,将来の拡張や展望までも見据えることにも繋がる。
今回は,顧客ニーズにマッチしたサービス提供をしている(株)デジタル・アド・サービスの常務取締役増井邦夫氏に同社の姿勢を伺った。

一般の制作会社との差別化を図る

 東京・文京区にあるデジタル・アド・サービス(代表取締役村田進氏)は,1993年に設立された印刷物制作会社である。社員数は現在43名で,社内にSEを抱えIT業務全般にも強いことが特長である。
 事業内容としては,カタログなど印刷物の企画編集・デザイン制作がメインの業務である。もちろん最近ではWebサイトの企画,構築からホームページのデザインも手掛ける。制作だけでなく,印刷やホスティングサービスの手配までトータルに請け負っている。特にホスティングサービスでは,顧客ニーズに合わせた多様なサービスができるようにしてあるという。「アウトソーシングはしたいが,自社のドメイン名で運用したい」といった場合も独自のドメイン名での利用が可能である。また一般のプロバイダのようなディスクの制限もない。その他コンサルティングサービス,システム構築サービス,データ処理サービス,自社開発のアプリケーションなどパッケージ製品の販売も行っている。
 もともと企業のマニュアル制作を得意としていたことから自動化処理が不可欠であった。仕組み作りを同社SEが構築し,編集制作部門がデザインから制作までを行うという流れを作っている。
 カタログの制作だけでは受注率も低いし,幅が広がらない。データベースの構築から運用までのサービスを提供することによりデータベースパブリシングが可能になる。SEが同社にとって重要なスタッフであることの証左であり,一般の制作会社とは差別化を図っているところでもある。

データのリサイクルツールを開発

 現在一般企業の意識には,印刷物発注に関するコストダウンがある。しかも思ったようにコストダウンが図れないという不満の声もささやかれている。その原因は「データ循環と集中に隠されている」とのことである。
 よくワンソース・マルチユースとかデータの2次利用3次利用という話が出るが,それはデータが同じフォーマットに統一され,データベース化されていることが前提である。DTPで作成されたデータは確かにデジタル化されているが,それをそのまま再利用するのは現実問題として難しい。作り手によって利用アプリケーションやデータ形式が多様だからだ。データベースには,せっかくのデジタルデータがそのままでは使えない「デジタルのゴミ」と化して蓄積されていく現状がある。
 データの再利用のためには,データを分別して加工するフォーマット化が必要で,データベースに一元化する環境を構築していかなければならない。しかし,一口にDTPといっても作り方によってかなり複雑なデータであり,それをフォーマットすることはそんなに簡単ではなく,高度な技術を要する。同社ではデータのリサイクルに必要なツールとして,C++やApple Scriptを利用し中間フォーマットデータに変換する「分別ツール」とXMLやRDB等の最終的な形式に変換するための「汎用処理ツール」とを自社開発している。
 変換されたデータはWebやDTPに再利用される。データを効率よく循環させて,スパイラルに拡大させながらより発展的なビジネスをサポートしていくソリューションである。

DTPデータをデータベース化

 「理想としては最初にデータベースがあって,コンテンツの再利用が望ましいが,最新の情報が必ずしもサーバに入っているとは限らない」という。
 例えば新製品の販促物などは,何度も訂正や追加があり,ぎりぎりまで赤字の校正をしている。文字情報,画像,図版などすべてのコンテンツがあらかじめデータベース化されており,データを利用してDTP化していけばよいのだが,時間勝負になるとDTPのアプリケーション画面上で変更してしまうケースがほとんどだろう。つまり,一番新しい情報がDTPのデータである場合が多い。そこで同社では,フォーマットツールを利用して,DTPで作成した印刷物のデータからデータベースとして蓄積していくというやり方を考案した。
 また,顧客企業によっては指定の印刷会社が何社かあり,複数の印刷会社がそれぞれのフォーマットで管理しているためデータの2次利用が難しい。そこで,顧客のサーバを同社に置いて一括管理するサービスも行っている。また,各印刷会社から回収されたデータをフォーマット化してデータベースに蓄積して,Webなどで再利用するサービスも行っている。

展開のためのデータベース構築

 不景気によりカタログの部数も減らされている。顧客サイドでもやはり考えるのはWeb利用による電子カタログである。Webなら新製品情報,追加情報もタイムリーに載せることができる。カタログを補うものとしてのWeb利用に頼るところがある。しかし,顧客の中にはデータベース化をしてないところが多い。印刷物からデータベースを構築してWebシステムに展開するという流れがあり,同社でサポートしている。
 ちなみに同社では,「ColdFusion」によるシステムでWeb提供している。「ColdFusion」とは,米国Allaire社が開発したサーバサイドアプリケーションのことである。開発の生産性やパフォーマンスの高さが実証されていること,また開発者が確保しやすいことがあり,採用したという。タグ言語であるCFML(ColdFusion Markup Language)とHTMLとを組み合わせて独自のアプリケーションを構築できる。CGIに比べてレスポンスが速くサーバへの負担も軽減されるほかデータベースを駆使したWebサイトの構築が可能になる。
 Webビジネスも今後ますます同社の柱となっていくであろう。

少量多品種のニーズに応える

 今後はさらなる優秀な人材確保と教育を念頭におき,今まで同社が歩んできた路線をさらに推し進めていく方針である。またオンデマンドをもう少し具体的に視野に入れて事業展開を図りたいという。コスト面で大量印刷は減り,その会社がもっている情報から必要なデータを抽出して,少量多品種が印刷の大部分を占めるのではないかとみている。ワンtoワンやバリアブル印刷にも注目しているという。PODがうまくいくかどうかは,データベースとマーケティングの整備にかかっていると考えているそうである。(上野 寿)

JAGATinfo 2001年7月号より

2001/07/29 00:00:00


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