印刷産業の出荷額は,1991年をピークに下降し,今後,既存の印刷市場は,年率0.8%で縮小しようとしています。印刷企業の将来性は,さらなる生産性向上を図るか,印刷物製造以外に「価値創造」をするかしなければ望めません。幸い,印刷という事業のまわりには今後拡大し得る事業領域が八方に広がっています。そこで印刷産業の印刷物製造以外の事業への取り組み状況等を明らかにし,「価値創造」を考えるために9月10日にアンケート調査を行いました。
以下にその結果をお知らせします。
(1)方法:FAXによるアンケート
(2)時期:1999年9月10日〜9月24日
(3)対象:JAGAT会員の製版・印刷企業(609社)および非会員製版・印刷企業(231社)の合計840社
(4)回答数:64社
(5)回答企業プロフィル:従業員規模別に見ると図1(ここをクリックしてください)のとおりで,50−99名規模を山とする正規分布をしている。
(1)印刷物製造事業とそれ以外の事業の比率図2
事業別売上構成比に関する有効回答数は57社であった。
回答企業の4分の1は印刷物製造事業売上のみで,印刷付帯サービス事業や印刷物製造以外の事業は行っていない図2−1。印刷物製造事業が50.0%以下と回答した企業は4社,7%で,いずれも50名〜99名規模の企業である。
自社事業における印刷物製造事業を除く事業の売上比率を見ると,印刷付帯サービスと印刷物製造以外の事業のいずれも10%前後でほとんど差がない図2−2。
別会社での事業展開図2−3を行っている企業数は57社中12社である。図2−3の回答数は,印刷物製造事業,印刷付帯サービス事業,印刷物製造以外の事業それぞれに対する回答数を掲載しているので,その合計は該当企業数の12を上回っている。
数が少ないので,業界としての状況をどこまで反映しているかは疑問だが,印刷物製造事業から離れるほど売上構成比が高いという結果である。
12社の内訳を見ると,複数の事業を行っている企業が5社,どれかひとつの事業を行っている企業が7社ある。後者のうち6社の事業は印刷物製造事業である。
(2)印刷物製造事業以外の事業への取り組み図3
1) マーケティング・販売促進・広告代理事業図3−1
本事業への取り組みを掲げた該当企業数は41社で,回答企業全体の64%を占めている。今回の調査における印刷物製造以外の8事業項目のなかでは,情報処理等の事業に次いで該当企業数が多い分野である。図3−1の「回答数」は,マーケティング,販売促進,広告代理等それぞれに対する回答数であるが,その数でも写真撮影等の事業に次いで多い。
すでに,この事業を行っている企業は該当企業の53.7%あるが,今年あるいは2年以内に開始するとの回答も41.5%あり,ここ数年で,多くの企業が取り組みを始めようとしている分野である。
当初目標と5年後の目標を比べてみると,当初目標は全事業売上額の10%未満とする企業が8割を越えているが,5年後では売上比率が10%から49%と,主要事業のひとつになると見ている企業が3割を越えている。この分野の事業は,時代にあまり左右されず,ある程度以上の規模での展開が可能な分野と見られている。
この事業の成功要因として,「社外人材採用」を掲げる企業割合が8項目中の回答で最も多い点が特徴である。事業の専門性の高さへの認識が伺われる。
また,顧客要因はあまり多く意識されておらず,一般的に共通するニーズであることを窺わせる。
2) 写真撮影,編集,グラフィックデザイン事業図3−2
収益事業内容回答数63社と,8項目中最も多い回答を得ており,印刷業にとって最もなじみのある周辺事業である。開始時期を見ると10年以上前という回答が約6割で最も多く,既に取り組んでいる企業が回答数の9割を占めている。逆に,これからこの分野の事業に取り組もうという企業は1割で,既にやるところはやった分野であることがわかる。
対売上比率を見ると当初目標として10〜19%を見込んだ企業が15%あり,5年後についても売上の1,2割は見込めるという企業が約4割,20%以上というかなり高い比率での売上げを期待できるとの企業も2割弱ある。現実に大きな収益事業になっている企業もそれなりにあるし,今後,印刷以外の事業の柱になると見ている企業が多い。
この分野での事業の成功要因としては,「社内人材育成」を掲げる企業が8項目中最も多い43.6%になっている一方,「社外人材採用」,「顧客」,「他社」との提携など,回答にはバラツキが見られる。
3) 情報処理,ページバリアブル印刷事業図3−3
8つの事業項目の中で,該当企業数が最も多い事業分野である。ただし,ページバリアブル印刷への取り組みは少ない。
事業の開始時期を見ると,10年以上前に始めた企業が2割弱ある。電算写植時代にこの事業を始めた先行企業群である。しかし,過去4年以内に始めた企業が3割,これから2年以内に取り組むとする企業も3割と,この数年が,デジタル化という技術変革の影響や顧客の側の変化にともなう第2段階の情報処理事業拡大期になっていることが窺われる。
売上規模に関しては,当社目標でも10%〜19%とかなり高いレベルを掲げる企業が2桁あるし,5年後についても10%から49%までという高い水準の売上規模を見込んでいる企業が3分の1を越えている。マーケティング等,写真撮影等の事業分野とともに,印刷産業にとっての事業領域拡大の主要分野になり得ると認識されている。
事業成功の主要因については,「社内人材育成」が最も大きな項目として掲げられているが,「顧客」要因を掲げた企業が2割を越えて8つの事業分野のうちで最も高い比率になっている。顧客側のデジタル化の状況や取り組み方に左右されるところが大きいということであろう。
サービス提供は,顧客の側の状況にうまく合わせていくことがポイントとなるという状況が最も強く現れている事業分野である。
4) 技術コンサルティング図3−4
8項目のうちで該当企業数が最も少ない事業分野である。開始時期で見ると,他の事業分野とは異なり,既に行っている企業の数がこれから取組むとしている企業を下回っている。また今後の取組みでも,3年後以降との回答が2年以内の3倍になっており,この分野の事業展開のハードルの高さを感じたものになっている。
売上目標では,当初目標は5%未満とする企業が大半(88.9%)だが,5年後の目標では,やはり5%未満との回答が6割を越える一方,10〜19%とある程度の規模を見込んでいる企業の比率もそれなりの大きさになっている。一方,5年後でも20%以上を見込む企業がゼロというのもこの事業分野への回答のひとつの特徴である。
成功要因としては,「新事業の熟知度」が第一に掲げられるとともに,「経営者の熱意」を掲げる企業が8項目中最も高く,この事業が印刷産業にとってはかなり異質な事業と受け取られていることが分かる。
この事業は,印刷産業としては新しい分野であり,今回のアンケート対象企業ではなく高い専門能力を持った個人が独立して事業を始めるケース(SOHO)がここ1,2年多く見受けられる。
5) マルチメディア制作図3−5
情報処理関連事業と同様に,該当企業数が最も多い事業で,43社が取り組みの回答を寄せている。事業開始時期では,既に取り組んでいる企業が6割で,これから取り組もうという企業が4割だが,いずれにしても時期的にはこの数年前後に集中している。
売上規模については,当初目標として4分3の企業が5%未満と回答し,5年後についても,全売上の10%未満とする企業が4分の3と高い比率になっており,マーケティング,写真撮影,情報処理等の事業分野に比べて,売上規模拡大には慎重な見方をしているようである。ただし,5年後に20〜49%とする回答も16.3%と,8項目中では最高の比率になっており,企業間の差が大きい。
成功要因としては,「社内人材の育成」を掲げる企業が37.2%と写真撮影等の事業分野とともに高い一方,「他社との提携」を掲げる企業が20%と「物流」事業に次いで高くなっている点が特徴である。自社と提携企業との役割分担が想定しやすいのだろう。
6) 物流事業図3−6
この分野の事業に取り組む企業は技術コンサルティングに次いで少ないし,今後新たに取り組もうという企業も最も少ない事業のひとつである。既に取り組んでいる企業のなかでは,4年前以降で取り組んだ企業が4割強を占めている。
事業規模については,大半は10%未満としているが,1割程度の企業は20〜49%という高い水準の売上構成比を期待している。企業規模の要素が大きいだろう。
事業の成功要因としては,「他社との提携」が最も多くの企業で掲げられ,ついで,「顧客」,「過去の経験」が掲げら,この3つの要因いずれについても8項目中最高の回答率になっている。業務の特殊性とともに,顧客側の業務への関わりにおいて,他の事業とは異なる感じを持っている様子が見てとれる。
7) 商品開発図3−7
回答企業の5割強が回答した事業で意外に取り組みが多い。ただし,既に取り組んでいる企業が4分の3を占めている。事業内容として,「出版」と明記した企業が該当企業数の3割ある。
全売上に占める割合として,当初目標では9割程度が10%未満としているが,5年後では10〜19%と見る企業が11.4%,20%〜49%と見る企業がやはり11.4%で,事業の主要分野になるとの回答が2割強ある
成功要因としては,社外人材確保や他社との提携との回答は少なく,顧客要因と経営者の熱意が重要とする回答が多い点が特徴である。
8) その他
回答数が8社と少なくコメントは省く。事業内容として掲げられた項目を以下に紹介しておく。
*コピーサービス
*入・出力(コピー業)
*OA機器販売&ソフトウエア開発
*ネットワーク事業
*ホテル
*情報処理,コンテンツ化,オンデマンド
*新しい設備の開発
*e-Bussiness関連への参入
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1999/09/30 00:00:00