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独自の電子版下管理システムが威力を発揮

オンデマンドプリンティング推進委員会主催の「オンデマンドアワード2001」では,18社からの応募のうち5社が受賞した。デジタルプリント部門で受賞した(有)オンデマンド印刷(名古屋市)を訪ね,オンデマンド印刷の成功秘話を探るべく,代表取締役の生島敏男氏と営業マネージャーの生島裕久氏に話を伺った。

従業員は20人。社長が工作機械メーカー・オークマで積んできた実績と印刷会社クイックスから受ける強い要求によって,印刷会社のノウハウと情報処理ノウハウが融合し,従来の印刷の価値観を尊重しつつ,一方でその価値観を超越するデジタル指向の提案ができることが同社の強みである。
仕事の内訳は,工作機械の取り扱い説明書など,オークマの仕事が25%。クイックス関係が25%。残りの50%が一般市場からだ。メーカー,教育産業,官庁,個人,そして印刷会社からの受注が意外にも多いという。小部数の印刷は,印刷会社の不得手とするところで,単価を考慮しても,自社で印刷するより効率的だからだ。この一般市場の50%の部分は年々ふくらんできている。というのも,1社で11台ものDocuTechを保有し,稼動している会社は他に例を見ない。ピーク時には月間1000万カウントのビジネスボリュームにまで達した実績を持つ。

独自ファイルサーバシステムでワンソース・マルチユースを実現

「オンデマンドが成功するかどうかの分かれ道は,印刷機をどう運用するかにかかっている」と生島裕久氏。同社を成功へと導いたツールは,富士ゼロックスの協力を得て同社が開発した「電子版下管理システム」である。これこそが同社の最大の武器である。
このシステムは,従来の印刷会社でいうところの在版管理業務を電子化したものだ。ユニックスベースの大容量Raid(1000GB)を用い,顧客の版下をデータ化・顧客別に管理している。その上,蓄積するデータの検索・DocuTechへの転記などの操作を行うアプリケーションをも備えている。さらに,そのデータのバックアップテープを銀行の貸金庫に納め,二重に管理をしている。まさに,在庫ゼロ,省スペース化を実現している。顧客から増刷依頼がくると,必要なデータをDocuTechに呼び出し,簡単に出力できる。
また,冊子の中に色のついた用紙が入る場合,例えば何ページ目に青い用紙を差し込む,といったことまでDocuJobは覚えているが,そういったことも含めた版下イメージをファイルサーバで管理することができる。
さらに,電子データをDocuJobコンバータによってTIFFファイルの形にできるので,PDFファイルを作成することもでき,CD-Rへ出力して,ラベルプリントで「CDの顔」も作成できる。すなわち,ワンソースマルチユースを達成することが可能なわけである。

入稿から出荷まで

「オンデマンド印刷はスピードが命」との言葉どおり,同社では社内に製本(大型無線綴じ,クロス綴じ,中綴じ,平綴じ),断裁,穴あけなどの後処理機を完備しているので,素材から完成品まで社内で終了でき,コストと納期の早さの強みを十分発揮している。
DocuTechのみで印刷をし,これだけ立派な製本機を保有しているところは,他にあまり例を見ない。「たとえオンデマンドで早く印刷ができたとしても,製本を外注して納期が遅くなったのでは意味をなさないから」と生島裕久氏は語る。
さらに,発送まで受け,エンドユーザーにまで届けることをしている。「顧客には,発注すればあとのことは忘れてもらってもいい」十分なサービスを提供している。

顧客のニーズに応えて

同社のオンデマンド印刷の成功の秘訣を尋ねると,「あえて言うなら,顧客のニーズに応えるための努力を怠らないことだろうか」との答えが返ってきた。「これからは,ますます目をしっかり開いて,顧客のニーズをつかまないとだめでしょうね」とも。
品質的にも,フィルムをおこした印刷にはかなわないが,DocuTechでの品質で十分だということを納得してもらった上で,単価も安く納期が早いことで顧客満足を得られるよう努力を重ねている。単価や納期については,「オンデマンド印刷だけに特化し,DocuTechを多量に設備したことが強みとなっている」と言う。

カラー市場に期待

「今年からはカラープリントに力を入れていきたい」。オンデマンドの課題として,モノクロはあってもカラーがない…と長年言われてきた。モノクロでは,新たな市場を掘りおこすのは非常に困難だ。カラーでどれほどの市場と売り上げがあるのかは未知だが,今年は掘りおこし,ビジネスとしてかけていきたいという。2000年がカラーオンデマンド元年とも言われ,今後ウェイトを高めていきたい部分だ。いかに,顧客に満足してもらえる環境と品質を提供できるかが今後の課題だという。

(Printers Circle 2001年8月号より)

全文は,Printers Circle 2001年8月号をご覧下さい。

2001/08/10 00:00:00


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