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ブロードバンドでどんな動画配信がされるのか

だいぶ夢が萎縮した感のあるITの世界で、まだ望みをかけている次なる夢はブロードバンドである。CATVとかADSL、無線、光ファイバなどを国内に張り巡らすことや、MPEG4など動画圧縮のような技術革新は問題ないだろう。日本の政府は2001年1月にe-Japan構想を打ち出してブロードバンドの後押しをしようとしている。

それはそれでいいのだろうが、隣の韓国では1999年4月にCyberKorea21という情報先進国構想があって、すでに昨年末でDSLは250万件加入と日本の4倍も普及させていて、近くにこういう例があると、e-Japanのオリジナリティや目標の鮮明さがわからなくなる。

総務省の情報通信白書はe-Japanの紹介とあわせて「加速するIT〜ブロードバンドがもたらすITルネッサンス」という題をつけているが、今日の日本の社会が抱えている暗くて深い問題に対して、ITがどのように人間復興に寄与するのかというようなことは、どこにも書いていない。それとも総務省はITメーカーの復興のためにやっているのだろうか。

日本国内でブロードバンドに投資がされるには、規制緩和をするとしても何らかのビジネスの可能性が切り開かれねばならない。この点についてもまだ新しい展開は見えていない。例えばどこに双方向性をもった動画配信の需要が創出されるのかは語られていない。

高速回線の普及のようなインフラは予定どうり進むとしても、サービス提供業者やコンテンツホルダが新たなビジネスの創出をしなければならない点が大問題である。新規ビジネスを起すには、たとえそれが勝算があるものでも、ある程度息の長い投資力と、またそれを他人の金をあてにせず継続する気力が必要で、それらを備えてブロードバンドを睨んでいる人達は誰かという問題である。

既存のコンテンツを抱えているところの傾向として、従来の著作権や慣例ではコンテンツは特定メディアを想定してたために、過去のコンテンツを新しいメディアに流用するには壁が立ちはだかっていて、ほぼ新規にコンテンツを作る人と同じような立場にある。

ブロードバンドで動画というモデルは、一般企業やアマチュアにビデオ機器や動画オーサリングが普及するのに機をあわせて、全く従来と異なるコンテンツホルダが、全く異なるビジネスモデルができるといいう可能性も高い。新しい時代を開くのは先端のプロとは限らず、底辺のビデオを撮る文化なのかもしれない。

通信&メディア研究会 VEHCLE146号より

2001/08/20 00:00:00


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