NEXPO99報告 その3
NEXPO99の基調講演にInDesignは組み込まれていた。Adobeではジョンワーノックが技術開発の親玉なのでチャールスゲシュケ氏が出てくるということは,システムインテグレータというか,外部とのやりとりが重要な局面だということである。つまりInDesignの中の仕組みや技術の話をするよりも,どのように実際のシステムに組み込んでいくのか,どことタイアップしていけばいいのかが問題の局面にきている。
Adobeが新聞という世界にターゲットを絞り成功したものにPDFがある。PDFで広告を各新聞社に配るということでは,APとタイアップし,PDFが出てきた1993年,バージョン1.0のころからずっと協力してきており,それがうまくいった。どちらかといえば,ニッチ的なところの開発をInDesignでは重視している。新聞では,Quarkを使ってはいるがXTentionなしでは使うことができないという状況であったため,新聞用のシステムでInDesignを使ってみましょうというところがSeyboldBostonでいくつか出てきた。それがNEXPOでのプレゼンにつながっていく。
ADOBEのプレゼンに続いて,DTI社とManaging Editor社がInDesignを組み込んだシステムのデモを行い,新聞のインテグレータの代表格SII社となど全部で10社近くがInDesignを取り込むと表明した。InDesignそのものは2MB弱と言われており,メニューや組版も別モジュールという。InDesignをインストールすれば70MBくらいのフォルダができ,たくさんのモジュールが入る。もともとついているモジュールですら,組版のモジュールが気に入らなければ差し替えられるなど,機能の90%は手が入れられるようになっている。
新聞分野のシステムはInDesignのプラグインというよりも,InDesignがプラグインされているようなものである。その種のものではDTIが一番きちんと動いており,Mac版もWindows版もデモをしていた。DTIのものは画面の半分はInDesign以外のメニューが出ている。これを経由して例えばデータベースから写真をdrag&dropで貼り付けるとか操作する。素材のある場所はそれぞれネットワーク上の離れたところでよい。
このような,作り込みの組版レイアウトエンジンというかたちで出ているのだが,InDesignそのものの評価でみると,なるべくプロ好みにすることをかなり強く出している。組版に関しては電算写植時代を思わせ,好評であり,タイポグラフィ上のいろいろな機能を組み込んでいる。
InDesignそのものは組版付きビューアのようなもので,他の機能は自由に構成できる感じである。InDesignはPostScriptを画面にレンダリングするとか,PostScriptの中のオブジェクトをいじるなど,雰囲気的に言うとPostScriptの言語のエディタのようなのである。
InDesignのセールスポイントは,例えばPhotoShopのネイティブファイルをそのまま貼り込み,開いて加工できたり,Illustratorを開いておき,そこからオブジェクトの中から必要な部分を取り出して,カットアンドペーストしてInDesignの中に貼り込み,それからオブジェクトの色の指定したり変形,加工することができる。このようにIllustratorとまったくシームレスに使うことができる。
PhotoShopに関しては,写真の上に見出しの文字をアウトラインにしてのせてグラデーションで色をつけるなどしてしまうなど,PhotoShopで文字を加工するようなことができる。PDFそのものもPhotoShopなどを開けるが,PDFの広告を貼り付けて,その中の画像をクリックしてPhotoShopで開き,画像を編集してPDFに戻してしまう。できたページはその場でPDFに落ち,通信でどこかに送れば,受け取った方もAdobeのプレスレディなどを使ってインクジェットプリンタで校正出しができる。
DTIは過去に訪問したことがあり,page会報にも報告した。広告素材をデータベースにして無料の新聞を発行しているところが親会社にあり,もともとミニコンやデータベースに強いので,記事もこのシステムでは全てXMLのタグを使っている。それをうまく解釈してページネーションに使う。もともと独自タグを使っていたが今日的にXMLにつくり変えて,商品名がPageSpeedのバージョン5となっている。
広告を扱いやすくしたフルシステムを自分の専用システムでしていたのをMacやWindowsのソフトにしていった。そしてQuarkをXTention使うかどうかも検討していたのだが,結局はQuarkは使わずにきた。そこがAdobeが気に入った点かもしれないが,非常に協力して,デモのレベルもかなり完成度の高いものになっている。
記事も画像も全てデータベースに入れておき,Quarkでいえばデジタルメディアシステムのようなものを自分たちで持っている。それを操作するメニューが自社のサーバシステムで,おそらくそこのプログラムのメニューがデスクトップの一角にリモートで出てくる。これでInDesignを組み込んだひとつのデスクトップ上で,異なるシステムをまとめて操作/管理していると思う。
ここではコンテンツに関してはメッセージセンターと言っているが,これは自社内になくても,外部のワイドエリアのネットワーク上などでもシームレスに仕事ができる。したがって,システムとしてかなり先を行っていることになる。例えば,今からQuarkパブリシングシステムやQuark デジタルメディアシステムを使うかというのではなく,そのようなものはすでに使っており,さらに先を行くという人のターゲットになりうるのである。そう考えれば,AdobeにとってInDesignのデモのサイトとしてはよかったのだろう。
デモは途中で失敗してしまったが,マネージングエディタは,新聞紙面広告の管理と記事の流し込みの仲介をするもので,InDesignをWYSIWYGのために使っている。新聞は広告の割り振りをつくることから始める。見開き単位で,何月何日の新聞はこのように記事があり,ここには何の広告がくるということを決めて,その間に記事を入れていくソフトが,マネージングエディタのアドレイアウトシステムである。
このシステムは,いわゆる組版などではなく,どこに何が割り振ってあるという,広告を管理する別のシステムからデータをとってきて,そこからQuarkのテンプレートをつくる。広告の増減に応じて,Quarkのテンプレートが自動的につくり変えられる。したがってQuarkのオペレータは,このページを開けば,この部分だけ記事を流すという作業の段取りができる。出力するときにはこれらを全部ひっぱっていき,出力するというかたちである。
このようなところにInDesignを使うと,管理画面の広告エリアのダミーをクリックすると,ちゃんと素材を取ってきてWYSYWYGで流し込んで見せてくれる。InDesignのビューアとしての機能が生きるから,レイアウトシステムも管理システムも見てくれでは差がなくなってしまう。
(T&G研究会会報117号より)
1999/09/30 00:00:00