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PRINT Image Matchingの仕組みと応用

最近テレビCMなどで宣伝されているPRINT Image Matchingとは一体どういった仕組みなのだろうか。印刷業界でも利用できるものなのか。今回はその仕組みと応用について,セイコーエプソン(株)情報画像事業本部の大澤道直氏の話より紹介する。

「きれい」と「簡単なシステム」の両立

現在デジタルカメラの販売台数が非常に伸びてきて,いよいよアナログのカメラと数が逆転する状況になりつつある。デジタルカメラで撮ったものをプリントすることを考えた場合,求められるものは,「きれい」と「簡単なシステム」だ。それをこれからどういう形で実現させ,発展させていくかを考えたときに生まれてきたものが,PRINT Image Matchingである。

これからのデジタルカメラは,デジタルカメラの個性を表現することが大事になる。その場合には写真の思想を絵作りに反映させる,すなわちデジタルカメラで撮った画像の個性ある絵を作ることが重要であり,プリントイメージの調整も重要になる。ではプリントの表現についてはどんなことをしていけばいいのかということで,PRINT Image Matchingが考えられた。

PRINT Image Matchingは,デジタルカメラからプリンタの画質を自動的にコントロールできるシステムである。ユーザはあまり何も考えずに,ただ撮っただけで出力がコントロールできる。それは,一般的なデジタルカメラのデータのプリント時の課題である,プリントしてみたら思っていたイメージと少し違うという問題を解決する方法でもある。

デジタルカメラの画質は良くないという話が最初のころあったが,その原因はカメラにあるのかプリンタにあるのかわからず,結局写真のプリントは専門店に任せたほうがいいという形になってしまう。実際には,現在はプリンタを使っている人のほうが多いが,そういう意味では専門店でのプリントもだんだん増えている。

そこである一定の条件の枠組みを作り,その中でユーザは簡単にデジタルカメラに最適なプリントが得られる,そういう枠組みとしてPRINT Image Matchingを提案した。

ICCプロファイルはプロ仕様

デジタルカメラで撮ったデータをプリンタで出力するには,デジタルカメラからプリンタに伝達する手段が必要となる。今までの枠組みとしては,まず一番使われているICCプロファイルが出てくる。その仕組みは,ICCプロファイルによって色の空間を伝達させる,つまり画像に対して空間を指定するというものである。しかし,現状ではICCプロファイルはあるがプロ領域でしか使われていない。しかもプロの間でも限られた人にしか使われていない。さらに使い方がアプリケーション依存で難しく,Photoshopなどでは大分改善されてきているが,バージョンが変わるごとにその使い方が変わってくるなど,非常に使いにくい。だからICCプロファイルを民生で簡単に使う枠組みにするのは非常に難しい。

またカラーマネジメントだけの適用で考えると,色空間という観点では可能であるが,そこでデジタルカメラの個性を出すことはできないし,プリンタの個性をデジタルカメラから引き出すこともできない。

デジタルカメラの意図した画像を再現

PRINT Image Matchingは,基本的には民生のユーザに簡単に使ってもらうという発想で生まれている。今のままでもエントリーレベルのコンシューマーが簡単に手軽に扱える領域のものだが,さらに中級以上や写真愛好家にとっても用途に応じて使ってもらえるものであり,プロまたは上級者には大量印刷にも使ってもらえる形でもある。

一般に撮影者は撮影の意図をカメラを操作して伝えようとしている。そのシーンモードや撮影画像ファイルの選択などの撮影意図を,PRINT Image Matchingではプリンタをコントロールする印刷命令,つまり印刷コマンドに変換して汎用画像のファイルに埋め込むのである。プリンタ側では画像ファイルに埋め込まれた印刷命令どおりの印刷を行う仕組みである。

そのコマンドは従来の汎用の画像ファイルの構造をそのまま利用して埋め込めるので,非常に簡単に従来の仕組みの中に入るものである。具体的にいえば汎用の画像ファイル,あるいはデジタルカメラで撮った画像のヘッダ部分にPRINT Image Matchingのコマンド,つまり印刷命令を付けるだけである。

印刷命令はプリントのガンマの定義,カラースペースの定義とそれから画像調整のパラメータ,さらにはプリセットといったものであり,それらの印刷命令がヘッダに書き込まれている。実際には各社独自の書式でExifファイルのメーカーノートという領域を使って印刷命令を書き込む仕組みをとっている。それによってデジタルカメラが意図した画像により忠実なプリントができる。

プリンタへの対応

まず初めに,パソコンを経由する場合とパソコンを使わないケースの2つを準備した。 パソコンを使った場合は,画像とExifのヘッダに付いているコマンドをパソコンの中のアプリケーションが理解して解析し,それをプリンタドライバ経由でプリンタに渡し出力する仕組みを取った。印刷コマンドを解析するエンジンが,アプリケーションやユーティリティという形で中に入っていて,それらが解析した結果をプリンタドライバに渡して出力することにより,印刷コマンドによる出力ができるのである。PhotoQuickerというソフトがプリンタに付いているので,それを使うことでPRINT Image Matchingに対応できる。

ダイレクトプリントの場合は,プリントンという形で以前から紹介していたものだが,メモリをカートリッジを通してプリンタに差し込むことによってプリントできる仕組みをそのまま使う。この場合には,プリンタの中の解析エンジンを使い,そのままプリンタに出力することが可能である。

PhotoQuickerはプリント用のユーティリティである。その中にPRINT Image Matchingを解析するエンジンを入れたもので,画像にPRINT Image Matchingのコマンドが入っていると,自動的に解釈してプリンタに出すことができる。また,コマンドが入っていてもキャンセルすることもできる。何も考えず,紙の設定とレイアウトの設定さえすればそれがプリントに伝わる仕組みになっている。

撮影画像のプリント

今までのアナログ/銀塩の場合には,カメラをコントロールしながら色再現,調子再現に関する撮影意図をプリントに伝えることができなかった。またデジタルカメラの場合でも,最終的なプリントにまでその色再現,調子再現に関する撮影意図は反映されていない。これは現状,プリントメーカーが特に画像変換処理を独自にしてプリントを目指しているということ,さらにガンマなども各社のプリンタによって違うということに起因する。

これらの諸課題に対してPRINT Image Matchingを使えば,その仕上がりのイメージを最初のデジタルカメラの段階で想定しコマンドを使って伝達できるのである。ただし,注意しなければいけないのは,PRINT Image Matchingの対応さえすればきれいになるというわけではない。基本的にはコマンドを付けられるという枠組みでしかない。どういうふうに書き込まれたかが大事である。(テキスト&グラフィックス研究会)

■出展:JAGATinfo 2001年9月号より

2001/09/09 00:00:00


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