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広げたい印刷物の光沢加工利用



印刷物の用途を拡大した光沢加工

このは,光沢加工の種類とその特徴(機能)および製品への応用例である。光沢加工の技術は光沢コート,UVコート,プレスコートそしてラミネートに分けられる。

光沢コート,UVコートは印刷面にローラ塗装あるいは塗布機によって表面加工材料を塗布する方法で,光沢を出すことによる美粧効果を狙ったり,保護コート,スベリコート,ブリスターパックコート,スキンパックコートなどの塗布材料を使うことで,耐熱・耐摩擦・耐汚染・耐水・耐油などの耐久効果が得られる。

プレスコートは,熱硬化性樹脂を印刷面に塗り,熱および圧を加えて圧着させ,鏡面のような仕上がりを出すことでより美しい効果が得られる。さらに,手垢などによるヨゴレ防止や,使用する被印刷体や使用条件(高温,高湿度等)によってブロッキングが起こりやすい商品に,可塑剤を混入したコートを施すことによってブロッキングを防止するために使われる。

ラミネートは,PPフィルムなどを印刷面に熱シリンダーで熱圧着させるもので,上記の方法に比べて一段と光沢・強靱性が優れていている上に,内容物を保護する効果も高い。また,材料によっては弾力性にも優れ製函時の糊付けが可能なので使用目的に合った組み合わせて加工が行える利点がある。この技術を応用したシークレットメールは,情報の守秘・郵送コストの削減などに一般に広く利用されている。

次々生まれる新たな技術やアイデア商品

上記以外では,樹脂の塗布料が極小量でも鏡面のような光沢効果が得られるUVラミコート(熱硬化性樹脂を印刷面に塗り,透過性の良いフィルムと圧着させ,UVを照射しフィルムの表面層を転写させる方法)や,エンボスデザインPP貼り(エンボスデザインプレスフィルムを印刷面に熱シリンダーで圧着させる方法)など,新しい光沢加工方法も広がっている。

エンボスデザインPP貼りは,普通のコート紙にいろいろなエンボス効果が得られる方法で,高級エンボス紙やエンボス後加工では印刷物の裏面にエンボス模様が出るが,この方法を使えば印刷物の裏面は平滑で高級感が得られる。

光沢加工の新しい特許,実用新案,既存の技術を組み合わせた新しい機能を付加した新開発技術やアイデア製品として,マウスパッド,下敷き,マグネットシート,スケール,ランチョンマット,三角くじ,シークレットメールなどがある。

以上のように,光沢加工技術は,新しい材料や加工方法の開発,改良によって,それぞれの特長をもった光沢加工技術が広範な印刷物に使われ,印刷物の機能性と情報伝達価値を高めるために役立ってきたことがわかる。

ちなみに,光沢加工専業の立場で生産加工方式別の構成比の推移をみると,1970年ごろは「塗り加工」60%,「塗り押し加工」20%,「貼り加工」20%であったものが,現在では「貼り加工」70%,「塗り押し加工」20%,「塗り加工」10%と大きく変化してきている。

環境問題とリサイクルへの対応

光沢加工を一手に担ってきた光沢加工業界は,印刷物後加工の典型的な受注産業であり,ほとんど都市に集中した都市型産業である。従って,都市型産業の経営戦略のあり方として,早くから環境問題には先行して取り組んできている。

環境負荷低減のために,コーティング・ラミネートの資材にはアクリル系樹脂が使用されている。以前はポリ塩化ビニール樹脂を使用していたが,現在は塩素を含有している資材は皆無である。ダイオキシンなどの有害物質の発生要因となる物質の使用を抑制している。また,コーティング・ラミネートの加工剤は,溶剤タイプから無溶剤タイプ(アクリル)の使用が主流になっていて,VOC(揮発性有機化合物)の発生を抑制している。

現在,光沢加工を施した製品は印刷物全体の1%にも満たず,光沢加工古紙(光沢加工製品や光沢加工業から排出された)のほとんどは,産業廃棄物として処理されている。 一方,一部の大手製紙会社ではフィルムと紙に分離し,フィルムはサーマルリサイクル(熱エネルギーとして活用)に,紙はマテリアルリサイクル(古紙再生)されている。ほかに,RPF(廃プラ固形燃料)へのサーマルリサイクルや,古紙と廃プラを原料にした射出成形用ペレットも作られている。

また,フィルムと紙を分離せずにそのままトイレットペーパーや封筒・名刺などにリサイクルしている製紙会社もある。光沢化工紙連合会の会員企業は,このトイレットペーパーに「このトイレットペーパーは光沢加工古紙が使われています」というラベルを貼って,顧客にリサイクルについて理解をしてもらう努力をしている。


光沢加工は印刷物の情報伝達媒体としての価値を高め,さまざまな機能を付加することで市場を拡大できる技術であり,今後ともその用途を広げていきたいものである。

■出展:JAGATinfo9月号より

2001/09/16 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会