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2002:製版の動向

■CTPワークフローとは

イメージセッタのときにはあまり意識されなかったワークフローであるが,制作データがすべてデジタル化されるCTPでは,データの流れや処理,校正チェックなどのワークフローの組立てが重要になっている。

JDFはプリプレスのAPJTと印刷・後加工へのインターフェースであるCIP3を統合して,印刷工程全体をオープンな指示書(ジョブチケット)によって自動処理を実現しようとするものである。ハイデルベルグのMetaDimentionはこのJDFとPDFというオープンフォーマットを前提にしたRIPベースのワークフロー製品と言える。

一般的にCTPワークフローは,DTP制作された完成したページデータを受け取り,データチェック,面付けなどの前処理に続いて,プルーフ出力や検版・プレートセッタのための出力RIP処理などのワークフローは各システムごとに工夫がされている。

実際のCTPワークフロー製品は,Adobe社のPostScript,PDF,Extreme技術をCTPベンダーが利用して自社のCTP出力機との接続や,他社システムとの接続インターフェイスを提供している。

■RIP処理/インタープリット

始めに,PostScript/PDFのRIP処理の内部的な流れと,中間的に生成されるデータフォーマット,そして,各社のワークフロー製品が採用している中間フォーマットについて概観してみよう。RIPの第1段階はインタープリット(翻訳)で,PostScriptの記述から紙面上に部品を配置すべき位置を割り出し,文字コードはRIPに読込まれているフォントデータと突き合わされ(この突き合わせが失敗すると文字化けが起こる),画像以外の部品(オブジェクト)のアウトラインや位置(座標)を設定している。

インタープリット部分をAdobe社がPDF生成用にアプリケーション化した製品がDistillerである。また,サードベンダーが新たな機能を追加して自社製品を開発用できるようにライセンス方式で外販しているソフトウエアコードがノーマライザーで,基本機能は同じである。インタープリット後の線画はアウトラインになるため,出力機の解像度に未だ拘束されていない。インタープリット後に中間データとして取り出されたものが,PDFそのもの,DS/TrueFlowのPolishedPDFなどである。

このときにフォントの扱いは3種類あって,第1は文字コードのみを保持させて,最終的な字形は出力時のRIPの搭載されたフォントによって生成する方法で文字化けの危険性があり印刷用途では使用されない。第2は書体の埋め込み(フォントエンベッド)で,これはページデータ内にそのページで使用されるフォントデータのみを読込んでしまうので,文字コード+フォントデータという形式ではあるが,文字化けの心配はほとんど無く,再編集時に文字サイズ変更や,改行なども可能である。

適応するRIPはPostScript3(CPSI-3011,CPSIも外販用のPostScriptソフトウエアコードの商品名)である。フォントエンベッドPDF はCMYK変換された画像と組合わせてPrintPeadyPDF(印刷出力のためのPDF)に使用されている。

第3はフォントをアウトライン化する方法である。この場合は出力解像度には拘束されないが,文字は線画化されているで,組版を訂正するような再編集ではできない。TrueFlowのOutlinePDFはこの形式である。また,レナトスJOBのうちのPOM形式も独自フォーマットであるが,文字も他の線画と共にアウトライン形式になっている。

■印刷用のPDF作成

印刷用のPDFにするためには,ノーマライズの後に,フォントはエンベッドまたはアウトライン化され,画像はCMYK変換,線画と画像の境界線処理,InRIP Trappingパラメータの埋め込み,CMM埋め込み,サムネイル生成,プリフライトなどの処理などが行われ,PrintRreadyPDFなどと呼ばれている。

一連の処理を,富士フイルムのCelebraNT Extremeではstabillizer(スタビライザ)が,CreoScitexのPrinergyではRifiner(リファイナ)が行なっていて,ジョブチケットで連続処理が実行される。DS/TrueFlowのPolishedProPDFなどもこれである。

■RIP処理/レンダリング

インタープリットの次の段階がレンダリングで,線画は短い線分のランレングスやショートベクターに変換され,出力機の解像度に合せた処理が行なわれる。TIFF-IT/P1,CreoScitex Brisqueのハンドシェイク(LW/CT),ハイデルベルグのデルタリスト,CreoScitex BrisqueのExportPS,同PDF2Go,DSのRIPedPS,同RIPedPDFなどの線画データはこの形式である。CTP用とデジタルプルーフ用に各々の解像度に合せたレンダリングをする必要がある。

■RIP処理/ラスタライズ・スクリーニング

RIPの最終段階の処理であり,出力する出力機の解像度や特性に合せたビットマップデータを作成する。プレートセッタやイメージセッタであれば2400dpiなど,プルーフ用であれば600dpi,720dpiなどのデータ(セッターでは印刷網点化)する。出力機に渡すデータは1bitTIFF形式であり,アナログの網フィルムと同様な形態の1bitデータ,高解像カラー出力機用(網点DDCPなど)には1bit や8bitTIFFを作成する。

1bitTIFFは網フィルムと同様であり,訂正はストリップ修正と同様に"切り貼り"で行なう。変化しないという意味で信頼性が高いため,中間フォーマットとしているワークフロー製品が多くなってきた。

■1bitTIFFを使用したさまざまな処理

1bitTIFFはデジタルフィルムと言うことができるが,アナログフィルムと最も違うのは,刷版焼付けで面付けごとの調整(焼き度や位置)が出来ないことと,デー'容量が大'いことである。 データ容量については,次世代の圧縮方式であるDR方式のISO化が進められており,これが利用できるようになると現在主流のG4圧縮に比べてさらの1/4〜1/5,元データに対して1/20近くまでデータ圧縮できると言われている。DR方式の規格化に先行する形で開発されたのがシンボリック・コントロール/cubic-D(キュービックD)であり,東レ/PRIAM(プリアム)ワークフローはこの技術を使用している。

富士フイルムのCelebraNT Plusでは単ページの低解像度EPSとCTP出力用の1bitTIFFを生成する,そして低解像度EPSを用いてMACのDoTop面付けソフトで指示データを作成,OPIのようにデータを差換えて面付けされてCTP出力される。この時に低解像プリンタへの出力を行なうのであれば,プリンタ用の1bitまたは8bitTIFFを同時に生成しておくことができる。また,DoTopは単ページPDFを面付けする新バージョンも予定されている。

AGFAのPrintDriveシリーズ2も,ジョブ貯蔵庫としてPIPから1bitTIFFを受取り,面付け,一部素材のみのRIP処理データを受け取っての差換え訂正などを行なうことができる。
ジーティービー/Bit-Troughシリーズは1bitTIFFからプレビュー画像を作成するPreviewMaker,デスクリーニングによりプリンタ用の低解像画像を作成するProofMaker,ページ面付け・大貼りのPlatePlanner,その他に修正,検版,CIP3リンクなど一連のツールがシリーズ化されている。Bit-Troughはどこのワークフロー製品で生成された1bitTIFFでも扱えるオープンなシステムであり,データ容量の欠点については,前述のcubic-Dで高圧縮されたデータをそのまま読み書きできるような開発も進んでいる。

■まとめ

これから主流になるPDFワークフローでも,面付け前データをフォントエンベットしておくのか,アウトラインにまですべきか,いやRIPを完了してデジタルフィルムである1bitTIFFにまでしてしまうのか。出力結果が予測可能であるか,訂正処理はやり易いのか,訂正をデータベースに反映する必要があるのか,出力データを印刷工場のCTPで主力するが,データ容量や大貼りはどうするのか,印刷機の条件やインキフローへの対応から加減焼きが必要なのか,などさまざまな課題を考慮して自社のCTPワークフローを構築して頂きたい。

■出展:JAGATinfo別冊機材インデックス2001-2002より

2001/09/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会