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2002:オフセット平版印刷の動向

■統合印刷システムの現状

今の印刷機は,各種機能を果たすコンピュータシステムがネットワークでつながり,データベースを有効に使って熟練作業の軽減と作業の効率化を実現する「統合印刷システム」になっている。

統合印刷システムでは印刷機集中制御装置を中心に,生産管理装置,色管理装置,プリプレスのコンピュータ,さらにはメーカー等のサービスセンターのコンピュータが繋がっている。
生産管理装置は,複数の印刷機をコントロールする群管理コンピュータで,営業が入力した受注伝票の情報の中から仕事1点毎の情報と印刷機への割振りおよびスケジューリング情報を各機械の印刷機集中制御装置に送る。

印刷準備作業において,インキ量調整は印刷機集中制御装置に組み込まれたエキスパートソフトウエアとプリプレスで作られたデータを受けとって処理するCIP3コンバータで自動的に調整する。CTPシステムで作られた刷版は刷版自動装着装置で印刷機に取り付けられ,見当,印圧,フィーダ,デリバリ,ローラ等の各部分の調整は印刷機集中制御装置からリモコンで行われる。

本刷り中,色調管理装置は印刷物を読み取って目標値と計測結果との差を求め,絵柄の面積率データと印刷機のインキ応答特性等を加味してインキ量補正データを演算,その結果を集中制御装置に送信してインキ供給量を自動補正する。

印刷機集中制御装置は,印刷機の印刷状態,エラー状態を常にモニタしており,それを生産管理装置に表示するとともに,電気的に検地可能な故障やトラブルで印刷機が停止したときには故障診断支援装置にその情報を送る。そこで調べられた原因と対処の手順,内容は印刷機集中制御装置のモニター画面上に示される。

印刷機械の状況を示すデータはメーカーのホストコンピュータに刻々送られ,機械停止のような異常情報を受け取ると,状況分析と履歴データのモニタリングで原因究明をして対策指示が出される。

印刷終了後,生産管理装置は各機械の稼動記録と仕事毎の機械の設定状況,印刷状態のデータをデータベース化して保管し,稼動分析あるいはリピートデータとして次の生産計画や機械設定に使う。

オペレータは印刷の開始,終了時に「開始」「終了」ボタンを押すが,この情報は生産管理装置に送られるので,この情報が営業部門のコンピュータに伝わるようにしておけば,営業担当者はいつでも自分の仕事の状況を知ることができる。

■印刷機をプリンターのように使う時代

プリプレス工程がフルデジタル化されてCTP(Computer to plate)が普及し,さらに以上のような統合印刷システムが確立されることによって,印刷機は「プリンターのように使うこと」が求められるようになった。それは,色修正などはすべてプリプレス側で処理した上で,CTPで刷版を出力し,印刷機側では色は直さないで,常に同じコンディションを保ち印刷するということである。

そのためには,プリプレスのフルデジタル化,カラーマネージメントシステムの完成と運用,さらに常に一定の印刷再現ができるように印刷機をチューニングしておくことが不可欠である。そして,この1年,印刷機をカラーマネジメントするためのシステムがいろいろ出されてきた。

■枚葉印刷機の強みは高付加価値化への対応力

印刷価格の下落とオンデマンド印刷および小ロット対応が進むオフ輪との競合のなかで,さまざまな高付加価値化に対応できる点が枚葉印刷機の強みである。欧米では,10年以上前からプロセス4色印刷はオフ輪で,5色以上やニス・エンボス・箔押しなど高付加価値の印刷は枚葉オフセット機で,といった区分けがなされている。豪華な表面加工でデザインも良い表紙で,本文はザラ紙というペーパーバックスはこの典型である。

印刷における高付加価値化では高品位印刷(高精細印刷等)と表面加工(コーティング)が考えられるが,日本では前者よりも後者の方により現実的な高付加価値化の期待がかかる。そして,コストと品質安定化の点からインラインコーティングシステムが機材メーカー各社から出されている。

また,環境問題への対応から利用が急増しているマイクロフルートの印刷は,「板紙の印刷」→「合紙」という工程が不要なので枚葉印刷業界が参入がしやすい高付加価値市場である。

■デジタル印刷機と枚葉印刷機の攻防

PAGE2001でのデジタル印刷機(物理的に画像を固定した版を使わない方式)の傾向として,設備の低価格化,高速化,耐久性向上による大量処理性能の向上,ランニングコスト低減化,高品質化,印刷可能な用紙の多様化が見られた。

3〜4年前から,デジタル印刷機は,ラベル・シールなどの分野に対象市場を広げてきた。その一方で,ワンtoワン マーケティングなど,ページバリアブル機能を生かす印刷物市場に狙いを絞るものも出てきた。

多数の顧客を対象としたワンtoワン マーケティングの場合,印刷物制作側の体制よりも,データの内容,データ分析,発信するメッセージの内容に関して,顧客の体制と能力が整っていなければ期待する成果は上げられない。例えばブティックのように,顧客の数が限られ情報を発信する側が顧客の好みなどの情報を既に持っている場合には,上記のような体制は整っているといえる。必要なシステムも大掛かりにならないので取り組みやすい。

しかし,こうしたケースでは大きなビジネスになりにくい。従って,従来の一般的な枚葉印刷分野にデジタル印刷機の当面の市場を求めることが,印刷会社側にとってもベンダーにとっても良さそうだと考えられるようになった。

■攻防の焦点

デジタル印刷機が既存の印刷物市場を狙う時にクリアしなければならない点は,1枚当たりコストの低減と印刷用紙の制約を解消することである。
印刷会社の受注内容は多様である。印刷枚数ひとつとっても,数百枚から数千枚と幅が広く,200枚,300枚以下だと既存の料金体系に合わないというのでは非常に使いにくい。その場合には,稼働率が低くてもペイできる低価格の設備でなければならない。一方,CTPとメカトロ化した印刷機を組み合わせたシステムによって,従来の印刷システムでの小ロット印刷の1枚当たり単価はかなり下がってきている。

以上のような背景のなか,小ロットのモノクロページもの市場を狙って,高耐久性をもたせ,1枚当たりコストを下げたモノクロデジタル印刷機の発売が相次ぎ,販売実績も好調のようである。

設楽印刷機材の「CleverPressMax」,日立工機のオンデマンド出力機「DDP70」,モトヤの普通紙プリンタ「PressCom70」,東レ/シンボリック・コントロール(SCI)のオンデマンド印刷システム「TRALIS」(トレリス)等がそれである。プリントスピードは70枚/分以上,中綴じや表紙挿入という製本機能を持ち,耐用枚数も2000万枚以上,ランニングコストはA4で2円以下,設備価格も1千万円以下である。

カラー分野では,富士ゼロックスの「Color DocuTech 60」が,画質,見当性,紙の選択幅の拡大あるいはA3フルトンボ出力ができるといった点で従来のオフセット印刷市場を狙うカラーデジタル印刷機として登場している。

つい最近,印刷用紙選択にほとんど制約がなく,1枚当りプリント単価の低下を可能にするというトナーの製造方法の発表もあって,その成り行きも注目される。

■出展:JAGATinfo別冊機材インデックス2001-2002より

2001/10/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会