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2002:フォーム・その他印刷の動向

■多様化するフォーム印刷市場と技術

フォーム印刷分野では,従来の連続伝票印刷市場は縮小してきているが,世の中のさまざまな動きの中で多様化する製品群を市場として取り込み,フォーム印刷業界全体は新しい成長軌道に乗り始めた。1999年におけるフォーム印刷用紙の出荷量前年比は7.4%減と大幅な減少になっているが,フォーム印刷業界の売上前年比は2.5%と堅実な伸びを示したことがそれを示している。

新しい市場とは,例えばバリアブルデータ印刷機能を生かした金銭関係の郵便物,本人がサインと捺印だけすれば直ぐに投函できるDMのデータ処理から印刷,発送までのアウトソーシング事業である。多色刷りで帳票を挟み込んだ形の巻き折り形式のDMは,従来は枚葉印刷の市場であった。圧着ハガキ,隠蔽目的のシール,紙カードを連続紙に貼りこんだ形式の簡易カード,示温インキを使った領収書や預り証のようなセキュリティ印刷物,そしてサプライ商品としてのICカードや無接触発信認識票(RFID:Radio Frequency Identification)等もフォーム業界の市場である。

これらの幅広い市場を取り込むために,諸材料から印刷機械までさまざまな開発がなされてきた。BF印刷機で見ると,どのユニットにもオフセットの他,フレキソ,シルクスクリーン,箔押しの印刷装置を挿入でき,紙・カートンボード,プラスチックフィルム・アルミホイル・粘着ラベルなど広範な材料に対応できるとともに,加工ユニットとしてダイカット,エンボス,スリッター,シーターなどが用意されるようになった。

各ユニットは単独モーターで駆動されたシャフトレス方式で,オフセット,フレキソの印刷ユニット,各種加工装置の選択と配置が自由になっていて,ユニットの選択により,商業印刷物,ダイレクトメール,ラベル,軟包装などさまざまな製品を作り出すことができる。DM等へのバリアブルデータ印刷は,高速のデジタル印刷システムをインラインで繋いで使うことになる。

■注目したいフレキソ印刷の技術革新

ずいぶん長い間,フレキソ印刷のシェアは拡大すると言われてきた。欧米ではパッケージ印刷の主体がフレキソ印刷になるといったように実際に拡大してきているが,日本では,例えばインキ使用量ベースで見ると,そのシェアは過去20年間ほぼ横ばいあるいは若干縮小で推移している。日本の顧客の品質に対する過剰とも言える要求の高さが欧米との差になっているように思われる。

フレキソ印刷の品質,コスト,納期を平版印刷,グラビア印刷と対比してみると,コストについては従来から強みを持っていた。装置価格が安くヤレが少ないからである。最近関心が高まってきた環境対応面では,水性インキやUVインキの実用性において,グラビア印刷に対して優位性が認められてきている。

フレキソ印刷における大きな課題はその品質で,従来のフレキソ印刷物の品質は平版印刷物やグラビア印刷物に比べて劣っていた。しかしながら,1995年にフォトポリマータイプのデジタルプレート(CTP)が開発,導入されるようになって,他の版式に対する品質ギャップは小さくなった。CTPは,今までのフレキソ印刷で実現出来なかったハイライトの再現とグラデーションの再現,さらに一定品質での印刷を可能にした。

フレキソ印刷のCTPシステムとして先行したのはバルコ/デュポンのCDIである。これは,レーザーアブレーションマスクシステムで,レーザーでの露光の後で露光,洗い出し処理をするものである。一方,デュポンは洗い出しの替わりに剥離処理をするFASTを発表した。Drupa2000では,バスフ,バルコ,デュポン,クレオサイテックス,マックダ―ミッド等がフレキソ用CTPを出し,旭化成工業はシームレススリーブタイプのCTP(CTSS)を発表した。その後,バスフ社は版を直接イメージングする新技術を発表した。

現在,フレキソCTPは全世界で約400台稼動しているが,この実用化と普及で,フレキソ印刷物の品質は各段に向上した。IoPP(Institute of Packaging Professionals)が毎年選定し表彰するAmeriStar Packaging 賞の食品部門で,フレキソ印刷の製品が最優秀賞に選ばれた。

■競争の焦点は生産スピード向上へ

フレキソ印刷の次の課題は,生産スピードを向上させるところにきているが,この面でもさまざまな技術的改良による改善が進んでいる。
印刷工程では,シリンダ―を自動的に取りつける方式やスリーブ方式の採用で仕事の切り替え時間がスピードアップされた。これらの技術と自動洗浄装置を組み合わせると,印刷機付人員それぞれが,いろいろな作業を同時に行なうことができ作業効率が非常に高まる。また,10〜12ユニットの印刷機を使って,5・6ユニットで印刷している間に,残りの5・6ユニットのセットアップ゚をすることもできるようになってきた。ビデオによる見当コントロール等の改良も,印刷スピード向上に寄与している。

デザインやプリプレスの分野では,デジタルワークフローへの移行が進み,著しいスピードアップが図られつつある。プリプレスのデジタル化に伴って,校正の方法もデジタルクロマリンのようなインキジェット方式の連続調の校正システムがアナログ校正に置き換わり始めて,生産スピード向上に寄与しつつある。

■生産時間短縮が進むグラビア印刷

フレキソ印刷が伸びたからといって,グラビア印刷の出番がなくなるということはない。百万部以上といった超大ロットの出版印刷市場では,やはりグラビアは強くさまざまな技術改良で生産性向上は着実に進んでいる。

パッケージのグラビア印刷分野では,印刷スピードが1980年代には160mpmが最大限であったが,今日では400mpmも現実的な目標値として視野に入ってきている。パッケージグラビア印刷でも,小ロット化は顕著で,従来60000通し程度あったものが現在では20000から40000通しというように小ロット化してきている。したがって,生産性面では準備時間の短縮が大きな課題だが,数年前に3〜4時間掛かっていたものがいまでは1時間未満になりさらに短縮が可能と見られている。

グラビア印刷の独壇場は8色以上の多色印刷で,最近では10ユニット,12ユニットという印刷機が一般的になってきた。最も進んだ機械では,印刷スピードが400mpm,12ユニットでさまざまな後加工をインライン化している。
今後におけるひとつの大きな課題は,版替えの迅速化だが,方向としては自動化とスリーブタイプシリンダーの採用という2つの方向がある。

■特殊印刷で独自の位置を保つスクリーン印刷

特殊印刷は,それほど目立ってはいないが雑誌,POP,ポスター,DM分野での利用が徐々に増えている。例えば雑誌では,特殊印刷,特殊加工の表紙や特殊広告企画あるいは付録の内容によって雑誌の売れ行きや広告効果に明らかに差が出るからである。

特殊印刷の生産方式として,近年オフセット印刷化された分野もあるが,スクリーン印刷によるさまざまな機能性インキの印刷がやはり主力である。的を得た企画の中で使えば付加価値印刷と言うにふさわしい効果が期待でき,もっと広く利用していくよう顧客への提案もしていくべきである。

■出展:JAGATinfo別冊機材インデックス2001-2002より

2001/10/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会