print01の会場で9月8日に、PIAレイ・ローパ会長、チーフエコノミストのロニー・デービス氏と懇談の機会を得た。日本側のミーティング参加者は、JFPI専務理事畠山惇氏、凸版印刷広村俊悟氏と私であった。最近の米国印刷業界の景況や、 Vision21を発表した後のPIAの施策を伺うことができた。示唆に富んだ懇談であったので、その概要を報告する。
・ 米国の印刷産業は、十分に成熟した。PIAとしてデータを分析中だが、1993年から2000年にいたる7年間で、企業数は5万4千社から4万7千社に、12.5%も減った。ただし「1-5人」では25%減であったが、「100人以上」では18%増であった。ただし、PIAのメンバー数は安定しており,2%の減であった。・ 「1-5人」の区分で企業数が減ったのは、顧客サイドで印刷技術(竹原注:DTP)の導入が進み、新規参入に費用がかかるようになり、新企業設立の動きが停滞したからだと推定している。「1-5人」区分で、生き残り成長しつづけている企業のデータを集積中だ。
・ 1993-2000の期間で見ると、企業数は12.5%も減ったが(竹原注<以下同様>:年率−1.89%)、全体の出荷額は45%(注:年率+5.45%)も伸びている。長期的に見ると、企業数は減るが、生き残った企業が頑張り、全体としては繁栄を続けるという構図になっている。
・ 日本と同じように(写植と製版の?)業界再編があり「コミュニケーション・ソリューション・プロバイダcommunication solution provider 」といっている。
・ 米国の印刷業の25%が利益をあげている。 成長している企業に共通していることは、徹底的で,しっかりとした市場調査をし、経営戦略を見直したところである。新しい技術を導入し,使いこなすことに挑戦している企業だ。
PIAは Vision21でSCMを推奨したが、米国経済の停滞もあり、あまり進展していないようだ。PIAが憂慮しているのは、紙の安定供給ということだ。世界的に経済が停滞し印刷の景況も停滞しているときには問題は起きない。製紙メーカーはリストラをしたり,製紙工場を閉鎖したりして対応するからである。 しかし1995年(注:92-93年ではなかったか?)急に印刷の需要が上向いたときに、紙の価格が急騰し、紙の確保が困難な状況に陥ったことがある。この先10年間に、日本、米国、欧州と景況が回復したときに紙の安定供給が確保できるのかということだ。
そこで、製紙業者から印刷業者にいたる紙の流通経路と流通量と在庫調査をした。需要予測に基づいて紙を生産し,需要の変動にどのように対処したら紙の安定供給が確保できるのかを研究するためだ。この調査研究に欧州の印刷・製紙業界も関心を示してくれた。
この項続く
2001/10/07 00:00:00