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2002:製本・後加工の動向

■行き渡ったコンピュータコントロール

製本加工工程には紙揃えから梱包,発送に至るまで数多くの工程がある。この20年ほどの間に,大量生産向けのライン化とともに各工程の機械設備それぞれで,安全性確保,重労働解消そして準備作業時間短縮等のための機械化が進められ,ここ数年はそれらをコンピュータコントロールに置き換えながらさらに細部の脱技能化,自動化が図られて来た。

現在,製本の各工程の機械設備で手作業が残っている部分は,例えば紙揃え機の給排紙,断裁機上での刷り本の回転,折丁結束時の板の挿入と丁合い時の除去,そして丁合い機ボックスへの刷り本搭載等で,いずれも,費用対効果の面で自動化が見送られているものである。したがって,それらはライン化に向う中で解消されていくと思われる。

■普及の兆しが見えるPURでの製本

製本工程において注目される新しい技術のひとつとして,湿気反応硬化型で空気中の水分によって反応が進み硬化するPUR(Polly Urethane Reactive)での製本がある。製本の接着剤は,製本の高速化にマッチし比較的安価で取り扱い・保管が容易なEVA(エチレン酢ビ)系のホットメルトが定着していたが,経時劣化や寒冷・高温に対する耐久性,見開き性に不満が残っていた。

PURは,EVAホットメルトにない特長を有しているが,湿気反応型であるためオープン型ロール方式の糊ポットでは反応が進んで増粘・固着するため管理が大変であり,さらに単行本で2〜3円/冊ほど高いといった問題があって普及しなかった。しかし,最近,表紙にノズルで塗布することでの管理面の改善や糊を薄く塗布して使用量を押さえてコストを下げるシステムが開発され普及の兆しが見えてきた。

■出版物に価値を与える製本技術

最近,若者あるいは女性向けの雑誌では付録の添付や広告ページへの現物添付が増加している。それらが雑誌の販売部数を上げたり広告効果を上げるのに非常に有効だからである。製本技術が出版物の価値を高めている好例である。

このようなニーズに対応するために,他の本や印刷物,サンプル,CD-ROMなどを投込みあるいは糊付けして印刷物の多様な組み合わせでの発送セットを作ることができる中綴じ製本機が出されている。これはフィルムラピングと宛名貼りをして発送準備を行なう設備と繋げることもできる。

セレクティブバインディング機能とインクジェットプリンティングを組み合わせた製本システムは,通販カタログやDMを個々の消費者毎あるいは地域毎に編集したり,購読者宛の個別メッセージの印刷やオーダーシート挿入などをすることでより付加価値のある印刷メディアにすることができる。

また,デジタル印刷システムにインラインの製本機能を持たせることで,内容が異なる本を1冊からでも連続的に印刷,製本するオンデマンドでの生産技術は,まさに消費者に受け入れられる価格,納期で1冊の本でも作って提供できる。それ以上に製品の小ロット化,カスタマイズ化あるいは超短納期での印刷物の生産加工など,幅広い範囲でその威力を発揮する。

■ますます大きな課題になる資源環境問題への対応

資源環境問題への対応が,さまざまな法規制に基づき具体的な形で迫られる中で,紙の再生紙化のために接着剤の改良・開発,分離方法が実用化されてきた。接着剤に関しては,先述のPUR接着剤は皮膜そのものが硬く破砕されにくく,例え微小のものが混入しても最終フィルタ(加熱状態)で溶融せず除去が可能でほぼ完全なリサイクル性がある。

PL法に対する認識も定着してきており,針金によるケガ防止対策として逆中綴じの採用・非金具化による安全性と無公害を目的としたカレンダーの熱圧着方式も増加してきている。
また,発想を全く変えて針金綴じに変わる糊付けによる中綴じ加工を可能にし,折り,綴じ,トリミングの一貫作業で刷り本から製本までを仕上げる設備も登場した。従来の針金綴じ製本同様,表紙,本文が別紙の物を取り込むことができるし,中身に,両端折り,変形折りなどを取り込むことも可能である。

■脱VOC,インライン化が進むコーティング

紫外線硬化型(UV)インキやUVコーティングがVOC削減の観点から改めて注目されている。また,枚葉印刷機のオフ輪に対する特長を生かすため,インラインコーティングも急増している。 このような中で,インキメーカー各社から出され始めたのがハイブリッドインキである。このインキは,油性インキとUVインキの両者の特長を生かしたインキで,コーティングに関してはUVニスとの組み合わせで,インラインコーティングでUVインキ+UVニスに匹敵する高光沢加工,高耐摩擦性の印刷物を低コストで生産することを可能にする。このインキのもうひとつの特長は,UVインキでは不可欠であった専用のインキロ―ラ,ブランケットあるいは洗い油が不要であることである。

インラインコーティングについては,コーティング技術や材料の改良によって,印刷速度を落とさずに超光沢,パール調,メタリック調等の従来にない高品位印刷物もできるようになってきた。また,環境対応の視点から,水性コーティング材の製品群の幅もひろがってきている。

資源環境問題への対応の必要性から,包装資材に関しても変化が見られる。再資源化が容易な紙容器,再資源化義務対象外の液体容器,あるいは分離可能な容器としてのバックインカートン,紙缶,カップ類など環境をキーワードとした商品化が活発に行なわれている。

■出展:JAGATinfo別冊機材インデックス2001-2002より

2001/10/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会