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新技術はオモチャか? ブロードバンドに本気なのは誰だ!

新技術に関連したニュースを扱う立場のところは、この媒体自身も含めてニュースの垂れ流しに終わらずに、ニュースの羅列だけでは欠落しがちな重要な視点を補完することも合わせて行わなければならない。ニュースというのは、今日儲かりそうなことをいっていたところが、明日潰れてもそれを客観的に伝えるだけだが、事実だけでなく、そうなった理由も人は求めている。

最近はブロードバンドに関するニュースが多くなった。ブロードバンドが普及すればストリーミングが技術的にもサービス的にも重要だ、という話が多い。それは当然として、この機運に便乗した安易なジャーナリズムには気をつけなければならない。そういったジャーナリズムの側に悪意があるというわけではなく、表層的ニュースによって思考が撹乱されないように、という意味である。

1980年代中頃からのニューメディアの時の教訓は、紙なりTVでも既存メディア自身の商売のネタとしてニューメディアを扱うだけで、既存ジャーナリズムそのものが自分自身でニューメディアを本気でやろうとしていなかったことである。つまり当人がニューメディアを避けているものを人に薦めるような態度では信ずるわけにはいかない。

結局ニューメディアといわれた中で次世代に引継がれたのは、ゲームとパソコン通信であり、両者とも既存メディアとは別のところから出てきた人たちがパイオニアとなり、それに既存メディアも後から次第に乗っていった。またこれらは郵政省や通産省が音頭をとったものではなかったし、電気メーカーが担ぎ出したものでもなかった。

これらはゲームクリエーターやパソコン通信の書き込みを行った人達がボトムアップで盛りたてたメディアで、企業の論理から作ったビジネスモデルではない。今ブロードバンドを下から盛りたてていくコンテンツを作るのは誰なのかが見えないのではないか。

ニュースを見て思うのは、実現容易な部分だけが先に進んで、アンバランスを拡大していることである。高速回線はADSLのようにルータだけ用意すればよいようなものは2年で普及できるだろうが、そこでのコンテンツのサービスはISPが勝手に開発できるようなものではない。何をサービスすればよいのかは2年では見えてこないだろう。

その間に回線業者はシェア争いに明け暮れて、料金引き下げ合戦になって、それ以上の投資能力はなくなってしまうかもしれない。ブロードバンドにおいても当事者の動向だけをみていると、共倒れ・撤退のニュースが目に付く時がくるかもしれない。

■出典:通信&メディア研究会 会報VEHICLE 通巻149号 より

2001/11/20 00:00:00


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