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Webのユーザビリティ向上を!

 Webサイトの操作性に対する関心が高まっている。企業がユーザとの直接のコミュニケーションのできるWebサイトは,単なる宣伝サイトから,実際に売上につながる営業ツールとして位置付けられ,特にECサイトでは操作性の悪さは売上に深刻な影響を与える。買うつもりでいても,操作が面倒であればユーザはあっさりとあきらめてしまう。このようなビジネス機会の損失を防ぐ一つの手段がユーザビリティ(Webサイトの使い勝手)の向上である。

 ウェブユーザビリティに関して解説した書籍も目立つ。しかし,まだほとんどがアメリカのサイトを事例として解説した翻訳本である。その中で,株式会社ビービットは日本を対象に「ウェブ・ユーザビリティルールブック 顧客を増やすサイト設計」(インプレス発行)という本を執筆した。日本のサイトを例にあげ,使いやすくて質の高いウェブサイト構築について解説している。

 ここでは,「ウェブ・ユーザビリティルールブック 」の本文を執筆したビービットの武井由紀子氏に,ビービットのサービス概要とユーザビリティの重要性について伺った。


ビービットは元アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)のメンバーで設立されたWeb構築のコンサルティング会社である。ウエブサイトのユーザ満足度を高めることにより,インターネット事業成功を目的としたインターネット・コンサルティングを行っている。

ビービットの武井氏はユーザビリティの重要性を強調する。使いにくいサイトは,多大な機会損失をひきおこして販売力の低下をまねき,ストレスによるブランド力を悪化させる。最悪なことには,競合サイトへの乗り換えをうながしてしまう。しかし,これは取り返しのつく問題であるという。きちんとユーザビリティを改善することにより,売上の向上やリピート率の増加,競争優位の確立が期待できるのである。ビービットでは,ユーザビリティの5大構成要素として,(1)学習しやすさ,(2)効率性,(3)記憶しやすさ,(4)間違いにくさ,(5)主観的満足度をあげている。

ビービットはユーザにとってストレスのないウェブサイトを構築するために,(1)ユーザ満足度向上サービス,(2)サイト構築,(3)評価サービスを提供している。ユーザ満足度向上サービスでは,既存のウェブサイトをユーザビリティ面と戦略面から分析することで現状の問題点を把握し,クライアントに改善案を提示する。この案をもとに,クライアントとウェブサイトの再設計を進めていく。要望があれば,ユーザビリティの評価だけを行う(3)評価サービスを利用すること可能である。

ユーザビリティの評価には,「ヒューリスティック評価」と「ユーザビリティテスト」という2種類の方法が用いられる。ヒューリスティック評価では,業界のスタンダードとどれくらい乖離しているかなど,ビービット独自の評価基準をもとに専門スタッフがサイトを評価する。1〜3週間で,広く浅く問題点を見つけ出す。ユーザビリティテストは,ターゲットユーザに対して課題を与え,それぞれの課題遂行時に発生する問題を専門家が客観的に観察し,構造上の問題など根深い問題を洗い出す。問題点を明らかにしたら,事業戦略にもとづいたコンセプトをビービット独自の方法論で定義し,ウェブサイト設計を進めていく。

実績としては,三井住友銀行や日本経済新聞社などに対してウェブサイト評価サービスが採用され,NTTドコモの「Docomo MAGIC WORLD」,電通リサーチの「電通Rネット」ではユーザ満足度向上サービスを提供している。

今では,他のWeb制作プロダクションもユーザビリティ改善に重点を置き始めている。キノトロープはユーザビリティの評価サービスを提供する新会社「オーセンティア」を11月1日に設立すると発表した。 従来、Webサイト構築サービスの一環として提供していたユーザビリティ評価を,独立したサービスとして事業展開していく。

使いさすさの評価や改善に費用をかけることに対し,多くの企業はまだ抵抗を感じていると武井氏は語る。実際に,現在引き合いのある案件は,資金力のある大手企業のコーポレイトサイトの改善が多いという。Webの表現はまだ未熟な部分は多いものの,数年かけてナビゲーションや階層構造など利用しやすい形が見え始めている点もある。ユーザとの双方向のコミュニケーションができるという初心に戻り,本当に使いやすいサイトは何か改めて考えてみる時期にきているのかもしれない。

株式会社ビービット http://www.bebit.co.jp/

◆ビービットの武井由紀子氏が講演されます。
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2001/10/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会