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PDFフローにおけるプルーフの現状

PDFの作成方法とバージョン

現在は作り方に大きく3つ,またPDFのバージョンでも大きく3つに分けられる。印刷に使うものは,PDF1.3以降のものである。バージョンは文書情報のところで出てくる。 作り方には,まずAcrobatのパッケージの中に入っているAcrobat Distillerを使って作る方法がある。

二つ目はAdobe PDF Libraryを使って作る方法である。これはPhotoshop6やIllustrator9,InDesignにあるアプリケーションから直接,PSを書かずにPDFを書くというコマンドで作る方法で,そのPDFはDistillerがインストールされていなくても作成可能である。

三つ目はNormalizerで作る方法である。これはDistillerとかAcrtobatがなくても,フローの中で,例えばPSを送ると自動的にPDFが生成されて次工程に流れるような,プリプレスベンダーが提案しているワークフローの中で作られるものである。このPDFは,DistillerでもPDF Libraryでもなく,Normalizerと呼ばれるものになっている。

NormalizerはPDF Libraryがコアになっているが,ベンダのカスタマイズがされているDistillerのようなものである。
PDFのバージョンは,日本語版に限定すると現在1.2,1.3,1.4が存在する。1.2はAcrobat3.0互換で作られたもので,フォントのエンベッドができないものであった。PDF1.3が2年ほど前に発売されたAcrobat4.0で,印刷業界で使えるのではといわれ始めたバージョンである。フォントをエンベッドできることが印刷業界では一番の話題だったと記憶している。

さらにAdobe PDF Libraryで作ったPDFにも当然PDFのバージョンが存在する。ちなみにInDesignはPDF1.3までをサポートし,Illustrator9,Photoshop6,Acrobat5.0がサポートしているのはPDF1.4までである。PDF1.4はレイヤ構造をもてるだけでなく,透明の透かし,いわゆる背景が透明のPDFを作ることが可能な点が印刷では一番の特徴になるだろう。ただし,1.4をネイティブに処理できるRIPがないので,Web上で見ることはできるが,その機能を印刷に使うことがなかなか難しい。Indesignは1.3なので透明の部分は白になってしまう。

PDFにはこれだけの種類があるということは押さえていないといけない。クライアントからこのPDFが印刷に使えるかといわれたとき,即座に対応できなければ後でクレームとなってしまうからである。

遠隔地校正が可能に

両社が一緒にやっているワークフローは,制作側(ティ・ピー・シー)でDTPデータを作りそれをPDF化して,StudioProofという仕組みを使ってRIPを通して一度プリントアウトして色の確認をする。

そのデータをHTTPやFTP,メールで遠藤印刷に送る。ここでPDFファイルが遠藤印刷に移る。遠藤印刷でも,同じプリンタの仕組み,ICCプロファイルも同じものをもっているので1回プリントアウトする。これによって,出力見本のやり取りが必要なくなる。ここで確認したものについてPS版を出力して印刷機に掛けることで印刷物を作成している。

ここでRIPにIPアドレスを振って,制作から印刷のRIPが見える環境を作っておけばリモートプルーフができることになる。または,制作側のMacintoshにホットフォルダを設定しておき,データをそこに入れれば,遠藤印刷のプリンタを使ってティ・ピー・シーが印刷することができる。

DTPデータというところからPDFでやっても構わないし,DistillerでPDFを作ればスタートから始まる。ベンダーが用意しているものなら,Normalizerで自動的にPDFを作る。そして網点生成して出力デバイスを選ぶ。そのデータをネットワークなりで遠隔地へ送り,出力コントローラのところでデータの種類は判断させる。ラスタライズされた面付け情報,つまりCMYKになったデータを遠くの印刷会社に渡せばそのままCTPで板ができる。

ティ・ピー・シーでは自分のところで板を出しているので,インクジェットプリンタで一度出して確認した後,CTPを出すことになる。Windowsなどのデータについては,フロントエンド側でPDFを作っている。

PDFファイルは作った人が責任をもつ

PDFファイルは使えるのか使えないのかとよく聞かれるが,PDFは決して万能ではない。何にでも使えるものではない。しかしPDFの特性を生かせる仕事がある。逆にいえば,PDFは仕事を選ぶということである。PDFを使ったいいところをつまんで使うということもある。

また,Acrobatを買ってこれでPDFワークフローができたという話にはならない。Acrobatでやる場合は自己責任のワークフローになるので,当然プラグインなども用意して出力するための準備をする必要がある。いわゆる「Do it yourselfのPDF」になる。

アドビはPDFワークフローの提案はしていないので,印刷業界側でAcrobatを使ってどう組み合わせるかという話になる。最大のポイントはネットワークと組み合わせることによって,PDFは最大の効果が出るのではないかということである。

校正をするのは,PDFファイルをプリントアウトしてFAXで送っても構わないし,全部ネットワークでやる必要もない。まずどのPDFファイルを先方に届けたいのかを決めて,それを見てもらってプリントアウトし,赤を入れて従来の校正に回すやり方もあるだろう。ネットワークを使ってPDFで校正をやり取りする仕組みを作れば,校正を担当営業が届けなくても先方に届くので,それにメリットを感じれば,そこを使えばいいだろう。どこまでをPDFでやるのかが重要な鍵である。

全部やるのか,ある部分だけをやるのか。それが制作者側もオペレータも営業もPDFをやることによって負担になるような使い方では,PDFは使えないという話になる。PDFは,こう使えという決め事は誰もいっていないと思う。個々の会社の中で,個々の仕事の中で,これはPDFを使ったら合理的にできるかもしれないというところから初めてPDFの良さが出てくるのではないか。

遠藤印刷で印刷をする場合は,ティ・ピー・シーで完全にPDFを作る。PDFを作るということは,そのPDFから出力した結果については基本的には作った側で責任をもつということになる。面付けなど,若干の修正については,プラグインを使ってやってもらうこともあるが,お互いのスキルがわかっていないとどこまで頼んでいいかわからない。PDFファイルは作った人が責任をもつこと。PDFファイルをもらったら,基本的にはそのまま印刷するというのが大原則ではないか。

PDFで頭から最後までやるのもPDFワークフローだが,仕事の中でPDFを使ったら効率が上がる,非常に便利になるという部分だけを取り入れても,広義の意味ではPDFワークフローといえるのではないか。(テキスト&グラフィックス研究会)

■出典:JAGATinfo 2001年10月号

2001/10/26 00:00:00


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