コンピュータシステムの不具合あるいは,サイトの表示内容についての責任を問われた場合に,サイトの開設者としては,自分の責任を限定しておきたいのは当然である。 一切責任を負わないという決め方をしているところも多い。
例えば,公序良俗違反だから無効だとか,BtoCの場合は消費者契約法に違反して無効だということが考えられるので,事業者間の場合は比較的一切責任を負わないということもあり得るだろう。ただし,サイトの利用者に安心して入ってもらう,活用してもらうという営業的な視点も含めて考えると,一切責任を負わないというのはやめておいたほうがいいと思うので,限度額をつけるというようなやり方を提案している。
サイトの開設者として,サイトを通じてやりとりされている情報の内容の正確性を確保する義務があるのだろうか。契約で何も決めていなければ,ほとんどの場合,情報内容の正確性を確保する義務はないと言っていいと思う。新聞社が新聞に載せた広告の内容についてクレームをつけられて裁判になった例で,一定の場合には情報内容の確認義務もあるという裁判例もあるが,それは全国紙の新聞社だからであって,普通の調達サイトの場合,そこまでの義務は多分発生してこないだろう。しかし,契約ではっきり決めておいたほうがいい。
知的財産権の関係では,調達サイト用のコンピュータシステムの開発を頼んで納品してもらった場合,コンピュータプログラムについての著作権はどうなるのかというと,何も契約で決めずにいると,たとえ成果物として納品してもらっても,プログラムを作成したほうに著作権は留保されてしまう。必ず,契約書の中に,発注したほうに譲渡してもらう。譲渡が無理なら使用許諾をしてもらうことを書いておく必要がある。
ただ書くだけでは足りなくて,バージョンアップなどの関係で翻案権というものがある。それは,個別に書いておかなければ譲渡されないということになっている。したがって,「本システムに関する一切の権利を譲渡する」というような書き方では足りず,「翻案権も譲渡される」というふうに個別に明示しておかないとだめである。ここの部分は強行法規なので,契約では左右できない。必ず個別に明示する必要がある。
さらに,著作権法上,譲渡できないというふうにされている権利もある。これは,契約で譲渡すると定めても無効である。例えば,コンピュータプログラムの公表に関する権利,あるいは同一性保持権,内容の改変など,バージョンアップも関係してくる。そういったものをコントロールする権利,どうするか決める権利が,著作者人格権である。それは譲渡できないとされているので,契約上は便法として,発注者あるいは発注者が指定する第三者に対しては行使しないという不行使特約を入れることで対処している。これも必ず入れる必要がある。
最近有名になったビジネスモデル特許の話だが,コンピュータシステムを発注して作ってもらい,調達サイト用に使う場合,特許を受ける権利が発生する可能性がある。ビジネスモデル特許は,従来特許法が要求している発明と言えるのか,特許の登録要件である新規性とか進歩性があるのかという3つの観点から言われている。
ビジネスモデルということで,商売の方法が全部特許になるのかというと,そういうわけではない。特許庁の考え方では,事業の方法や営業方法そのものでは人為的な取り決めであって発明ではない。コンピュータプログラムそれ自体を羅列しただけ,それを特許してくれと書類を持ってきてもだめである。ただし,コンピュータプログラムを含むソフトウエアによる情報処理がハードウエアを用いて具体化され具現化されているものは,発明の要件を満たす場合があるというのが,特許庁の考え方である。
言い換えると,あるアイデアを実現する場合,ソフトウエアを工夫して汎用コンピュータや既存のネットワークシステムとそのソフトウエアとを用いてあるアイデアを実現し得る専用装置を創作したのと同様の結果が得られれば,そのソフトウエアの開発は発明に当たる。
特許出願を考えるときに気をつけるべきことは,今度こういうサイトを作る,というのを開発中にあちこち営業して回ると,特許の登録要件である新規性が失われてしまう可能性がある。出願前に公然知られていた場合には新規性がないとされている。営業して歩いても,相手方との間で機密保持契約を結んでいれば新規性は失われないと理解されている。ただし,相手方が機密保持契約に違反して情報を第三者に流してしまうと,やはり公然知られたことになって新規性は失われる。
それから,特許出願前に公然実施された場合には新規性がないという扱いになるので,実際運用を開始するタイミングとの関係で注意しておく必要がある。
ビジネスモデル特許に関しては,今後は,進歩性があるのかどうかというところに議論が移ると思う。実際にはITテクノロジーを用いてあるアイデア,ビジネスの方法を具体的に実現する発明であっても,その発明を全体として見て,そのアイデアに関連している個別のビジネス分野と,それぞれの事業の分野とITテクノロジーの分野の双方の知識を有している専門家が容易に思いつく場合には,進歩性がないという考え方を特許庁はしている。
■関連記事:
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■出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」通巻149号(文責編集)
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弁護士 赤尾 太郎氏のプロフィール
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上智大学法学部卒業,1995年(平成7年)弁護士登録。
一般民事案件,倒産処理から,代金決済関係を中心とした電子商取引関連の契約案件,知的財産関連,コンサルティング業務まで幅広く手掛ける。
2001年9月,虎ノ門南法律事務所から独立,赤尾法律事務所を開設。現在,電子商取引,知的財産関係業務を中心に一層力を注がれている。
2001/12/09 00:00:00